第25話末
俺の携帯が鳴った。相手はどうやら州夜のようだ。
「どうした?」
「今日で仕事ひと段落したからよかったら一緒に飲みに行かないか?」
突然の誘いに俺は嬉しかったが、今無駄にお金を使うわけにはいかない。
「悪いが俺は遠慮させてもらう。金欠だからな。」
「お前が金欠なんて珍しいな。良いよ。今日は俺の仕事の切り上げみたいなものだし、おごってあげるよ。だからお前は強制参加だ!」
にやけているのがわかる。
「本当に金ないぞ?」
「くどい奴だな。金は俺が持つから晩の六時にいつもの居酒屋で待ってるから。じゃーな。」そう言って電話を切られた。
持つものは友達ってか。
俺と州夜は腐れ縁みたいなとこがある。だから相手が必要な時は助けに行くし助けてもらう。持ちつ持たれつって感じかな。
俺が居酒屋に着いた時ちょうど州夜も到着したみたいで同時に席に着いた。
「今日で仕事がひと段落ってそんなに忙しかったのか?」俺が聞く。
「町はずれの牛舎の解体だよ。一人でやるにはかなりの大物でさ、一週間びっちりかかったよ。」おしぼりで顔を拭きながら答える州夜。
「お前はすごいよな。一人でなんでもできるからさ。俺には無理だよ。」
「俺だって初めは無理だと思ったよ。それでも親父が残した家業だからさ。男は俺一人式ないし。でも最近一人でも限界感じてきたよ。」
やはりこいつでもこんな弱音吐くこともあるんだな。
「とりあえず今日は飲むぞー!」
そう言って州夜は店員を呼び、ビールとテキトーに料理を注文した。
「おつかれ。」俺が行って乾杯した。
「さっきの話だけど一人で限界感じるって、だれか雇うのか?」
「どうしようか迷ってる。ずっと仕事があれば良いが、仕事がなくなる時期もあるからどうしても日雇いの方が欲しくなる。だけど日雇いはその都度人を探さないといけないだろ?」
「確かに、自分の都合の良い時だけってなかなか見つからないよな。」
「土岐人もそう思うだろう?」
「それは否めないけど、それなら年間で撮った方が人を探す手間は省けるってことだよな。」
「だけどそいつを賄えるだけの仕事がずっと続くかどうかが問題だからな。」
「そこは州夜が判断するところだけど、たしかに考え物だよね。」
少しの沈黙が続く。
「お前、パチプロなんかやめて俺と一緒に働かないか?」州夜が真面目な顔して言った。
「俺が?」
「お前が。」
「俺州夜の所はたまに手伝いに行くだけで、実際の所あんまり使い物にはならないぜ?」
「初めのうちはみんなそんもんだよ。俺もそうだったし、大丈夫任せとけ。俺がちゃんと面倒見てやるから。」
州夜は真っすぐな目で俺を見る。職のない俺には絶好のチャンスだ。しかも親友からの頼みごとでもある。州夜がここまで真剣に話してくれたのだから俺が後ろ足で砂をかけるようなことはしたくない。
「わかった。これからよろしくお願いします。」州夜に一礼しながら言う。
「ありがとう。これからよろしく頼むな。」
そう言ってまた二人で乾杯した。
「今日は切り上げ兼新入社員歓迎会だー!」
この後二人でべろべろになるまで飲んだくれたのは言うまでもない。
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