第一話 ボッチ、謎の本を見つける
「はぁ~あ……。」
溜息をつきながら、道を歩く。今日の授業も終わり、帰路に着く所である。
(退屈だった…………。何にもかも……分からない。)
ただただ楽に入れるからと興味があったから――実を言うともう一つあるけど――そういう気持ちで、パソコンを使う専門学校に行ったが……何から何までさっぱりである。JAVA? C++? 何それおいしいの?
「はぁ……。」
もう何回かわからない溜息をつきながら、家へと歩いていく。あ~あ、鬱だ……。
――――――――――――――――――――――――
僕の名前は
しがない――こういう風に使うんだっけ?――専門学生だ。家族は3人。母と姉と僕。
父は幼いころ(僕が小学校高学年くらい)に亡くなった。だらしない人で仕事人間だった。あんまり好きじゃなかったし。どうだっていい。それに僕は家族が大嫌いだ。
理由は簡単だ。とにかく馬鹿にされる。正直、小中高といつも姉に負けてばかりか、赤点を取るときもあった。
その上、頭の回転も早くないから、いつもヘマをやらかしては怒られ、馬鹿にされる。僕の頭が悪いのはわかるが、ひどい話だ。
それに、何かと扱き使われるんだ。買い物を手伝えと、家から引っ張り出されて重たい買い物袋持たされるわ、風呂の掃除をやらされるわ、電球が届かないから電球を変えてくれとか……一番下だからって扱き使いすぎだ!
そしてそれらよりも理不尽かつ許せない事がいくつかある。特に許せないのは中途半端な食いかけを僕に渡すことだ。二人ともやるんだ。特に、「姉」が。
僕の体型は俗に言う「小太り」の体型だ。僕自身食べる事は好きだが……あいつらは、あんまりそういう気分じゃない時にも渡してくるんだ!
「どうせ食えるだろう」と! たとえ僕が食べれない時でもだ。冗談じゃない! 僕はお前らのペットじゃないぞ!!
そして、言ってくるのがこれだ。「痩せろ」。
ひどい矛盾だ!! 反吐が出る!!!
その他色々あるがはっきりいって僕にとって家族は「邪魔な存在」になっている。
どうせあいつらも、僕の事をそんなに思っていないだろう。
閑話休題。話がくどくなってきた。早く帰って録画してたアニメでも見よう。そう思った、その矢先――
「…………ん?」
道を歩くときはいつも下を向いているのだが――たまに安全確認のために前を向くけど――ふと見上げるとそこには古書店があった。
「……こんなのあったか?」
まあいつも下を向いてたし店に寄るなんて大抵、新作のラノベかゲーム買うためぐらいだったし……たまには気分を変えて冷やかしのために――さっきの事を思い出した腹いせに――寄るのもいいかもしれない。
「……ん、まあ、ふらっと見て帰るか。」
そう言って店内に入る。
――今思えば、これが、僕の運命の分かれ道だったのかもしれない――
――――――――――――――――――――――――
(こりゃぁ、見事な……。)
初めて入った店に少し驚愕し、周りを見渡す。
(…………古書店、だな。うん。)
それは見事のまでの、古書店というべき佇まいだった。
左右の棚に本、本、本。
これでもかと所狭しに並んでいる。まさに創作で出てくる古書店のようだった。…少し埃っぽいのも含めて。
(まあ、でも……な。)
特に目ぼしいものは無いように見えた。……まあ、そうだろうなぁ。ここに、黒魔術とかの本があるわけが――
「――うん?」
――何か、ある。それは明らかに怪しい代物だった――
(…………取ってみよう。)
その本を取った。……第一印象は、「黒かった」。
表紙がとにかく黒い。まるで本当に黒魔術の本のような……。
ただ表紙には何も書かれてなかった。その本の名前でさえも。
(……誰かがいたずらでもしたのか?)
そのような考えが頭によぎるけど、表紙を見る限りどう見ても違うようにみえる。
(中身を見てみよう。)
ペラ、と本をめくる。表紙の裏に書かれてたのは――
(――英語?)
英語だった。それも、よく創作で黒魔術に書かれてるような、ミミズのような文字ではなく僕でも英語とわかるような普通の文字だった。……意味は……解らないけど。
(やっぱり誰かのいたずらか……?)
さらにめくってみる。白、白、白。
全て白紙だった。
(…………こりゃあ、いたずらだな。うん。)
やっぱり誰かがいたずらで、ここに持ってきたのだろうか。
それにしても、やや幼稚だ。
(一度聞いてみるか。)
僕は、その本と面白そうだった漫画を一冊取り、レジへと向かった。
――――――――――――――――――――――――
再び帰路へ着く。……が、少し僕は腑に落ちなかった。
まず、レジへ行き、漫画とあの黒い本を持って行った。
すると、レジのおじいさん――おそらく店主だと思う――がこう言ったんだ。
「その黒い本、タダでいいよ。」と。
耳を疑った。理由を聞くと、この本はどうやら知らないうちに紛れていたんだとか。
捨てようとしたら、何故か捨てる直前にその気にならず諦めてしまったらしい。
そして、手に余らせていた所、僕が来たというわけだ。
つまり僕は厄介な物を押し付けられた……そんな感じなのだが、いまいちそのようなものは感じられなかった。何より、店主――でいいだろう、あの人――の態度が妙に怯えていた。
(まさか、本当に黒魔術の本だったりして。)
僕は少しの期待を胸に歩く。
(……もしかして……あいつらを見返すことも――)
――僕は昔、いじめられていた。昔から太っていた僕はまさにいじめっ子の標的だった。心無い言葉を言われ、殴られ、蹴られ、その他のひどい事をされてきた。
小、中と同じ奴にいじめられ、高校はそいつらのいない所に行ったものの結局そこでも別の奴らにいじめられた。
だからあいつらが行かないような所をに行くために、大学じゃなくてPCを使う専門学校に行ったんだ――
(でも……。)
そもそも、この本が黒魔術の本と決まったわけじゃない。
第一この訳の分からない本に希望を抱くなんてどうかしてる。
(…………バカらし。)
僕は、自分の馬鹿さに呆れながら帰り道へと歩いて行った。
――でも、僕はこの時知るはずもなかった。
まさか、この本が僕の運命を変え、運命を狂わす事に。
僕の「日常」が「非日常」に変わることに。そして――
――今日こそが僕の生涯最後の「日常」だとは知らずに――
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