第22話歌

 昨日はかなり飲みすぎたみたいで起きたのは昼をとっくに越していた。左手にはペアリングがはめられていて改めて実感した。

 携帯に目をやると美奈子からの不在着信があった。どうやら寝ていて気が付かなかったらしい。あわてて折り返しの電話を掛ける。「もしもし。」美奈子はすぐに電話に出た。

「ごめん寝ていて着信に気が使なった。なにかあったか?」

「今日も会いたい。」電話越しでも美奈子がはみ噛みながら言ったのがわかった。

「わかった。すぐに支度して美奈子の家に迎えに行くよ。」

すぐに電話を切って身支度を済ませ美奈子の家へ向かった。家に着くなりすぐに美奈子が出てきた。おそらくすぐに家から出られるように玄関で待っていたのだろう。指にはしっかりとリングがはめられている。

 俺は彼女がドアを閉めたのを確認して車を走らせた。美奈子は笑顔でこちらを見ている。

「急に誘ってごめん。これから会えない時間が来ると思ったら少しでも一緒に過ごしたかった。」

「俺も美奈子と同じ気落ちだよ。」


いつしかのドライブデートを思い出す。美奈子の休みが最近あまりなかったので会えるときに会っておきたい。

 たとえすることがなくたって一緒にいるだけで幸せだ。

 それは美奈子も同じだと思う。だからこそ今日のお誘いなのだから。

「よーし!今日は一緒にカラオケでも行くか!美奈子と一緒に行ったことないし。」俺が提案した。

「カラオケ良いね!土岐人の歌も聞いてみたい!」

「あまり期待はするなよ?得意ではないからな。

そう言ってカラオケ屋に直行した。日曜日だからカラオケ屋は込みまくっていて軽く一時間くらい待たされて、ようやく部屋に入ることが出来た。

「まずは土岐人が先に歌って?」美奈子が言う。

「仕方ないな。どれにしようか。」俺はデンモクを持ちながら何を歌うか曲を探した。


「楽しかったね。」美奈子が笑いながら言う。

 あれからなんだかんだ3時間ノンストップで歌い合った。だから二人とも軽くのどがつぶれてしまっている。

 美奈子の歌い声は本当に『女の子』って感じの優しい歌い方でいつまでも聞いていられた。

 

 明日からまた美奈子が仕事だったのでこのまま美奈子の家まで送っていくことにした。

 少し名残惜しいが…


 家の前に着いてそっと口づけをした。すると美奈子からもう一度口づけをされた。

 それから少しの間二人で語り合って、その日は別れた。

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