第13話 女軍人
森を進むヨシュア一行を、低く這うように広がる黒煙が出迎える。村で『何か』が燃えているのだ、近づくごとに煙は濃くなっていく。
「へへっ、いいぞいいぞ!」
「いいわけないだろ」
先頭をひた走り、にやけ面で舌なめずりするスガワをヨシュアは叱る。トゥーコはそれを戸惑ったように眺めていた、本人たちが真剣な分どれだけ滑稽でも指摘しずらい。まるで悪戯小僧と優等生、教師のやりとりである。
「見えた!」
スガワの一声と同時に、鬱蒼と茂る木々が開け村が顔を出す。広がっていたのは、あちこちに軍服を纏った黒こげの死体が散らばり、民家はもちろん収容所であった牧場、教会も悉く崩れ燃え上る地獄絵図であった。ヨシュアとトゥーコは言葉を失い、スガワは一層目を輝かせる。
「こうでなくちゃ!」
同時に、ヨシュアはスガワを押しのけ村へ飛び出した。頭の中を村人、捕虜、そしてセンリ隊が駆け巡る。助けられるなら一人でも多く、散々腹を立てたはずのセンリ少尉や隊兵士たちにすら本気で身を案じているのだ。
「よっと」
「うわっ!」
ヨシュアはスガワが差し込んだ鞘に足を取られつんのめる。
「なにするんだ!」
「一番乗りは俺だ」
「そういう話じゃ―」
スガワはヨシュアの声を無視して、急に足を止めて刀を構え一点を睨む。つられて彼女の視線を追ったヨシュアは、遠方から歩んでくる女軍人の姿を認めた。連合軍の国旗をあしらった純白な軍服を纏い、燃え上がる炎も転がる躯にも冷厳に関心を払わない。センリ隊と似ているようで、彼らが持たざる誇り高さと覚悟を備えていた。それは思わず見惚れてしまう程の覇気を醸し出している。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます