第20話以心伝心

 外はもう春だ。桜も満開どころかもう終わりを告げるような咲き具合だ。天気はあまりよくないのだが雨が降っていないので助かった。デートの日に雨振りは正直勘弁だ。

 予定より少し早めに着いたがすでに美奈子が待っていた。

 早く美奈子の所へ行きたいが、あえてクールにゆっくり歩いて美奈子に近づいていく。

「お待たせ。早めに来たつもりだけど美奈子の方が早かったね。」

「楽しみすぎて家から出るの速すぎちゃった。」美奈子は笑顔で言った。

「俺も。久しぶりに会えるから楽しみだった。ところでこれからどこへ行く?俺会うことで頭いっぱいでデートプラン何も考えてなかった。」俺は両手をあわせながら言った。

「ちゃんと私が考えてきたから心配しないで。先ずは買い物付き合ってほしいんだ。」

「了解。行こうか。」俺は片手を美奈子に差し出す。

「うん。」美奈子が俺の手を握る。


 着いた場所は俺もよく知っている。というかこの間来たばかりであるアクセサリーショップだった。

 これはまずい!というか何故この店へ?俺の頭の中はパニックで真っ白になっていた。

「どうしてここへ?」緊張しながら言う。

「だって今日が付き合ってからのちょうど一ヶ月目の記念日だから。お揃いのものが欲しくてさ。いろいろ考えたんだけど土岐人がどんなものあげたら喜ぶかわからなくて、それならいっそ一緒に見に行ってそこで買っちゃおって思ったの。」

 すごくびっくりした。まさか美奈子と考えていることが一緒だっただなんて。

「何から説明して良いのかわからないけど…」俺は恥ずかしさでそっぽを向きながら言った。

「嫌だった?」美奈子が少しうつむいた。

「嫌とかではなくてさ…ほら!」

俺は美奈子に渡したかったプレゼントを店の前で渡した。

「ん?何?」

「いいから開けてみて。」

ガサゴソと中身を広げていくといきなり叫びだした。

「ちょっと!あんまり大きな声出すと周りがびっくりするだろ。」俺は美奈子の口を押えながら言った。

「だってどうして私が欲しかったこと知ってたの?」美奈子は目を輝かせながら言った。

「知っていたんじゃなくて俺が欲しかったの、ただそれだけだよ。」

「本当にすごい偶然だね!はめてみて良い?」

そう言うなり左手の薬指にはめた。

「わー、ぴったり!サイズもよくわかったね!」

 それは以前別ルートで聞いたなんて言えないので「勘」とだけ伝えた。

 まさか自分が欲しいものが美奈子と同じだったなんてびっくりだ。この情報は聞いていなかったので正直に俺も驚いた。

「俺もはめてみる。」

 そう言って俺も自分の指にリングを通した。二人の手を重ねてお揃いということを確かめる。

「ずっと大事にするね。」美奈子は笑顔で言った。


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