第六十七話 リバーシ
大人たちの識字率などが気になったので村長に聞いてみると、読みができるが書くことができない者が多い、数字が読め簡単な二桁程度の加減算までなら何とかできる者が多いという事だったので院長たちを交えて大人たちの授業内容をどうするかを話し合う事にした。
「大人たちだけ授業内容を選択して受けられるようにしますか?」
「ふむ、子供たちの方は選択できるようにはせんのか?」
「あー、そこは一緒に授業を受けるという事にも意味があると思うんでそのままがいいかと思うんですよね」
「確かに孤児院の子供たちと村の子供たちが一緒に授業を受けると言うのは良い事だと思いますわ」
話し合いの結果、子供たちはそのままで大人たちの方はどんな授業を受けたいのかアンケートをとってから細かく決めて行こうとなった。
とりあえず今後の方針が決まった所で院長から子供たちが学習教室の無い吹雪の時に室内で遊べるものは何かないかと相談されたので何か無いか考えてみることにした。
トランプとかは紙が無いからな~、麻雀は作れたとしても子供にはちょっとルールが複雑か、パチンコは何か不健全なイメージがあるから子供が遊んで欲しくないんでパス……何かもうあれだな、簡単なボードゲームがいいかな? う~ん、囲碁、将棋、UNO……一番ルールが単純で分かりやすいのならオセ……リバーシなんかいいんじゃないだろうか、作るのもわりと簡単そうだしな。
さっそくリバーシを作る事にし、リバーシ盤は問題なく作る事ができたのだが(『錬金アプリ』ではなく手作りで)白黒の石はプラスチックなど無いから木を丸く切って作ろうと思ったのだが、丸だと材料に無駄が出てしまうので四角い形に切り出し、子供が使うという事が前提だったので危なくない様に角は削って丸みを持たせ片面を黒、その反対の面を白に塗ってリバーシ石を作った。
いやもうこれ石って感じじゃない、どっちかというと札って言った方がしっくりくるな。
ルールはまず初めに8x8の合計64マスと言う盤上の中央に、札を右上を黒、左上に白、右下に白、左下に黒になる様に札をお置き、ゲームを開始する。
プレイヤーは交互に黒札、白札を打つ。札は両面が白と黒になっており、札を打つとき、縦・横・斜め方向に相手色の札を自色で挟み、挟まれた札を裏返して自色にする。相手の札を返すことができないマス目に札を打つことは禁止。
打てるマスが全くない場合はパスとなり、相手が続けて打つことになる。パスの回数に制限はないが、返せる相手の石があればパスをすることはできない。
最後まで打って、札の色が多い方が勝ちである。なお最後とは「マスが全て埋まった場合」、「両者とも打てるマスがなくなった場合」のいずれかと言う、ごく普通のリバーシのルールとした。
あれ? よく考えたらこんなちゃんとしたのじゃなくても平らな石の片方に色塗るだけでも良かったか? ま、ちゃんとした物の方が喜んでもらえるかもしれないしいいか。
出来上がったリバーシのセットを持って院長へ報告に向かった。
「院長、室内で使える遊び道具できましたよ」
「えっと、それがそうなの? なんか思ってたのと違って小さいし地味ね? リン君だし、もっとこう……」
院長は一体どんなものを作ってくると思ってたんだ? 前に外で作った滑り台とか室内だと置けないし、雪合戦の様なものを室内でやるのも危ないから無理なんだが……何かそれに近い物でも期待してたんだろうな。
「試しにリバーシやってみますか?」
「ええ、子供たちに説明するためにも一度やってみようかしらね……で、これって、危なくないわよね? 爆発したりとかしないわよね?」
「……しません」
とりあえず院長とリバーシを一局指すことになったいのだが、近くを通ったラウがやりたそうな目でこっちを見てきたのだがまだ孤児院の仕事の途中だったらしく、ルカに怒られて引きずられていった、
「――と、ルールはこんな感じですが、理解できましたか?」
「ええ、思ったより簡単なルールね。問題無いわ」
院長がルールを理解したようなので中央に札を交互に4枚置き打ち始めた。
パチッ
「えっと、自分の色が多い方が勝ちでいいのよね?」
パチッ
「はい、そうですよ」
――――――――――――
――――――――
――――
パチッ
「あら~、私の方が多いわよ? リン君はこういうのが苦手なのかしら~?」
パチッ
「まぁ~、まだ中盤ですしこれからですよ~」
パチッ
「ふふふ、強がっちゃって。リン君にも子供っぽいとこがちゃんとあったのね」
なんか誤解されてるな。そして、ドヤ顔がうざい! 考えなしの直感で勝てるほど甘いゲームでは無い事を教えてやろう。てか、一応15歳超えてるんだからこの世界では成人だと思うんだけどそこんとこどうなんだ? 俺が子供に見えてるのかな~………見えてんだろうな。
――――――――――――
――――――――
――――
パチッ
「あ、あれ? さっきまで私の方が多かったのに、いつの間にか私の方が少なくなってる!」
うんうん、序盤で取りに行くのは悪手となる場合が多いんだよね。
パチッ
「どうしましたか? 調子悪くなってきましたね」
パチッ
「ま、まだまだ。ここからよ!」
――――――――――――
――――――――
――――
パチッ
「はい、これで最後。俺の勝ちですね~」
「ま、負けた~! 初めは調子よかったのに~! リ、リン君、もう一回やりましょう!」
「え~、もう一回だけですよ?」
「今度こそ勝つわ! 院長としての私の実力を見せてあげる! 覚悟しなさい!」
……リバーシに『院長としての実力』は何の意味がないと思うんだけどね……多分、勢いで言ってるだけなんだろうな……あんまり暑くなると勝てるものも勝てないと思うんだけど。
その後、何だかんだと結局5戦するも院長の奮戦及ばず、全て俺の圧勝でした!
え、大人げない? いいんだよ今は15歳だし、それに勝負は勝負だ。
「――あ、角を取れると強いのね。それにしても序盤はいつもうまくいくのに最後は一方的な結果になっちゃうのよね~?」
「まぁ、角を取る事を意識して打つはいいと思いますよ。ただ、角を取ったからと言って必ず勝てるってわけではないですからそこは注意してくださいね。そして序盤に取りに行くのは悪手になる事が多いので後の事も考えて打つのがいいと思いますよ」
他にもコツがあるのを知ってるがそう言うのは自分で見つけた方が面白いだろうと思いあえて教えなかった……断じて負けるのが嫌だからではない!
「それにしても、リン君はよくこんな遊び思いつくわね」
「あー、えーと、このリバーシは俺が住んでた所で遊ばれていたもので俺が考えた訳じゃないんですよ」
「あら、そうなの?」
とりあえず2セット作って孤児院の子供たちに遊ばせてみると、すぐにルールを覚えて吹雪などで外で遊べない様な日以外でも室内でリバーシをする子供が多くなっていた……いや、よく見ると子供たちだけではなく院長も子供たちに交じってやっていた。
院長……いや、別にリバーシするのはいいんだけど、孤児院の仕事をないがしろにしてるとリィル―に怒られるんじゃないのか?
リィル―と言うのは、つい先日成人し現在は次の院長候補として孤児院の手伝いをしている狼族の女の子で、院長候補は別にいいけど現在の院長のルブラみたく行き遅れになるつもりはないと影で言ってる彼氏持ちだ。
院長は『彼氏持ち』と言う事で負けたような感じになってしまっていて、リィル―にちょっとした苦手意識の様なものがあり、何か言われてもあまり言い返せないでいる。
「院長! 遊んでないで仕事してください! 全く、そんなんだからいつまでたっても結こ……」
「ごめんなさい! ちゃんと仕事するからその先言わないで―! 心が死ぬから! 即死だから―――!」
院長はちゃんとしてれば普通に美人なのに、どこか残念な『残念ウサギ』なんだよな……だから結こ――あ、院長に睨まれた。
孤児院内で結構評判がよかったので、追加でリバーシを数セット作り孤児院の子たちに遊ばせていると、院長から村の人たちもリバーシに興味を持っている人が多いみたいなのでとりあえず村長の所へ1セット持って行ってもらえないかと言われたので追加で1セット作り村長の所へ持って行く事になった。
「ほぅ、これがリバーシとやらか? 存外小さいもんじゃな」
「はい、場所も取らずルールも比較的簡単なので子供からお年寄りまで遊べると思います」
ルール説明をし、実際に一局打ってみた
「手軽に遊べて暇つぶしや気晴らしにはよいかも知れんな」
「そうですね、それではあと何セットか作っておきますね」
「しかし、実際に打ちつつ説明した方がよいじゃろう。文字が読めない者もまだおるし、読めたとしても文章だけより実際に見て説明を受けた方が早く理解できるじゃろうしな」
「分かりました。ルールが分かってちゃんと説明ができる者を何人か選んでおきます」
後日リバーシ説明会を開き、集まった村人たちにリバーシを教えて行った。ちなみに教えるのは俺、ルカ、院長、ダイロだ。ラウにも頼もうとしたのだが、ルールはちゃんと理解してるようなのだが教え方が『そこにバシッと打ってそれをクルッとひっくり返して、バーッと多く返した方が勝ち』と言う聞いてるだけだと良く分からないような説明しかできなかったので頼むのをやめていた。
一応、基本的なルールだけを教えてコツなどは自分で見つけた方が楽しいだろうとの思いであえて教えない事とした。
さて、別に俺が全部作ってもいいけどダイロにも作ってもらおうかな? もしかしたらもっと簡単で作りやすい方法があるかもしれないし、俺がいなくなっても作れる人がいた方がいいと言うのもあるしな。
ダイロに製作依頼をする事に決め、盤や札の寸法などを教えて何か改善点は無いか話し合った結果、収納や持ち運びを容易にするため底が箱型の盤を2つに折りたためるようにし、止め具もつけて使わないときや運ぶときは盤の中に札をしまえるようにした。念のため予備札として10枚もセットに加えこれを村に配るリバーシセットの完成形とした。
「で、これを何セット作りゃ良いんだ?」
「そうですね……10セットくらい?」
「……よし、村長に確認してから木を伐採しに行くぞ、おめぇさんも一緒に来いよ? あ、作る方もちゃんと手伝うんだぞ、10セットも何て俺一人でやってらんねぇからな」
「えー」
抗議したが聞いてはもらえず最後まで手伝いました。
こんな事なら『錬金アプリ』で作ってしまえばよかった―! 後でこんなに早くどうやって作ったかツッコまれるかもしれないけど、それはそれだ! とにかくめんどかったよ!
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