第二話 ボッチ、「非日常」が始まる①
家へと帰った僕は、《一応》父に挨拶をし、黒い本の和訳に取り掛かった。
ちなみに漫画の本は、帰り道に読んだ。普通だった。
「えーと、何々……と。」
解読する。すると、とんでもない事が書かれていた。
『どんな事でも、三つだけ願いを叶える。』
『願いは、どんな事でも構わない。』
『願いを書き、燃やすと叶う。』
……自分ながらドン引きした。これなんて釣り?いたずら?
バカバカしすぎて、呆れて声も出ない。
「はぁ……あのじいさん。やっぱり、僕に厄介な物押し付けたのか?」
僕は黒い本を置き、溜息をついた。あーあ、無駄な時間過ごした。録画したアニメでも見よう……。
――――――――――――――――――――――――
その後、ゲームをしていた僕は、仕事の帰りの母に呼び出され、買い物の荷物持ちをやらされ帰ったは帰ったで、風呂掃除、洗濯物取り込み等、手伝いをやらされ……うんざりだった。
そしてに大学から帰ってきた姉は、グチグチと文句を言われた。
やれ課題をやってるのか、だの、やれ授業きちんとやってるのか……。
――本当にうんざりだ――
――――――――――――――――――――――――
二人が寝た後も、僕は部屋でゲームをしていた。
ちなみにやってるのは対戦格闘ゲーム。だけど……。
「――あ~あ、また負けた……くそっ!」
コンボミス、判断ミスで負けたのだった。ちなみにこれで3連敗目。
「はぁ……明日は学校、昼からだけど……もう寝るか。」
と、寝ようとした所、本の事を思い出す。
「……3つ書いて燃やせば叶うのか。」
……ちょうど二人は夢の中だ。気晴らしに乗るのも良いかもしれない。
「……よし! そうと決めたら……。」
願い事は何にしようか……。
気晴らしのつもりが真面目に考えてしまう。まあ、騙されたら騙されたで笑えばいいか。うん。
……さて、どうしよう。何が、良いか。…………そうだな。
「…………はっ!」
ピーン、と閃いた。そうだ、どうせウソっぽいし、適当に凄い事書けばいいんだ!
そう思って僕は願い事を書いた。
真剣に考えてたんじゃ……とか言ってはいけない。うん。
後、色々と突っ込みどころがあるのも。うん……。
そして、願い事は二つ決まった。
『色々な魔法が使えるようになる。』
『超人的な身体能力、思考を得るようになる。』
…………うん、厨二的な発想だな、と自己嫌悪した。
まあ、いいさ。どうせ適当なんだし……で、最後は……そうだな。こうしよう。
『死んだら、一人になりたい。そして、一人でも遊べる空間に行きたい』
……うん。我ながら病んでるとしか思えない。けど、いいさ。別に。こんな冴えないオタクだ。
永久に彼女なんて、できっこないさ。――それに、本当に願いなんて――
――――――――――――――――――――――――
「…………よし!」
願いを書き、仏壇にあったチャッカマンを持ち、向かった場所は風呂場。
ここなら何かあっても水があるし、焦げ臭くなるであろうとしても後処理で換気扇がある。
「さて……。」
悪戯な本を燃やしますか……そう思い、チャッカマンに火を付け、本に近づけた――
―――ボウッ!!!―――
「え?」
本を燃やした途端、炎が燃え上がる。まるで、火事のように……。
「ちょ、ヤバ……!熱っ…………うわっ!!」
本を手放してしまい、その拍子に転んでしまう。
「痛つつ……。」
痛さに思わず目を背け――結構痛かった……――本の所を見る……すると――
「……ひぃっ!!!」
……目の前には――まるで悪魔がいるかの如く――黒い炎で本が燃え上がっていた。
「み、水……!!」
は、早く消さないと……!!
そう思ってもシャワーの水は向かい側だ。炎で遮られていけない。
「や、ヤバい……!!!」
隣の部屋は――幸いというか当たり前というか――洗面所のため、水はある。
でも、腰が引けてしまった上にこの炎がバケツとかで消せるとは……。
「あわわわわわわわわわ…………!!!!!!!!!!!」
もはや、パニック状態だった。このままだと…………そう思った矢先――
―――シュウウウウウ……―――
「…………あれ?」
火は、みるみる内に消えていった。
まるで、そこに無かった。「何もかも」。
「え……。えぇ……。」
な、何ちゅう悪戯だ!! 死にかけたぞ!!! というか家が燃えかけたぞ!!!!
ふざけんな!!!!!
「はぁ~~あ……。」
あ~あ……何だろ……。とことん馬鹿にされた気分だ……くそぅ~……!
「……………………寝よ。」
疲れ切った僕は、そのまま寝ることにした。
――でも、僕は気付いていなかった。「何もかも」――
――明らかに天井まで燃えていたのに、その焦げ跡が「無かった」事が――
――その落とした本の所が、焦げ跡どころか灰すら「無かった」事に――
――そして、この本を燃やした事こそ、「非日常」の始まりだという事に――
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