第五十八話 ソリ作りと料理教室
翌日、ダイロとただの滑る犬車な無駄に重くて使いにくい忌々しいソリの改良に取り掛かったのだが……初めは足を丸太からスキー板のようなものに変える程度の改良をと思っていたのだが色々考えた結果、本体自体の重さやバランスも悪かったのでこれはもう作り直した方が早いと判断し新たに一から作り上げることにした。
「まぁ話は分かったけどよ一から作るのはいいんだけど、それって今のソリと全く違ったソリって事だろ? 具体的にどんなソリを作りたいんだ? そんなに材料に余裕があるわけじゃねぇから作ったが使えませんでしたってわけには行かねぇぞ」
「あ~、それはそうですね、明日までに考えまとめておきます」
「ああ、わかった。それじゃとりあえず今日はこれで終わりだな」
孤児院に戻り、どんなソリがいいかと考えてトリマランに帆を付けて雪上を風の力で進み、風が吹いていないときは魔法で風を送って進む。方向転換はウィンドサーフィンの様に帆を動かして行うような感じの物を考えてみたが、村人にそこまで魔法を使える物がいなく魔道具を作ってそれで風を起こすとしても魔力がかなりいりそうなので普通のソリを作ることに決めた。
まずは木の板に墨で簡単に設計図を描いてみたがなんかうまくイメージできなかったので『倉庫アプリ』に有った端材で試しに小さいソリの模型を作ってみた。
う~ん、実際にこうやって模型作って形にしてみるとイメージが沸いてくるな、この模型を基本に色々改良してみるか。
――サスペンションやダンパーを取り付けて揺れを抑えたいけどさすがにやりすぎだろうしな~、今回は自重しておこう。
――――犬ソリはあくまでもに運びが主な目的だから積載量を増やすのを目標として作らないとな。
――――――よし! こんなもんだろ。これならダイロでも無理なく作れるはずだ。
翌朝ダイロに設計図と模型を見せるとこれなら問題ないと特に模型を見て納得してくれたので作成に取り掛かる事になった。
長くて前後が大きく反ったスキー板の様な物を2枚作り滑走面に蝋を塗り滑りをよくさせておく、前後の反っている箇所の一部に穴をあけ角材を通し固定する。板のやや外側に垂直に角材を等間隔で数本立てて穴に通した木材と交差する場所を固定した物を左右対称に一セット作る。
それぞれを横木で繋ぎ骨組みを作ってから板を張って御者台を設置しその後ろに荷台部を作り上げライドドッグを繋ぐ牽引ロープを取り付けて完成。幌にすると風を受けた時にバランスを崩すかもしれないと思い雨や雪が降ってきた場合は荷物にはシートをかけロープで固定する設計とした。
本当は作り方が分からなかったので断念した。
「いや~、こんなことで軽くて滑りのいいソリができるとはな~。しかも、こんなに軽くしたのに結構丈夫だし、これなら楽に引けるから今までよりも多くの荷物を運べそうだ」
「本当はもうちょっと加工したかったんですけどね……今ある道具や知識だとここら辺が限界かなと」
いや、ほんとは圧縮木材や合板も作りたかったんだけどそんな設備とかないしな。圧縮木材とか前に作った時は『錬金アプリ』で簡単に出来ちゃたんけどそれじゃ俺しか作れないしこの世界にはまだそういう技術が無いっぽいしな~、他には何と言っても揺れを抑えるためのダンパーを付けたかったんだけど……こっちは作り方すら知らないから『錬金アプリ』でも無理だな。あ、魔法があるなら雪上帆船とか面白いかも! でも目立つだろうな、悪い意味で……うん、無しだな! やっぱりソリはこれで良しとしとこう。
「いやいや、これで十分だろ? おめぇさんはどんだけのもん作ろうとしてんだよ! ――さてと、あとは木くずや端材とか片付けて終いだな」
「あれ、それは捨てちゃうんですか?」
「ああ、こんくらいの端材だと使い道も無いからな。薪の足しとしてそのまま燃やすくらいしか使い道がねぇよ」
ソリに使った木材の端材やおがくずなどをそのまま燃やすだけなのは勿体ないなと思い、薪として売り物にならない様な小枝なども集めておがくず以外をチップ状にしおがくずと混ぜて水を加えて圧縮してブリケットを作ってみようと思ったのだが圧縮するためのする道具が無かったので簡単な手動圧縮機をダイロと共同で手動ポンプを改造して作った。
試作したブリケットは品質的にはあまりいいものでは無く、薪と比べると圧倒的に燃焼効率が悪かったのでどうにか効率をよくできないか悩んでいるとダイロに声をかけられた。
「おいおい、納得してねぇみてぇだけどよ、どのみちゴミにしかならねぇような物が薪代わりに使えるだけで十分だと思うぜ」
「……そうですね」
う~ん、もうちょっとちゃんと薪と変わりないくらいの燃焼効率にしたかったけど詳しい作り方知らないしここが限界か……それにしてもソリの方は何とか思っていたものができたな。もしかして普通の生活ならスマホが無くてもある程度暮らしていける? って、魔力が無いから魔道具とか使えないから明かりもつけれないからやっぱりスマホは必須か。
さて、そろそろ今日の夕食を作らないといけないな~。今日は何を作ろうかな? ……ポトフ、いも餅、あともう一品くらい欲しいとこだな……う~ん、何がいいかな~、そうだオイルを使った洋風浅漬けでも作ってみるか。
院長たちに教えながら夕食を作っていると、院長から村の人たちにも料理を教えてもらえないかと言われた。
どういう事か聞いてみると、近所の奥様達が偶々俺が院長に料理を教えながら作ってるのを目にし、それがとても美味しそうだったと婦人会で話したことで村の中で噂になり自分たちにも教えてもらえないかとルブラ院長の所へ何人も相談に来ていたと言う事だった。
う~ん、別に秘密のレシピと言うわけでもないし……元の世界の何となく覚えてたレシピを参考にして作ったものだからあえて言うなら異世界のレシピってとこかな? ま、念のためにこの村の人たちが普段食べてる食材を聞いてみるか。
「分かりました。それで、この村の人たちは冬の間はどんなものを食べてるんですか?」
「そうね~、じゃがいもやひよこ豆を使った煮物なんかをよく食べますね。狩りで肉が一杯取れると肉も食べれますがそんなにとれないですからね~」
ひよこ豆か……アレルギーの特集で大豆アレルギーの人でも食べれる豆腐でひよこ豆を使って作るやつTVでやってたっけ。確かひよこ豆と水だけでにがりを使わなくても簡単に作れたはずだな。
いもはポテチとかフライドポテトが簡単そうだけど……そんな大量の油を使うのは無理だな。この辺りでは卵が無いみたいだからマヨが作れない、したがってポテサラも無理だし……昨日作ったポータージュと今から作るいも餅、他にももう一品位レシピ考えたいな……確か、ジャガイモを使って餃子の皮を作るやつ見た事あったな、あれなら割と簡単にできそうだし餃子にするか。
「一応村長に相談してから決めますね。よそ者のましてや人間族の自分が村であまり勝手やるのも問題でしょうし」
「リン君なら問題ないと思いますけど……そうですね、一度村長さんにも聞いてみますね」
数日後、村の村長宅兼集会場で料理を教えることになったのだが、思てたより人が集まりちょっとした料理教室のようになってしまった。ちなみにラウは狩りについて行き、ルカは孤児院の手伝い、レイは……孤児院に居るはずだが何してるか不明。
「えーと、今日は『餃子』と言う細かくした肉や野菜などを味付けした物を小麦粉で作った皮で包んで焼いた物を今回はじゃがいもをよく食べると聞いたので皮をじゃがいもも使って作った方を教えたいと思います。詳しい作り方は後で教えますんで、とりあえず実際に作って見せますので見ててください。そして、できた物の味見をして下さい」
餃子を作ることにしたが村で手に入りやすい肉はログウルフの肉が主だという事だったので孤児院にあったログウルフの肉と『倉庫アプリ』内にある肉と交換してもらいミンチにしたが臭みが強かったので生姜、香草、キャベツを加えて餃子の餡を作りジャガイモ、小麦粉、片栗粉で作った皮で包み焼いて行った。
ミンチを作っていたときに硬い肉をどうにかできないかと相談されたので余っていた肉を叩いてすじを断ちさらに酒と香草に漬けておく方法を実際にやって見せて教えた。
多分これで肉が柔らかくなるはずだ。後で焼いて実際に食べてもらおう。
出来上がった餃子を試食してもらい、感想を聞くと概ね好評のようだった。個人的には村に醤油やラー油が無かったので、塩ダレと酢コショウだったのがちょっと物足りなく感じたけど。
その後、詳しいレシピを教えながら実際に作って貰ったのだが、餃子の皮はうまく作ることができたのだが皮で餡をうまく包むことができない人が多かったので、予定を変更してもっと簡単に作れるじゃが豚の豚肉の部分をログウルフの肉に変えた『じゃが豚』ならぬ『じゃが狼』を作ることにした。
「――と、まぁこんな感じなんですけど、これなら簡単に作れると思います。餃子餡を皮で包むのはちょっとコツがいりますしね、こっちのじゃが狼なら簡単に作れるので。あ、それとすーぷ今回はお湯で茹でますけど、スープで他の食材と一緒に茹でた方が美味しいですよ」
「あ、あの~。この前、院長にひよこ豆で白い軟らかい物作ったって聞いたんだけど教えてもらえないかい?」
「ああ、豆腐の事ですね、分かりました。村長さんに相談してまたこういう料理教室みたいなことを近いうちに開けないか相談してみてまた開ける様でしたらその時教えますね」
冬だし、魚のアラで出汁をとって湯豆腐なんかいいかもしれないな。他には……豆腐を使った料理だと個人的には麻婆豆腐が好きだけど調味料が手に入らないだろうからちょっと作るのは難しいかな? 町行った時に調味料が売ってたら作るという事で麻婆豆腐は保留だな。他に作れそうなのだと豆腐ハンバーグ、単純に冷ややっこ、豆腐クッキーは砂糖が高いみたいだからダメだし……あ、豆腐煎餅ってのあったな。っと、このくらいしか作り方知ってるのはないな……今度教える時までちょっと色々試しに作ってみるか。
その後、できた料理をみんなで食べ、その後焼いたログウルフの肉もちゃんと柔らかく食べやすくなっていたのでみんないつもの堅い肉が柔らかく食べやすくなったと言ってくれ、料理教室は概ね好評に終えることができた。
ふぅ、上手くいってよかった~。失敗して美味しくない物を出して嫌われたりしたら村からすぐ出て行かないといけない事態に陥ったかもしれない。ってさすがにそれは考えすぎか? あ、でも、院長に迷惑かける事になっていた可能性……いや~、本当に無事に終わってよかった。
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