第二十七話 シルバーランク昇級試験終了
何とか無事に私権の制限時間内に地下5階層を攻略し地上に戻ることができた。そして、ギルドに戻り会議室にて三次試験担当官スガムからの試験結果を待つことになった。
「だ、大丈夫だよな? 合格できるよな?」
「だ、大丈夫よ! きっと大丈夫! あんなに苦労したんだし、大丈夫なはずよ……」
「そうだよ二人とも。僕たちはチームとしてちゃんと動けていたはずだよ! リンもそう思うよね?」
「そうですね。『ベストだった』とまでは言わないまでも、うまくやれてたと思いますよ」
不安になりながら座って待っていると、会議室のドアが開きスガムが入ってきた。
「えー、みなさん。お疲れさまでした。それでは結果を発表する前に、まず私たち担当官の感想を申し上げます。
ダンジョン内での行動は特に問題もなく罠などもちゃんと警戒して解除して進んでいました。パーティとしての連携も、即席のパーティにもかかわらずきちんと連携が取れていて危なげない動きだったと思います。個人の能力などに関しましては、各々の役割を十分にこなせるだけの力があるのではないかと思います」
お、中々の高評価じゃないか! これは期待してもいいのかな? 他の三人も期待してる顔だな。
「――よって、シルバーランクの冒険者と言っても申し分ない力量があると判断し、三次試験合格とします」
「「「「やったー!」」」」
思わず立ち上がり手を取り合い合格の喜びを分かち合った。意外なことにガウラが涙を流して喜んでいた。他は喜んではいるけど泣いてないんだけどね。
三次試験は合格となり、明日Aチームの合否が決まり次第合格者全員を会議室に集め正式にシルバーランク昇級試験合格を言い渡し、その後合格者には試験担当官長ロムグの講習などがあるから午後1時までに会議室に来るように言われた。
会議室を出る前に、合格できたしお祝いしようかとなったのだが、まだ正式に決まったわけではないのと、疲れたということもあったので明日改めて考えることに。
宿に戻り夕食を食べたあとに部屋で早速クィーンアントから何か能力が得れないか試してみた結果、[外皮硬化]皮膚を堅くするという能力しか得れなかったうえ、どうやら魔力があっても人には使用できないものだった。そしてスマホのレベルも上げたのだが、17と二つしかあがらず、これといった追加もなかったのでポイントなどもそのまま保留しておいた。ちなみに自身のレベルは18になっていた。
翌日、早目にギルドに行きクィーンアントを引き取ってもらったのだが3,000ギリクと、あんなに苦労した割には金にならなかった。
その後、Aチームはちゃんと時間内にボスを倒して戻ったのだが、個人の能力は高いものの、パーティとしての連携がまるで出来ておらず、罠への警戒も疎かという内容の悪さのために不合格となってしまっていた。
結局、三次試験に合格したのはBチームのみとなり、昼食後に会議室に集められた。
「まずは、諸君シルバーランク昇級試験合格おめでとう」
「「「「ありがとうございます」」」」
「明日、改めてこちらに集まって必要書類を書いてもらい、問題が無ければシルバーランク昇級の処理を進めるのだが……その前に、これからシルバーランクについての講習を受けてもらう。ちなみに明日の午前中もダンジョンに関しての講習があるのでそのつもりでおくように」
講習はシルバーランクになった際に注意することなどの説明で、内容はと言うと。
ブロンズランク以下は冒険者とはどういうものかということを実際に体験し、依頼のやり方に慣れてもらう研修期間のようなもので、実質シルバーランクからが冒険者の始まりと思ってもいいということで、シルバーランクからは難易度や危険度の高い依頼が多くなる。
以前はシルバーランクへの昇級試験などは無かったのだが、シルバーランクに上がってすぐの者が依頼失敗、最悪は死亡と言う事例が多かったので、昇級試験を導入したということだった。
それでもシルバーランクになって調子に乗った者や、浮かれた者が依頼の失敗や死亡する事例が未だにあるので、十分気を引き締めて依頼などをこなすように注意を受けた。
ランクが上がったからと言って自分が強くなったわけではないから油断するなって事ね。
シルバーランクからは複数人で依頼をこなすというものが多くなり、シルバーランク以上の所にあるパーティー募集掲示板に『〇〇依頼のパーティーあと〇名、特に〇〇募集』などの張り紙がされているが、シルバーランクに上がってすぐの者は良く分からず適当なパーティに入り騙されてしまうことも少なくないので気を付けるようにすること、それにブロンズクラスまでと違ってずる賢い者が多いからすぐには騙されたと気づかない事さえあり、しかもギルドのルールに引っかからない程度のギリギリの行為がほとんどでギルドとしても罰することができない事例が多いということだった。
この日はこれで講義が終わり、明日は午前9時までに会議室に来てシルバーランク昇級申請用紙に必要事項の記入し、その後ダンジョンについての講義があるので筆記用具を持参のうえ時間までに会議室に集まるようにとの事だった。
翌日、時間前にギルドの会議室に行き、シルバーランク昇級申請用紙の各項目を記入してギルドカードとブロンズプレートを一緒に提出し、そしてダンジョンに関しての講義が始まった
ダンジョン内は治外法権であり、その中で行われることは何があろうと全て自己責任であることが基本ということをまず覚えておけということをいきなり言われた。
治外法権とは言ったが、一応ダンジョン内での殺人や窃盗などは禁止されている。
禁止されてはいるのだが、そのような犯罪行為があって訴えたとしても、証拠などが見つかることなどめったにないので立証できず無罪になる事が多い。
この殺人と言うのは直接殺すということ以外に、相手に魔物を押し付けてその相手を殺させるというのも殺人として定義する。
特にダンジョン初心者は、魔物だけではなく他の冒険者にも注意して探索することを心掛けなくてはいけない。と、ここまでは気をつけろというお話。
ダンジョンに入るルールとして、パーティにシルバーランクがいれば他のメンバーがブロンズランクでもダンジョンに入れる。ただし、どんな高ランクの者と一緒でもアイアンランク以下の者では決してダンジョンには入れない。そして、メンバーのなかでのブロンズランクの数はシルバーランク以上の者の人数と同じかそれより少なくないといけない。
簡単なルールとして、地上の狩りと同じように誰かが戦ってる魔物を横取りして倒したり、他の人が倒した魔物や開けた宝箱の中身を自分のものにしたりしてはいけないなどの道徳的な事を教えられた。
その後は、ダンジョンの入り口の近くのギルドの出張所にあった立て看板を必ず見ておくこと、初めてダンジョンに潜る時は出張所でも一度説明を受けておくことなどを教えられ講習が終了し、シルバーランクのギルドカードとシルバープレートを受け取りギルドを出てみんなと話し合った結果、明日の午後6時に『猫足亭』という食堂で合格祝いをすることに決め解散した。
翌日、まだダンジョンには潜らず、午前中はブロンズランクの依頼を中心にいくつかこなし、夕方にギルドに依頼の報告に行くと、そこでライルを見つけどうせだからと一緒に『猫足亭』に行くことにした。
店内に入ると、すでにディアとガウラが来ていて、ちょうど料理とか注文しておこうかと思ってたところだったらしい。
席に座り、酒(俺はもちろんジュースだ)と適当に料理を何品か注文し、酒が来たところでリーダーなんだからとライルが乾杯の音頭を取ることになった。
「えー、それじゃ簡単に。みんなが協力したからこそ試験に合格できたものと思ってる! みんなのこれからの輝かしい前途を祝して、カンパーイ!」
「「「カンパーイ」」」
ほんとに簡単な挨拶だな~。もうちょっとこってもいいきがするんだけどな~。ま、長すぎるよりはいいか。
試験のときのことなどを語り合ったり、故郷のことを聞いたりと楽しく飲食をしていた。
――――
「――で、僕たちは故郷に一度帰ることにしてるんだけど、リンはどうするんだい」
「えーと、しばらくはゴラウに滞在しようかと思ってます」
「あら、リンはいきなりダンジョンに潜る気なの?」
「俺も早くダンジョンに行きたい気持ちなんだが、一度帰らねぇといけねぇからな~」
「ま~、すぐにダンジョンに潜るかは分からないですけど、ダンジョン攻略を目指そうかとは思ってますよ」
三人とも東の方に故郷があり、方向が一緒ということでどうせならと同じ日に一緒の馬車で旅立つことに決めたらしかった。
その後は、ただの宴会騒ぎとなり、俺以外は酒を飲みまくっていた。
結局俺以外は酔い潰れてお開きとなったのだが、気のせいかディアとガウラが仲良く大人なホテル街に消えていったように見えた。あんなに喧嘩してたのに、いつのまに……解せん。
ちなみに今回の食事代10,600ギリクで、あらかじめクィーンアントなどの魔物の換金分で払うと言っておいたので、足りない分は割り勘となった。
宿に戻り部屋でスマホのメールを確認してみるとリュースからメールあったので開いて見ると。
『クスノキさん、お久しぶりです。本日出張より戻ってまいりました。
下界に関してのレポートについてですが、それほど急いではいませんが、送ってくれたら何かお礼を用意しておきますね』
お、なんかくれるのか……シルバーランク昇級試験も終わって一区切りついたし、ダンジョンはいつでも入れるんだからちょっとレポート作成するというのもいいかもしれないな。
数日後、三人がゴラウを出発することとなり、東門の近くにある駅馬車の待合所へ見送りに行くことにした。
「それじゃぁな、リン。縁があったらパーティでも組もうぜ」
「私はしばらく故郷にいるから近くを通ることがあれば寄ってね」
「リン、僕は……最初はリンのことただの子供だと思ってた……」
「ハハハ。そりゃ、俺も『こんなガキとかよ!』って初めは思ったぜ」
「私もよ、初めは『子供のおもりなんてごめんだわ』って思ってた」
ま~、そうなんだろうとは思ってたけどね。
「それでも一緒に戦って、実際リンは凄く頼りになったよ。いや、戦う前の話し合いでも結構助けられてたかな?」
「ま、あんなすごい魔法。特に最後のは凄かったしな」
「そうそう。クィーンの首を切ったやつね。あれは凄かったわ」
いろいろ話し足りない気もして名残惜しかったが出発の時間となり、俺は馬車が見えなくなるまで門の所で見送った。
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