第二十八話 ダンジョン攻略開始(ただしソロ!)

 ライルたちを見送った後、昼食用にサンドイッチなどを買い込んでダンジョンに挑戦するべく、まずは出張所に説明を聞きに行くことにした。


 出張所の受付に行きギルドカードを見せて、今日がシルバーランク昇級試験後初ダンジョンであることを伝えると色々と説明してくれた。


 ・ダンジョンでは倒した魔物は放っておくと時間と共にダンジョンに吸収され消えてしまうので手早くアイテムボックスに入れるか、ダンジョンに触れないように運ばなければいけない。ちなみに、魔物が装備しているものも何故かダンジョンに吸収されます。


 ダンジョンで産まれた物はダンジョンに帰るって感じか?


 ・冒険者が死んだ場合もダンジョンに吸収されるので気を付けてください。ただし、装備品などは残ります。


 は? ……人間も死ねばダンジョンに喰われるのか。って、装備品は残るんだな。


 ・ダンジョンの魔物は地上の魔物に比べて素材としては質が悪い。地下1~5階層の魔物は特に素材が安価なものしかいなく、高額となるのは地下20階層辺りからです。


 あ~、そうなのか。それじゃ、地下20階層までは価値あるのは魔石くらいだろうし、無理して魔物の素材取りはしなくてもいいな。


 ・ダンジョンにはトイレや宿などは無いので、それなりの準備をしてから臨んでください。ちなみに、排泄物はダンジョンに吸収されます。


 へ~、前に読んだラノベにはダンジョンに宿があったけど、この世界ではそういうタイプじゃないんだな。ま、あっちは作り話でこっちは現実だし、違うのは当たり前か。てか、排泄物吸収って……便利だな、どうにかして実際のトイレに応用できないものだろうか。


 ・トイレなどに行きたいからとダンジョンを出れば再度入る時には、また列並び入場料を支払って入らなければいけなくなります。


 ま~、そりゃそうだろうな……あ、ちょっと思いついたことあるからダンジョン潜るとき試してみようかな?


 ・各階層をつなぐ階段では短時間の休憩はいいが、食事や睡眠、キャンプなどは禁止とします。


 そりゃ、通行の邪魔になるだろうしな。


 ・地下16階層までは安全にキャンプを出来るような場所はないので、休憩する際は十分気を付けてください。


 それじゃ、深くまで潜るなら16までは一気に降りて、そこでキャンプをしろって事だな。もしくは数人でパーティーを組んで見張りを立てて休むかか。


 ・ダンジョンの情報(階層の地図、出てくる魔物など)は基本有料です。あちらの方で販売しておりますので、初心者の方は買ってからダンジョンに向かわれることをおすすめします。


 情報もただじゃないんだな。てか、何気に商品セールスしてくるな。


 ・ダンジョンは全25階層で何度も攻略済み。


 あ、もう攻略されてるんだな。てか、最下層のボスを倒すとかコアを壊すとかでダンジョンが消えるなんてことはないんだな。そもそもダンジョンコアってあるのかな?


 ちなみに「ダンジョンコアって無いんですか?」と聞いたら「なんですかそれ?」って呆れたように言われたよ。

 説明を聞き終わり、ダンジョン入場申請書を提出して早速ダンジョンに挑戦することにしたのだが、5組ほど並んでいてすぐには入ることができず、2時間ほど待つことになり、並んでいる時にポーターの売り込みがあったので、その中でも10歳くらいの少女が安かったのでちょうどいいと雇うことに決め、考えていたことをポーターの少女に色々説明して実行してもらうことにして、ダンジョン内で食べようと思ってたサンドイッチなどを食べて待つことになった。

 そしていよいよ自分の番になり、守衛にギルドカードを渡し、入場料を支払ってダンジョンには一人で潜る事とにした。

 とりあえず地下1階から、踏破すれば『地図アプリ』のMAPが埋って行くので、とりあえず地下1階層を歩きまくりMAPを埋めまくった。


 とりあえず地下1階層はこれで全部埋まったな。さて、一度戻るか。


 地下1階層のMAPが埋ったので入り口まで戻り、入り口のすぐそばでキャンプをし、待機させていたポーターの少女に入り口の守衛を挟んで必要なもの(食料など)を受け渡していたら守衛に止められた。


「おまえな……入り口でキャンプとかするなよな! あと、俺たち守衛を挟んで物品のやり取りとかもやめてくれ! まったく、こんなおかしなことするやつは初めてだぞ?」

「え、ダメなんですか?」

「ルールにはないが、こんなのは普通にダメだろ? ったく、どんだけ悪知恵働くんだか……」


 こんなこと誰でも考えそうな事だと思ったんだけどな~。ま、試してみただけだから実際は物品とかは『倉庫アプリ』にあらかじめ入れて用意しておけば問題ないんだけどね。


 ポーターの少女は自分が悪いわけでもないのにしきりに俺に謝ってきたので、悪いことをしたなと思い、少し色を付けてポーター料を支払っておいた。なんか、何もしてないのにこんなにもらえないとか言ってたが受け取ってもらった。

 こうしてダンジョン攻略初日は終了し宿に戻りすぐに就寝した。

 ちなみに、翌日からダンジョンのルールに階段の他、入り口でのキャンプも禁止、入り口での物品などのやり取りも禁止となった。



 翌日は朝から並んで午前9時ころから一人でダンジョンに潜り、各階層のMAP埋めは止めてとりあえず地下10階層を目指すことにした。

 地下6階層までは『地図アプリ』で道順自体はが分かっていたので迷うことなくあっさりと進み、クィーンアントはボス部屋ということもあり人の目がなかったことで『具現化アプリ』と『魔法アプリ』を遠慮なく使い、あっさり倒すことができた。

 具体的には、クィーンアントの眉間をターゲットロックでマーカーをつけ、『魔法アプリ』で炎の壁を出してキラーアントを足止めして、その隙に『具現化アプリ』でアンチマテリアルライフル(XM109ペイロード)を具現化し、マーカーをつけておいたクィーンアントの眉間に寸分たがわず5発連続で弾丸を撃ち込んで倒した。実際は3発目で倒せていた気はしたけど射撃練習も兼ねて5発撃ち込んだ。


 やっぱり硬かったな~。正直1発で倒せると思ってたのに1発目は外殻を砕くことしかできなかった。このままだと、この先苦労しそうだし、戦い方に工夫が必要だな。


 地下6階層は地下1階層のような作りに罠が足された感じのフロア。ここからは未知の領域だったので、慎重に進む事にした。

 出てきた魔物は説明不要スライム、人骨型の魔物のスケルトン、小さい角がついた白い毛並みで眼の赤い、見た目はかわいい白ウサギの姿をしたキラーラビット。

 どの魔物もたいして強くはなかったのだが……なのだが、キラーラビットのあまりのかわいさに思わずモフろうとしたら、派手に蹴られて壁にぶつかり左手を骨折してしまいました。

 その後、すぐに『回復』を使って治してからキラーラビットを倒し、スケルトンは頭を砕くことで倒していった。


 くっそー。やっぱ見た目がかわいくても、魔物は魔物か……。


 地下7階層は高低差があり行き止まりも多く、小階段などで移動しないといけないフロア。出てきた魔物はスライム、幻惑効果のある鱗粉をまき散らす大きい蛾の魔物のモス、赤い体色をしたサーペントで普通のサーペントより動きが速いレッドサーペント(角もないし3倍速いわけではなかった)

 この階層は迷路のように入り組んでいて、さらにモスの鱗粉で余計に迷うという階層のようだったが、どういうわけか俺には鱗粉の幻惑は効かなかったので、惑わされずに進む事ができた。

 ちなみに、レッドサーペントは『ストーンショット』で牽制し、動きが止まった所を狙って『ウィンドバレット』で狙い撃って倒した。


 地下8階層は石造りで通路が他より狭いフロア。出てきた魔物は……スライム、レッドサーペント(地下7階層のと同じ)、スケルトン(地下6階層のと同じだが複数体で行動し、連携攻撃してくる)

 この階は上の階にいた魔物下でなかったので対処に苦労はなかったのだが、罠の種類と数が多く厄介で、あげく罠にはまらないと先に進めない仕掛けまであったため、下に降りる階段を見つけるのにかなり時間がかかってしまった。


 地下9階層は土の洞窟のようなフロアで湿度が高くじめじめしていた。出てきた魔物はスラ――、毒持ちのドロッと溶けたような緑色のスライムであるポイズンスライム、異臭がする腐った……スライム? のゾンビスライム。

 ――――スライム尽くし! 普通のスライムはまだいいんだけど、他のスライムが見た目に唯々グロかったのと異臭で体力より精神がゴリゴリと削られた。もうこんなスライムは見たくもないと心底思ったんだけど……ダンジョンを完全攻略するには、またここに来ることになるんだろうなと思い、ちょっと鬱になったよ。


 地下10階層は石造りで直線で広い通路が多いフロア。出てきた魔物は弓を持ったスケルトンで何故か矢が尽きないスケルトン・ボウ、普通のコボルトより少し大きくて獰猛なコボルトウォーリア、前にも戦ったことのある体格と装備のいいゴブリンのゴブリンナイト。

 個別ならたいした脅威では無かったのだが、混成集団でこられるとスケルトン・ボウの尽きない矢が地味に邪魔で、こっちが矢を避けている間に他の魔物が回り込んだり近寄って攻撃といった連携をしてきてちょっと焦った。

 ボス部屋の扉の前まで来てもスライムが出なかったので「スライムいないのかよ!」と思わず叫んでしまった。


 地下10階層ボス部屋は地下5階層と同じ作りだった。ボスは鎧兜に大剣を持った普通のコボルトより二回りほど身体のでかいコボルトロード、鎧兜にシミターっぽいのと盾を持ったコボルトのコボルトナイトが複数だった。

 コボルトロードは一切動かずこちらを警戒するだけだで、コボルトナイトたちがこちらに攻撃を仕掛けてきた。

 コボルトナイトたちは金属鎧を着ている割に動きが速かったが、対処できない程ではなかったのでハンドガンを具現化で出し、鎧に覆われていない太ももを撃ったのだが、銃弾が弾かれてしまった。

 残弾を頭に向けて撃ち牽制しつつ『スタングレネード』を具現化し、ピンを抜いて投げつけて目を閉じて耳をふさいだ。

 閃光が収まるのを確認し、すぐに武器を『アサルトライフル』に切り替え腰だめに構えフルオートで撃ちつつマガジンを具現化して弾切れになったら交換し、マガジン2つが空になるまで撃ちまくりコボルトナイトを一掃した。

 コボルトナイトをすべて倒したところでコボルトロードがようやく動き始めたので『スモークグレネード』ピンを抜いて投げつけ視界を奪い、同時に[気配遮断]を使って気づかれないようにしてシューティンググラスの『サーモ』と[魔力探知]を使って位置を確認し音を立てないように慎重に背後へと回り込み『手榴弾』を具現化してピンを抜き鎧の隙間へ入れてその場を離れ、地面に伏せると同時に爆発が起こりコボルトロードを倒すことができた。


 思ってたよりは楽に勝てたな。でも闘気かなんかで強化してくる魔物が出てきたな。これだとハンドガンじゃ対処しきれないな。この先の事を考えると狭い所でも使えるようなアサルトライフルか魔法の方がいいかもしれないな。

 さて、もう日も落ちてる時間みたいだし、ちゃっちゃとこいつらを『倉庫アプリ』に入れて今日は終わりにするか。


 スマホの時計を見るとすでに午後7時を回っていたので、急いで地上に戻ることにした。


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