第六十八話 リバーシ大会

 村にリバーシがひととおり浸透してきた頃、ただリバーシをして遊ぶのもいいが誰が一番うまいか競うと言うのも面白そうだという意見が多く出てきたので、リバーシの大会を開くことになった。


「――それでの、一手に何時間もかかってしまうといくら時間があっても足りなくなってしまうからどうしたもんかの?」

「あー、それなら対局時間に制限を設ける事にしましょう」

「それと優勝者に優勝賞品としてようい何か用意した方がいいとは思うのだが、」

「それでは参加料を設定して上位4名に順位順に賞金を出し他に形の残る物としてトロフィーなんかも作って渡してはどうですか?」

「ふむ、それで行こうかの。あと――」


 話し合いの結果、大会はトーナメント方式とし、子供の部と大人の部に分けて、それぞれ番号札を引いて対戦順を決めていく事とし、大人の部は参加料を取り1位1名、2位1名、3位2名には商品とトロフィーを出す事にし、子供の部は参加料は無料として賞金無しのトロフィーのみと決まった。

 大会ルールとして通常のルールの他に持ち時間を5分とし、使い切ってからは一手20秒以内に打たないと負けという事を追加する事が決まり、それに伴い専用の砂時計などを追加で作る事になった。

 

 う~ん、こんなもんでいいんだろうか? ま、何かあればその都度改善して行ってもらえばいいか。


 後日リーバーシ大会を開催する事を通達した所、思っていたより大勢の参加者が出たため当初1日の開催予定だったものを2日間の開催へと変更となり、リバーシや砂時計などの数が足りなくなったためダイロと大急ぎで用意する事になってしまった。


 あ、リバーシとか作るのはいいんだけど砂時計で時間を計る審判員も必要だな。


 時間を計る審判は初めはこちらの方で用意し、2回戦目からは1回戦目で負けた者にやってもらう事にした。ただし決勝戦の審判だけは村長か俺にやって欲しいと言われ、俺は断ろうとしたが村長に押し切られ決勝戦の審判をする事になった。

 

 大会当日、会場は冬だと言うのにすごい熱気に包まれ熱いくらいであった。


「えー、本日は――」

 5分経過

「――ですので、みなの者がんばって欲しい! そして――」

 10分経過

「――わしの子供の頃は」


 村長、話し長い! そして村長の子供の頃の話とかリバーシに全く関係ない! これ以上長くなるようなら止めた方がいいな。


 20分経過

「――ですので、みなの者がんばって欲しい! そして――」


 あ、話がループし始めた! なんか周りもざわついてきたし、もう止めよう。


 さすがに長くなってるし、エンドレスループになってるっぽかったので不味いと判断し、カンペ代わりの木板に大きく『そろそろ試合開始!』と書いて村長の方に掲げると何とか理解してくれた。


「それでは『第一回コーレア村リバーシ大会』の開催を宣言する!」

『わぁぁぁぁーーーー、やっと始まる―!』(村民の心がこんなところで一つになった瞬間だった)


 大人の部1回戦を始める前に村長の挨拶が長かったため5分の休憩をはさんでから大会ルールの確認と砂時計の使い方などの説明をしてから大人の部1回戦開始となった。

 ――目立った問題なども起こらず順調に進んで行き1回戦目が全て終了し、1回戦目の敗者に砂時計などの使い方などを再度確認のため説明し子供の部1回戦が始まりこれも問題なく進んで行き、2回戦からは大人の部と子供の部を同時に行い初日は村長の開会のあいさつが長いと言う予想外のトラブルがあったものの無事に終わった。


 2日目、初日の様な村長の挨拶が無いため何の問題も無く3回戦が始まり順調に進んで行った。

  ―――――そしていよいよ決勝戦。

 決勝戦は同時には行わず、まずは子供の部から始まった。決勝に進出したのは農家の(ま、村のほとんどの家が農家なんだけど)次男ラオリ君12歳と孤児院のエイシルちゃん8歳(自称ルカの弟子らしい)の勝負となった。

 序盤は静かに進み中盤から相手の出方を読み合いお互いに持ち時間のほとんどをここで使っていた。そして終盤戦エイシルちゃんによる角を囮とした作戦にラオリ君がはまり一気に札を反されそれが勝負手となり最後まで挽回できずエイシルちゃんが優勝した。 


「師匠! やりました! 師匠の教えのおかげで優勝出来ましたー!」

「よくやりました。この勝利におごることなく精進していくんですよ」


 ……えっと、これは感動的な場面なんだろうか? なんか違う気がするんだけど、だってただのリバーシの大会だよ? 百歩譲ってこれが国の大会とかならまだ分かるけど、村限定の小さな大会だよ?


 目の前ではエイシルちゃんがルカに優勝報告をし、それをしっかりと聞いて答えたルカと抱擁していて周りも涙ぐむ者や歓声を上げるもので何やらすごい熱気だった。


 ……さて、大人の部の決勝戦の審判員をしないといけないからそろそろ準備でもするかな。


 大人の部決勝に進出してきたのはとまさかの院長と村長の息子のガエン32歳既婚者、ちょくちょく姿を見る事はあったのだがとにかく影が薄くて印象に残らない男だ。 


 まさかこんなところで存在感出してくるとはな。


 決勝は終盤までいい勝負で進んでいたのだが院長がミスをしたことが決め手となってガエンが優勝した。

 ちなみにルカは当初出場するつもりだったのだが、ルカが出ると優勝が確定してしまうから止めてくれと周囲の激しい反対にあってそれなら大人の部に出そうかと言ったら子供の部に出ると言った時以上の反対にあい結局審判などの裏方をしてもらっていた。 


 その後、表彰式も終わり大会はこれといった混乱もなく無事に終わる事ができた。




 さて、普通のリバーシのままと言うのも芸が無いからちょっとオリジナル要素を加えたものも作ってみるか、いろんな遊び方あった方が飽きづらいだろうしな。


 普通の札以外に10個だけ裏面に図形が描かれていて裏返された時そこに書かれている図形の効果が発動し、発動後はそのいし札を予備の普通の札と交換する事とした『罠札』というものを作った。

 この罠札を初めに作った時は塗装の関係で裏にどんな罠札があるか木目で分かってしまいそうだった。その後ダイロに木目を隠せてしまえるような塗料を聞き塗り直して見分けがつかないようにしてやっと完成した。


 作った罠カードは5種類を各1枚、どのような罠札かは次の様なものだ。


 〇爆弾   周りの札を強制的に自分の色の札に裏返す。

 ➡移動   何も置かれていない場所へ札を移動させる。

 △強制パス 相手の次のターン強制的にパスを使わせる。

 ✕不動   裏返す事ができない

 ⇄交換   盤面にある相手の色の札と位置を交換できる。


 罠札有のリバーシルールは通常ルールを基本として、そこにに新たなルールを追加したもので、初めに中央へ裏に模様の無い普通の札を通常ルールと同じ様に配置する。

 残った各62個の互いの札をシャッフルし10個の山を6つと11個の山を1つ作って相手に渡す(これを山札と呼ぶ)山札は山札専用の枠内に置く。

 山札の他に模様の書かれていない普通の札を10枚を罠札交換用の枠内に置く、罠が発動した場合は発動後この山の札と交換し、交換した罠札は使用済み置き場の枠内に置く。

 その他にパスは3回までで4回目のパスをすると負け、自分の罠札が5枚全て出てしまったら負けなどの新ルールも追加した。


 さて、とりあえずはこれで様子見として実際に遊んでもらってみんなの意見を聞いてから改良するとこは改良したり、何かまた思いついたらルールとか追加していくか。


 孤児院の子供たちにしばらく罠札有のリバーシを遊んでもらうと、裏返したときどんな罠が出るかどちらも分からないからドキドキすると言う意見があった中、自分で罠を設置できるようにしたいと言う意見が割と多く出たのでその意見を参考に改良する事にした。


 なるほどな、それならトレーディングカードっぽく初めに何枚か手札を見て選んで『トラップカードセット』って感じで打つ様な形にしてみるか、それと思てカードの要素もあった方が面白いかもしれないな。てか、何かリバーシからどんどん離れて行ってる気がするけど……ま、いいか。


 手元に札を5枚立てて置ける台を増設し引いた札に書かれた罠を確認してからどの札を置くか選んで打てる様にし、新しく両面同じ色の札で片面に『□』の模様が描かれた札を追加した。この札は罠札と違い始めから模様のある方を上にして打つ、同時にこの札を含んだ3枚以上裏返されない限りはこの札は裏返されない効果があり、裏返された場合は予備の通常札と交換し裏返す事とした。

 他に、一番外側のマス目には普通の札以外は置けない事とし、罠札がすべて裏返されると負けと言うルールは廃止した。


「ダイロさん、両面同じ色の札で片面に□の模様を入れ札と、その交換用の札を追加でお願いします」

「また新しくしたのかよ」

「いや、今回はそれだけですから。それに一応これで完成としますし……」

「ったく、この前の大会でリバーシ作ってくれってやたら頼まれて忙しいってのによ」


 人手が足りないとの事だったので孤児院の子供で将来ダイロみたいに物作りがしたいと言っていた手先が器用なオルグ君を手伝いとしてダイロの下で働かせる事になった。


 いや~、それにしても大会効果でこうもリバーシを欲しがる人が出るとは思わなかったな。


 リバーシにはまる者が続出し、勉強や仕事をおろそかにするものまで出たのでリバーシは村長預かりとし、村長が許可した時にだけ貸し出すと決め、貸出期間も最長で一日と言う村内ルールができ上ったという事を後で知った。この事は『リバーシ騒動』として村の歴史に記されるとの事だったが、心底記さないで欲しかった。


 あ~なるほど……何か最近村の人たちあまり見ないと思ったらそういう事だったのか……それにしても、リバーシにそんなにはまるとか、この世界に来てからあんまりボードゲームみたいのとか似たような遊び道具を見た事が無かったし娯楽に飢えていたのかな?


「やれやれ、やっとリバーシ騒動が収まってきたわい」

「その……なんかすみません」

「いや、お主が謝る事ではないで気にせんでくれ。それでリバーシについてなんじゃがな――」


 次回の町への行商品についてリバーシもと思っていたのだが、村でのリバーシ騒動が町でも起こるかもと危惧した村長が町で販売する事を取りやめようとしたのだが村民たちの強い希望に押し切られる形でせめて通常ルールの普通のリバーシのみを販売する事とに決まったそうだ。

 ちなみに村民がなぜそんなにリバーシを町で販売する事を押したのかは売れるからと言うのもあったが、それ以上にリバーシ人口を増やしリバーシ発祥の地として大会参加者が町からも来てくれ村に金を落としてもらえるのではと思ってるらしい。


 なんだろう……何か村興しみたくなってきてないか? 『リバーシで村興し!』……無いな、と言いたいとこだけど村であれだけはまる人が出たんだからもしかしたら……てか、勉強や娯楽に時間を割けるって、意外と生活に余裕あるのかな?


 後日……というか、村民に押し切られる形でリバーシだけを販売するために町へ行商に行ったのだが、物珍しさに手に取る人はいたが説明してもピンとこないのか購入してくれる人はいなかった。

 今回はリバーシの販売という事で俺とルカ、それと今回の販売用リバーシの制作者のダイロがきていた、ルカは既にサースちゃんの所へ土産に持たせたリバーシをもって遊びに行っている。という事でダイロとリバーシを実際に遊んでる所を解説し販促活動をした結果、持ってきたリバーシは全て完売した。


 この世界の人は本当に娯楽に飢えてるんだろうか?


 その後、リバーシの札を木札ではなく銅貨などの貨幣を使い白と黒の代わりに表と裏として最後に勝った方は勝った枚数分の貨幣を得ると言う賭けリバーシが流行り問題となったがそれはまた別のお話。

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