第4話 約束
結局あの日、本を買うのを忘れてしまったことを家についてから思い出した。
読んでいた本は結局読み終え、なにもすることがなくなってしまっていた。
あの事件から2・3日たった夜、俺の携帯が鳴り響いた。その相手はあのワンピースの女性からだった。
「すみません。登坂土岐人さんの携帯でよろしかったでしょうか。」
すごく丁寧な口調だった。
「はい、そうですが。」
「先日はありがとうございました。あの日、登坂さんに助けてもらわなかったら私は今頃盗撮の被害にあったことも知らずに生活していました。」
「いえ、もうその時のお礼はその時にしてもらったので十分ですよ。それよりも体調はかわりないですか?」
「お気遣いありがとうございます。私は今迄通り生活しています。ただあの事件のことで警察署に出向く機会が多くなりちょっぴり忙しいですが。」
彼女は明るい声で言った。
「それはなによりです。そういえばまだ名前を伺っていませんでしたがお聞きしても?」
そう俺は肝心な名前を聞きそびれていた。
「あっ、まだ言ってませんでしたね。私の名前は
「榊美奈子さんですか。これで番号登録ができます。」
「後日お礼を渡しに行きたいのですが住まいはどちらになりますか?」
わざわざお礼までしてくれるなんて、優しい人だと感じた。
「お礼だなんて、別にそんなお礼されるだけのことはしていませんし、俺じゃなくてもあの異変に感じたらやっていたと思います。だからお礼はー」
まだ言いかけている途中だった。
「お礼をさせてください。見ず知らずの私を助けてくれたのに私が何も登坂さんに返せないのが私は嫌なんです。もし家にお邪魔するのがダメなら今度一緒に食事でもおごらせてはもらえませんか?」
電話越しでも伝わる熱意に俺は負けてしまった。俺としてもわざわざ家に足を運んでもらうよりは一緒に食事に行くほうが気持ち的も楽だったので次の土曜日の晩、とあるレストランで待ち合わせることになった。
今日は月曜日、土曜日まで五日もある。どうしたものか。
また携帯に着信が入った。
忙しい時だけアルバイトを探して
「よう土岐人元気だったか?さっそくで悪いんだが明日から俺の現場手伝いに来てくれないか?」
やはりそういう内容か。
「それはいったいどういった内容の仕事なんだい?」
「大型のショベルで作業するのには二人必要なんだが、俺の現場ある日に限ってみんな忙しくてさ、だから土岐人は助手席にいるだけで良いからなんとか頼めないかな?」
意外と楽そうな仕事でなによりだ。以前行ったドカタの仕事は
「いつからいつまでだい?」
「明日から今週の金曜日までだよ。」
「そうか、残念だが俺はあいにく今週は忙しくて州夜の現場には行けないんだ。またなにかあったら声かけてくれよ。」
俺は断りを告げ電話を切った。
そういえば給料の話を聞くのを忘れたが友情価格としておこうか。
さて、明日からは何をしようかな。
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