第19話予定

 本当はホワイトデーに渡したかったペアリングだったが美奈子の都合でその日は会えずじまい。理由は先に先約があるため。

 早く渡して俺も身に着けたい。だがこんなわがままは自分の都合な訳で、相手には関係のない話。それはわかっているがどことなくやるせない。そんなことを思っていた時に電話がなった。

 相手は州夜からだ。

「もしもし?」

「しばらく忙しくて連絡できなかったんだけどさ、お前繭魅にあのこと話したんだろ?」

おそらく繭魅が渡したであろうプレゼントの事だと思う。

「話したって?」

「しらばくれても俺の趣味を知っているのはお前くらいだ!」

ご明察。

「まぁ、良いじゃん。繭魅もなに買うか本当に迷ってたから良い機会になったと思うよ。」

「あれだけ誰にも言うなって言ったのに。」

「でもこれで今度からまた趣味に没頭できるようになったんじゃない?人目に隠れなくてもさ。」

「まぁな。だから今度からは今迄作って無かった分思いっきり作ってやる!」

そこで少しの沈黙の後二人して笑い合った。

「また何かあったら連絡するからお前もたまには連絡よこせよ土岐人。」

「わかったよ。」

そう言って電話を切った。

 あいつもプレゼント喜んでいるみたいだし良かったな。繭魅に教えて正解だった。


 そういえばあれ以来美奈子と連絡を取っていなかった。美奈子が忙しそうで連絡するのを多少控えてはいたが、もうそろそろ一度連絡でもしてみるか。

「久しぶり。もし暇が出来たら連絡してね。」俺はたったのその一言だけ添えてLINEした。

 しばらくすると美奈子から連絡が入った。

「ごめん久しぶり。最近季節の変わり目になるから新作やらセールやらでものすごく忙しくてあんまり連絡できなかった。」

俺は美奈子からのLINEを見て安心した。

この安心感は浮気ではなかったとか、生きていてよかったとかではないなにか別の安心感だった。

「返信ありがとう。でも本当に暇が出来た時で良いからね。」

「私も連絡しようと思ってたの。この間誘われたデートも行けなかったし、もし良ければ明日私休みになったからデートでもしない?」

俺は両手を広げベッドへダイブした。

「俺はいつでも暇してるから大丈夫。時間も美奈子に合わせるよ。」

「明日10時に駅前にある大時計台前に集合ということで。」

「了解。楽しみにしてる。」

久しぶりに美奈子に会える。早く明日にならないかな。

 俺はまるで小学生の遠足前夜のような気持ちでその日を終えた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る