第9話準備Ⅱ

今日は土曜日に向けて服を買いに行く。俺は別にファッションにうといわけではないのだが最近洋服も買ってなかったので丁度良いタイミングだった。だいたい買う店は決まっているのでそこに向かった。

 店に入るとやはりいろんなジャンルの服が取り揃えられている。だから俺はこの店が好きだ。俺はとりあえず店内を一周するように全部の商品を見て回った。

 今時季はやっぱりセーターがいいかな。ちょっとカジュアルなセーターとノーマルなセーターをカゴに入れ、次はTシャツを見に行った。昔はYシャツばかり着ていたのだが最近はセンスが変わって大分大人しめのTシャツを着るようになった。だからシンプルな柄のを二種類カゴに入れた。

 最後はやはりジーンズだ。ジーンズはちょっとこだわってしまう。刺繍が入ったジーンズが好きでなおかつダメージジーンズのものを探す。普通のジーンズは見る気にもならない。やはり良いなと思うものは金額の桁が違う。でもそんなことを考えた所で俺は躊躇ちゅうちょなどしない。ズボンと靴にはいくらでもお金をかけてしまう。俺はおしり辺りに羽の刺繍で文字が入ったジーンズを買うことにしてレジに並んだ。

 久しぶりの買い物に俺も自然と高揚感が沸いてきた。だから本当はこのまま帰るつもりだったのだが、気分も乗ってきたので靴も買いに行くことにした。

 

靴はハイカット、ローカット、ブーツ、スポーツシューズなんでも履く。でも今日はさっき買ったものと合わせるのにブーツでも買おうかな。でも最近はブーツを履いたり脱いだりするのが面倒臭くなっては来た。特に居酒屋などに行ったら余計感じる。

俺はハイカットを折り曲げても履ける柄物の靴を眺めていた。

「あれぇ、登坂さんじゃないですか。久しぶりだね。」

俺が振り向いたそこには美奈子さんがいた。

「えっ!どうして美奈子さんがここに?」

驚いた俺は思わず彼女の下の名前で呼んでしまった。

「だって私この店の店員だもん。」

「そうだったんだ。そういえば職業とか聞いて無かったよね。ここで働いていたんだ。」

「そうなのさ。その靴見てたんでしょ?この靴今結構人気高いんだよね。お洒落で可愛いし。」

美奈子さんは笑顔で言った。

「俺もこの靴良いなと思って見てたんだよね。

こういうタイプの靴俺持ってないからさ。」

「ならこれ買った方が良いよ。色とか柄とかいろんな種類もあるんだよ。」

そう言って美奈子さんは一つの商品を手に取った。

「たぶんこの靴登坂さんにぴったりだと思う。」

そう言ってその靴を渡された。

確かに俺好みの柄だし、なんといっても美奈子さんに選んでもらった靴だ。断る理由なんてあるはずがない。

「わかった。俺もこの靴気に入ったしこれ買わせてもらうよ。」

俺は元気な声でそう言って美奈子さんと一緒にレジに向かった。

会計を済ました時だった。いきなりレジの向こうから身を乗り出してきた。だから俺も乗り出すように近づいた。

「土曜日楽しみにしてるからね。また後で連絡するね。」

耳元でささやかれた。気のせいか頬がピンク色になっていた。俺は笑顔で頷いてこの場を後にした。

 心臓が今にも張り裂けそうだ。あんな言い方されたら例えそうでなくとも勘違いしてしまうではないか。

 もう俺は完全に美奈子さんの虜となっていた。

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