第五十話 ゴラウからラガイへ

 最近ラミルズ教の信者が増えてきていて冒険者の間にもその教義が広まってきており、他種族を迫害する事案も増えているらしかった事を聞きいた。


 こりゃ早目にレオロイデ共和国に移動した方がいいかも知れないな……まだ時間も早いしちょっと駅舎でレオロイデ共和国までの料金聞いてみるか……町の中だし、無いとは思うけどレイ達が獣人という事で絡まれる危険もあるし念のために一旦宿に戻って俺だけで聞きに行った方がいいな。


 とりあえずみんなで宿に戻り、レイ達に飲み物と軽くつまめるものを用意してから一人で出かけることにした。


「それじゃ俺はちょっと出てくるから、鍵を閉めて待っていてくれ。たとえ宿の人が来てもすぐには鍵を開けずに用件を聞き、そしてカギを開ける時も一応襲われても大丈夫なように身構えてから鍵を開けてくれ」

「はい、リン兄さん」

「兄貴、変な奴が来たら俺が蹴散らしてやるから任せとけ!」

「……………いって……らっしゃい」

「ラウ、戦うより逃走を優先しろよ! じゃ、行ってくる」


 ラウはちょっと不安だな……戦闘になって自衛できないルカが狙われたら危ないだろうが! ま~、しっかり者のルカがいるからラウをうまくコントロールしてくれるとは思うけど。レイは……レイだし大丈夫だろ?


 駅舎へ行き、受付で4人でレオロイデ共和国まで駅馬車を使って行くにはどのくらいの期間、どのくらいの運賃になるか聞いてみると、レオロイデ共和国までとなると距離が遠く直通便は出ておらず、町から町へ駅馬車をその都度乗り継いでいく方法しかないと説明された。

 順調に駅馬車を乗り継いで行けたとしてレオロイデ共和国の関所まで約10日はかかり、値段は大人子ども関係なく(5歳未満の幼児は除く)一人最低でも金貨3枚はかかり荷物などがある場合は別料金となるという事だった。


 ん~、金も時間も結構かかるな……ん~、護衛依頼でもあればいいんだけど……って、人間族以外に対して差別が広がってるならあまり他者との接触は避けるべきか? ま~、今すぐ決めなくてもいいか。まずは、宿に戻ってみんなと相談してから決めるかな?


 駅馬車の受付店員に説明してくれた礼を言い、宿に戻ろうとしていたら何やら騒々しくなり何かあったのかと店員に聞いてみると、レオロイデ共和国でクーデターが起こり関所が封鎖されてしまい渡航ができなくなったと言われた。


 へ? レオロイデでクーデター……このタイミングでかよ。ま、まずは詳しいこと聞いてみよう。


 クーデターとはどういう事かと詳しく聞いてみると、レオロイデ共和国でラミルズ教の教徒を主体とした勢力がクーデターが起こしレオロイデ共和国はラミルズ教が主教のレオロイデ国と名前を変えたと知らせが入り、人間族以外の入国ができなくなったらしい。

 そして、これでこの大陸には人間族至上主義のラミルズ教を掲げる国しかなくなってしまった事に気が付きこのままこのラウティア大陸に獣人であるラウとルカや半獣人であるレイが居続けるのは危険ではないかと思い、できるだけ早くガウリィオ大陸へ移動すべく航路のある港町まで駅馬車で移動することに決め、4人分の席は空いているか聞いてみた。


「しょ、少々お待ちください…………えーと、明日の朝9時25分発のイライズ行第二便ならちょうど4人分の空きがありますね。ちなみにラガイと言うのがラウディオ大陸への定期船が出ている港町になります」


 お、ちょうど4人分あったか。相談に戻ってる暇ないから押さえておいた方がいいな。


「そうですか、それじゃその便のチケットを4人分お願いします」

「はい、それではお一人様4,000ギリクで四名様ですので16,000ギリクになります」


 4人分のチケット代16,000ギリクを支払い、チケットを受け取った。チケットは小さい木の板に出発地と中継地、そして目的地が書かれていて一番下に駅馬車の紋章が焼き印されていた。

 ちなみに中継地である宿場町で馬車を一晩休ませてからラガイへ向かうのが普通なのだが、途中の宿場町で待機している別の馬車に乗り継いでラガイへ向かう特急と言うのもあるらしかったが、そちらの方の馬車は既に満席で、その次の特急も予約で埋まっているとの事だった。


 ったく、レオロイデ共和国へ行こうと思った矢先にこれってどういう事だよ! でも、イライズまでのチケットを確保できたのは不幸中の幸いだったな。これがレオロイデへ向かってる最中に起こっていたら……危なかったな……あ、一応ギルドの方にも行って何か情報が無いかを聞いてみるか……。


 ギルドに行ってみると、中は多くの獣人、亜人でごった返しており、窓口では通常業務に支障が出るほどギルド職員が対応に追われていた。

 多少落ち着いてきたところでギルド職員にレオロイデ共和国の事など聞いてみたが、情報が錯綜していてまだ詳しいことが分かっていないらしく、駅馬車で聞いていた情報とほぼ同じ事しか分からなかったが、多くの獣人や亜人がガウリィオ大陸へ避難しようとしているらしいという事と、ギルドでも出向中の人間族以外の職員をガウリィオ大陸へ移動させる準備を進めているらしかった。

 ただ、いままでレオロイデ共和国で不穏な影は一切なかったはずなのに、何故いきなりクーデターが起こり成功したのか不思議だと漏らしていた。


 みんな危機感を覚えてこの大陸から脱出しようとしているのか……これは港町へ行っても船に乗れるか分からんな……かと言って陸路となるとレオロイデ共和国……今はレオロイデ国か、そこにある大橋しか無いようだけど、人間族以外は入国禁止みたいだからまず無理だな。とりあえず急いで宿に戻るか……。


 急ぎ宿に戻って、駅舎やギルドで聞いた話と明日イライズへ全員で駅馬車で向かう事を説明し、必要なものは大体『倉庫アプリ』に入っているので翌日は早めに起きて出立までに足りない物などがあったら買い込んでおくこと、今後のために少し料理を作りだめておくことなどを考え三人と準備の相談をする事にした。


「と言うわけで、旅に出る準備をしてくれ。俺はこの先時間的余裕があるかもわからないから今の内に料理を作りだめておく」

「リン兄さん、着替えがあまりありませんから何着か買っておいた方がいいかも知れません」

「俺の方はこれといって足りないものは無いと思うぜ」

「……問題ない」

「そうか、それじゃ――あ、そう言えば宿を明日出ることを女将のラスティさんに伝えておかないといけないな。ついでだし、予定を変更して今日中に買い物済ませてしまおう」


 さすがに女性用の肌着や下着などを買う度胸なんて持ち合わせていなかったので、レイとルカには自分で選んで買ってもらうことにして俺とラウは店内で待っていたのだが、他の女性客の目が痛かったので店無いから出て店前で待っていたのだがそれでも女性用の肌着を売ってる店前で待つだけでもちょっと気恥ずかしい思いをした。ちなみに、ラウはつまらなそうに隣であくびなんかしていてその天然な無邪気さがちょっとうらやましかった。


「お待たせしました」

「…………終わった」

「よ、よし! じゃ、次へ行こう!」


 次に俺とラウの肌着などを買ったのだが……男の肌着を買う話など楽しくもないのでそこは割愛して、調味料や食料などを少し買い足し宿に戻り、三人は先に部屋に戻るように言い俺は宿の女将ラスティに明日宿を出ることを言う事にした。


「突然ですみませんが、明日このゴラウを出ることになりました」

「あら、それは本当に突然だね。もしかして獣人……いや、余計な詮索はしない方がいいね」

「獣人に関して何かあるんですか?」


 ゴラウの領主の元にラミルズ教の司祭が教会を作る許可を得に来たとか、ラミルズ教の信者らしい者が多く流入して来ていて人間族以外を排斥しようとしているのではないかと言う噂が立っていて、元から獣人や亜人を良く思っていなかった者たちが過激になってきているという事だった。


 さっきルカに絡んできた奴等はそれだったのかもな……本当にこの大陸に人間族以外が住み続けるのは危無くなってきているのかも知れないな。にしても、何処からそんな情報えてきてるんだろう?


 部屋に戻り夕食の時間まではポーションなどの制作をし、夕食後は料理を作り続けていた。


 さて、そろそろ寝ようかな。あ、そろそろリュースにメールしといた方がいいかも知れないな~。てか、この前のメールの返信まだ来てないな、忙しいのかな? ま、別大陸へ行く事くらいはメールで知らせとくか。


 翌朝、ちょっと早目に起きてラスティに挨拶してから駅舎へ行き、受付でどのくらいで目的地まで着くのか聞いてみると、途中の宿場町ラガイまで2日、そこから港町イライズまで2日の全4日で到着の予定であると教えてもらった。レイとルカはまだいいが、ラウはシャベルとぼろが出そうだからあまり口を開かないように言っておいた。


 あ、今初めて港町の名前知ったよ……そんな事さえ確認してなかったなんて、俺はかなりテンパってたんだな。もうちょっと冷静に余裕を持って物事に当たれるように気おつけた方がいいな。


 二頭立て10人乗りの馬車には自分たちを除いて商人の男、老夫婦、女性冒険者の4人乗っていた。なぜ10人乗りなのに8人しか乗って無いのかと言うと、商人が荷物を持ち込み2人分の追加料金を払っていたからだった。

 道中、何度か魔物の襲撃があったが馬車の護衛として馬に乗ってついてきていた二人の冒険者によって排除されていたのだが、魔物との戦闘は負けそうになるような事は無かったが数が多くなると手こずる様だった。


「なぁ兄貴、俺も戦っちゃだめか?」

「う~ん、俺たちは護衛依頼でここでいるんじゃなく、客として載ってるだけだからな~。ちょっと御者の……(名前なんだっけ?)人に聞いてみるか」


 ラウが戦いたいと言うのとは別に、到着が遅れるのも嫌だなと思い御者に魔物の排除を手伝ってもいいかと聞いた所。


「護衛報酬は出せないですが、それでもいいならこっちは助かります。でも、それでお客さん自身がケガをしてもこちらでは責任を取れませんが宜しいですか?」

「はい。こちらが勝手に戦うのですから自己責任という事で構いませんよ」

「あ、そうそう。一応、護衛の方たちにも話を通させていただきます」


 護衛の冒険者の2人は、手伝ってくれるのはいいが怪我は自分持ちで、他に素材などの取り分の交渉を経て手伝う事が決まった。

 その後は、魔物の排除を手伝ったことで殲滅速度が上がり、2日目の夕方に到着予定の所を昼ころに中継地点のラガイにたどり着くことができた。

 ちなみに倒した魔物は魔石やある程度素材をとってから街道の外にまとめて焼却処分した。


 こんなに早く着いたって事は、魔物の襲撃ありきで護衛2名が魔物を排除する分の時間も考慮して予定を組んでたんだろうな……さて、今日はここで終わりか。にしても、まさに宿場町って感じだな。


 ラガイは、宿以外の建物はほとんど無くギルドさえ無い、港町とゴラウを移動する人たちのための中継点として町だった。とりあえず御者におすすめの宿を聞き宿で4人一緒の部屋をとってから宿の食堂で昼食を食べ部屋へ行って休憩し、夕食も宿の食堂で食べ3人は部屋で休むように言っておいてから宿の店員から聞いておいた情報が集まりやすい酒場へ情報収集に向かう事にした。

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