第四十五話 家魔製品? 作製
翌朝、何事もなく起き(断じてレイに手は出していない)朝食のときに今日の予定をみんなに伝えた。
「俺はちょっと作りたい物があるから今日はゆっくり休んでくれ」
「なんだよ兄貴、また変なもん作んのか?」
「お兄ちゃん! リン兄さんの作るものはどれも変ですけど凄いんですよ!」
「…………」
ラウ、変とか言うなよな! ルカ、フォローしようとしてくれるのは嬉しいんだけど……フォローになってないよ? そしてレイ、何か言えよな。それにフードを被るな。
「ああ、それと。レイ、今日は外に出る用事もないんだからフードは被るなよ」
「……鬼……」
昨日林からとってきた木を『錬金アプリ』を使って断熱のため中空の圧密木材を作成。その木材を使って三段棚の箱型の物を作り、汚れても掃除がしやすいように内側を陶器製のタイルを均一に張り付けた。
一番上は氷を置く場所として扉を取り付け下の段に冷気が行くように加工、二段目を保管庫として使えるようにして扉を取り付け三段目は引き出し型の貯水槽を入れて一段目の氷が融けた水が流れ込むように排水口を繋げ氷冷式冷木製蔵庫試作一号が完成。
ちなみに、氷の魔石とか使えば冷蔵庫ができるんじゃないかと思っていたのだが、氷の魔石は値段が高くそれに持続時間が短かいということだったので組み込むのを諦め『魔法アプリ』で水を凍らせ(氷を出すより少ない魔力で出来た)それを一段目において冷やす作りとなった。
「これで食材を冷蔵保存できるようになるぞ」
「兄貴のアイテムボックスなら、んぐっ――」
あー『倉庫アプリ』なら時間停止するから食品が傷む事が無いと言いたかったんだな。そして、レイが居るから契約で最後まで言えなかったわけだ。
ま、確かに俺には冷蔵庫はいらないけどダンジョンに行ってる間留守番するルカにいいかなってのもあって作ったんだよね。作ってみたかったって理由の方がデカいけどな。
「今度ダンジョン行くときに留守番するルカに使ってもらうのにいいかと思ったんだよ」
「リン兄さん……ありがとう」
それにしても何と言うか……『錬金アプリ』で作ると材料を切るとか途中の作業工程とか必要ないから簡単にできちゃうな。材料さえあればイメージ通りに形ができていくから単純なものなら『具現化アプリ』で出来たものと変わんないんじゃないのかな? ま、まぁいいや、これで冷蔵庫はできたから今度はオーブンだな。欲を言えば電子レンジを作りたいんだけど構造が分からないから作れないんだよな~。
まずは『錬金アプリ』で岩を一辺が空いた正方形の箱型に成形し、内側の上部に当たる位置に火の魔石を取り付け。次にその岩でできた箱を内部の熱が伝わりにくくするため空気の層ができるように一定の隙間を空けて鉄板で囲む、さらにその外側を冷蔵庫を作った時と同じ中空圧密木材で覆って扉を付け、火の魔石へと繋がる回路を正面にある温度調整ダイヤルと燃料として魔石を入れるケースへ繋げてとりあえず試してみたらオーブン内部が密閉されすぎているという問題が起こったので、後部の木を一部外し、吸排気できるように加工調整することで問題が解決して、なんとか魔導オーブン試作一号機も完成した。
ああ、そういえばアウトドア特集でソーラークッカーとか言う太陽光を反射させて使う調理器があったな。あれなら簡単に作れそうだから今度作ってみようかな? さて、ベッドとパーテーションを買いに行くか……って、もうすぐ昼だから先に昼食を食べて午後から買いに行くか。
それにしても、今回作った家電製品もどきって電気を使わないから家魔製品って言えばいいんだろうか?
昼食は以前に買い置きしてあったものを出してみんなで食べ、皆には留守番をしてもらい一人でベッドとパーテーションを買いに行き、ついでに足りない調味料なんかも買い足してから宿に戻った。
さて、結構金使っちゃったしそろそろ依頼とかダンジョン探索して金を稼がないとな。とはいえ、まだレイが本調子じゃないみたいだし、ダンジョンで金になる物が出るのは下の階層だからいきなりは危険だろうし、とりあえず地上でラウと一緒にどれだけ戦えるか見てみることにするか。
「明日から狩りを再開しようと思うんだけど、レイにも参加してもらいたいんだけどいいか?」
「……う……うん」
「このねーちゃん大丈夫なのか?」
あれ、そういえばレイって冒険者ランクいくつなんだろ? 今まで聞いたことなかったな。
「ラウ、お前よりは強いと思うぞ? レイ、そういえばおまえの冒険者ランクっていくつなんだ?」
「……えっと……ゴールド……」
「マジかよ! このねーちゃんそんなに強いのかよ!」
え! ゴールドランクだったのかよ。シルバーランクくらいかと思ってたぞ……こいつ、本気で戦ったらどんだけ凄いんだろう? これは思ったより早くにダンジョン攻略できるかも。
「リン兄さん。私は?」
「ん、ああ。ルカには悪いけど今回は留守番しててくれ」
「……わかりました」
一人だけ留守番と聞いて落ち込むルカの頭を撫でてあまり落ち込まないよう慰めておき、夕食は昨日下ごしらえした物を調理して食べたのだが。
「……!」
「ん、レイどうした? 口に合わなかったか?」
「……美味しい」
「だよな! 兄貴の料理はそこら辺の店のよりうめぇからな!」
「お兄ちゃんの言う通りです!」
こんだけ喜んでくれると作った甲斐があるな。これならいっぱい作っておいても無駄にならなそうだら空いた時間にでも作りだめしておくか。
買ってきておいたベッドとパーテーションを『倉庫アプリ』から出しレイに今日からは一人で寝るように言ったが納得しなかったのでベッドをパーテーションで仕切って並べ、手だけは繋いで寝るからそれで妥協してくれと説得した。
「……わかった…………でも……手だけは絶対!」
「はいはい、ちゃんと手を繋いでやるから安心しろ」
まったく、こっちは手を繋いで寝るだけでも理性を保つのがきついんだから早くひとりで寝れるようになってほしいものだな! レイみたいな娘と手を繋いで寝れるなんて役得と言えば役得ではあるが……。
「ル、ルカ。俺たちも手を繋いで寝ようか」
「お兄ちゃん。バカなこと言ってないで、早く寝るよ」
……ラウ。不憫なやつ。
――お、なんか唐突に思い出してしまったんだが……そういえば、最近リュースにメールしてなかったな。また拗ねられても面倒だから明日にでもメールしておくか……面倒だけど。
翌日は予定通りにギルドで討伐系の依頼を受注して狩りに向かい、まずはレイの実力を見たかったので本気で戦ってもらった。結果は全ての魔物を瞬殺であっという間に依頼分が終わった。
「ねーちゃんすっげーな!」
「だ、だから言っただろうが、お前より強いってな」
しかし、前のときは俺自身のレベルが低かったからよくわかって無かったけど、改めてレイの戦い方見ると無駄がなくいい動きをするもんだな、さすがゴールドランクだ。
その後も狩りを続け、ラウとレイとで狩らせてみたのだが魔物を倒せてはいたのだが、連携して戦えてたかと問われると全然ダメで、ただレイが一人で魔物相手に無双しているだけだった。
「さすがレイだな。だけど、もうちょっとラウと連携して戦うとかはできないか?」
「……誰かと一緒……戦うの……に、苦手」
「ラウの方はレイと一緒に戦ってみてどうだった?」
「なんかこう……なんかもう凄かった!」
レイの弱点は初対面だとまともにしゃべれない事……と言うか初対面じゃなくてもあれなコミュ障なとこと集団行動がうまくできない事だな。これは早いうちにラウ達に慣れさせないとダメだ。それでも恐怖心で戦えなくなっていなかっただけでも今日は良しとしておくか。ラウは、もうちょっと何が凄かったのかとかを具体的に言って欲しかったな。
その後はできるだけレイとラウを一緒に、特にラウを中心として戦うようにさせて夕方まで狩りを続け、ギルドに依頼報告をしてから宿に戻り夕食を食べていたときに、ルカがレイに魔法を教えて欲しいと言い出した。
う~ん、まぁルカはしっかりしてるから魔法を覚えても変なことには使わないだろうし、これがきっかけでレイと仲良くなれるかもしれないからレイに魔法を教えてもらうというのも悪くないかもな。
「レイ、ルカに魔法を教えてやってくれよ」
「……人に教えるの……した事無い……話すの……苦手」
確かにレイのしゃべり方だと理解し難いから誰かに教えるというのは難しいかも知れないと思ったが、黒板に書けば教えれるんじゃないかと思いつきレイに黒板を見せて使い方を説明すると「……こ、これがあれば…………もう、しゃべらくて済みそう」とか言い出した。
は? こいつ、黒板使って会話する気かよ! なんか今まで見たことないほど生き生きした目で『我が意を得たり』って感じでこっちを見てきてるぞ。
「レイ、黒板はあくまで勉強用の物だからな! それに、人に見せたくないから持ち出しは禁止だ」
「……ケチ」
「ケチっておまえは……ま、まぁ、とりあえず今日からルカに教えてやってくれ」
「……わかった」
「レ、レイ姉さん。よ、よろしくお願いします」
その日の夜送ったリュースへのメールは近況報告などを書いておいた。
それから数日は普通に討伐系依頼などをこなし、たまにレイもルカも一緒に薬草採集なんかもしてレイがラウとルカに早目に慣れるように仕向けてみた。
そんな日々の中ルカの体力もそこら辺の同世代の子と遜色ないほどになり、レイに魔法を教えてもらうことにより簡単な生活で使うような魔法も使えるようになってきていた。
ラウは最近レイとの連携がうまくいき始め狩りの効率が上がり、自身も色々と考えて狩りをするようになってきていた。
レイはまだぎこちなくではあったが二人と多少は会話できるまでになっているようで、最近ではラウからは『レイ姉』ルカからは『レイ姉さん』と呼ばれるほどに仲良くなっていた。さらに、今では手を繋がなくても一人で寝るようになっていて、それがちょっと寂しかったりしていた。
レイも戦闘で怯える感じも無くなったみたいだしもう大丈夫そうだな。これならダンジョン攻略を再開してもよさそうだ。
旅の資金などを稼ぐのといずれまた来る魔人との戦いに備えて死なないようにするためにも自身の強化をするのも兼ねてダンジョン攻略を再開することにしたのだが、いきなり下層を目指すのは危険かなと思い、まずは浅い階層で三人の連携の確認などをすることにした。
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