第21話出世

 それからは二人でごはんを食べに行った。以前パスタを食べたあの店だ。相変わらずメニューが多くて迷ったが二人ともペペロンチーノを頼んで食べた。

「今日が記念日だってことすっかり忘れていたよ。」

「男子ってそうだよね。でも私はそういうことは大切にしたいからさ。」

「今度から気を付けます。」お互い笑顔で語り合った。

別に大切にしていなかったわけではない。ただまだ付き合いたてで、毎日が記念日のような気持でいた。美奈子と電話していると楽しいし、連絡が来なければさみしい。俺には毎日が記念日だ。だけどこんな感情も何年か経ってしまったら忘れてしまうのかな。俺はそんな風に思いたくない。

「これからどこに行こうか?」


 次は初めて一緒にプリクラを撮りに行った。正直恥ずかしくてあまり気は乗らないが美奈子が撮りたいというのでそこは我慢した。

 俺は彼女とプリクラを撮った経験がなく、撮り終わった画面に何を書いて良いのかイマイチわからなかった。それとなく日にちを書いてテキトーな文章を付け加えそれとなくプリントアウトした。美奈子は嬉しそうにはしゃいでいた。俺自身も嬉しかったがそれ以上に恥ずかしさの方が勝っていた。

 美奈子との思い出がどんどん増えていく。まだそんな月日は経っていないのだがこんな日が永遠に続けば良いと思った。


 プリクラを撮り終えてからゲームセンターでしばらく遊んで気が付けばもう夜中になっていた。

 晩御飯はまた前回の居酒屋へ行くことにした。

 土曜日の割にすいていてすぐに席へ案内された。とりあえず二人の飲み物をすぐ頼み、メニューを見てお互い好きなものを注文した。


注文した飲み物が来て、乾杯した時だった。


「そういえばね、私チーフマネージャーに昇進したの。」と美奈子からの告白。

「本当に?おめでとう!」俺は驚きながら言った。

「自分でもびっくりだよ。いままで頑張ってきた甲斐があったよ。」笑顔で言う美奈子。

「今日は一ヶ月記念日と美奈子の昇進祝いだね。改めておめでとう。」俺は美奈子が持っていたグラスに自分のグラスをぶつけた。

「ありがとう。そしてこれからもよろしくね。」二人とも笑顔で一口お酒を飲んだ。

「チーフマネージャーになったことで私、来月北海道に行って研修受けてこないといけなくなって、また多分これから忙しくなると思う。」

「北海道かぁ。ずいぶん遠いとこまで行っての研修なんだね。」

「北海道に本社があってそこで研修なんだ。約半月くらいらしいけどそれが終わればすぐに帰ってくるから。」

「頑張っておいで。連絡とかは忙しかった無理にしなくて大丈夫だからね?俺はここで待っているから。」笑顔で言った。

「うん。ありがとう。」美奈子も笑顔で応えた。


 その日はその居酒屋で店が閉まるまで二人で飲み明かした。



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