第四話 商隊さんといっしょ

 シャルディアたちの商隊に同行させて貰い、草原の街道を通ってホラブという町まで行くことになった。俺は常に見張り付きだったけどな。

 ホラブの町までの日程については、俺の専属見張りと化したハイルの話によると、あと二日ほどかかるらしかった。

 馬車は全部で五両あり、それを馬に乗った黒翼のメンバーが囲んで護衛に当り進んでいた。

 五両の馬車は、交易品を載せる幌馬車が二両、人を乗せるのに大型の幌馬車が一両、食料を載せた幌馬車が一両、シャルディアたち商人が乗るちょっと豪華な幌馬車が一両で、先ほどとらえた盗賊は三人は荷を載せた馬車の空きスペースに縛り上げて乗せられおり、その盗賊の監視に馬車の左右に馬に乗った黒翼のメンバーが一人ずつという布陣で、俺はハイルと一緒に盗賊たちを乗せたのとは別の荷が載せてある馬車の中にいた。

 ちなみにだが、この生き残った盗賊たちはホラブの町の守備隊に引き渡すことになるらしい。

 盗賊に応戦して盗賊が死んでしまっても罪にはならないし、町で討伐依頼などが出ていれば盗賊を引き渡し報告すれば賞金が出るらしく、もし賞金が出ていれば俺にも賞金を分けてくれるという事だった。ま、俺はスマホに大金入ってるからお金には困ってはいないんだけどね。

 ちなみに黒翼の他のメンバーは、ガタイのいい強面の男が十名と周りの男共よりさらに筋肉が凄い女が一名とローブを着てフードを目深に被り、口ものをローブの襟で隠した女? が一名の総勢十四名だった。

 商隊は馬車の御者台に一名ずつ、雑用に三名で商隊長のシャルディアを入れて総勢五名で、この商隊はここらで有名なバルデス商会に属する一団だという事だった。


 出発してすぐは魔物なんかとも出会う事なく順調に進んでいたので、ハイルに許可を取ってスマホで魔力の充電方法……いや、充填方法か。を見ることにした。


 魔力充填アプリ使用方法など


  1・初めに、このアプリは魔力を有する生物・無機物を問わない全ての物体より魔力を抜き取る事が出来る。

  2・魔力充填アプリを起動。

  3・充填アイコンをタップ。

  4・スマホの背面にある赤外線ポートより赤いレーザーポインターが照射される。

  5・対象は1m以内でなければならない。

  6・レーザーポインターを魔力を抜き取りたい物に当てる。

  7・そのまま魔力吸引アイコンをタップし、そのまま押しっぱなしにしする。

  8・押している間だけ魔力を対象より吸引します。

  9・対象のレベルが高すぎると使用者とのレベル差で鑑定できない場合がある。

 10・逆に送信することも可能。(送信については魔力送信の説明を見てください)


 あ、そうだ盗賊たちから少し魔力を吸ってスマホに魔力を充填しておきたいな。


 そう思いハイルに話し、シャルディアに確認を取ってから盗賊たちから魔力を吸い取ってスマホの魔力を満タンにしておいた。

 それを傍で見ていたハイルが、物珍しそうに眺めて質問してきた。

「リン君、変わった魔道具使ってるね。そんな変なの見た事も無いよ、どこで手に入れたのかな?」

「えっと、この世界に来た時に何故か持っていたんだよ」


 全くの嘘と言うわけではないはずだ! ハイルから目をそらし、そんな事を思っていた。


「へ~落ち人が魔道具持って現れたなんて聞いた事も無いな~、リン君って変なんだんだね」


 おい、『変なんだね』ってそれだとなんか俺が変人みたいじゃないか! それを言うなら『変わってるんだね』だろうが! それにしてもこいつ、始めはおどおどしてたのに、ずいぶん馴れ馴れしくなったもんだな。


 後にガイラルから聞いたのだが、このハイルと言う男は剣の腕はさほどでもなく、普段はおどおどして臆病なのだが、警戒心が強く観察力にも優れているので、見張りなどには適任な男と言う事だった。


「そうそう、リン君の魔法の使用許可だけど、今後は僕に任されたから使うときは事前に僕に言ってね」

「分かったよ。ちゃんと事前に言うよ」

 その後もハイルと、とりとめのない会話をしていると、草原地帯を抜けて辺りが荒野の様な景色に変わった所で、馬車の進路上に複数の魔物の影が発見された言う事で、その魔物の排除に俺も参加する事もなり、ガイラルが俺に質問してきた。

「リン、お前は剣を使えるのか?」

「いえ、剣は持ったこともないですよ。戦闘なら、魔法を使います」

 ガイラルは俺の答えを聞いて「そうか」と言うと何やら考え込んでから、ローブの女を呼んで一緒に後方から魔法を撃てと言われた。

「リン・クスノキです。よろしくお願いします。」

「……レイ……よろしく……」

「あ、あの、レイさんは無口な方なんですよ。でも魔術師としてはなかなかのものなんですよ」

 そっけない態度のレイをハイルがすかさずフォローしてきた。

 レイと呼ばれた女は、顔はフードを目深にかぶっていて口元もローブの襟で隠れていたので、俺はレイがどんな顔しているのかを見ることができなかった。年齢は、声からして同じくらいか少し下の年齢と感じた。

「それでハイル、魔物って何が出たんだ?」 

 今から戦うであろう相手が何なのか知りたくて、ハイルに聞いてみたんだけど、帰ってきた答えは予想外の物だった。

「分かりません」

「は?」


 分からないって、おかしくないか? 魔物を発見したんだよな?


「ちょ、ちょっと待っててくださいね、今リーダーに聞いてきますから」

 ハイルが慌ててガイラルの元に確認に行こうとしたら、レイがぼそっと口を開いた。

「……ハウンドドッグ」

「は、ハウンドドッグだそうです」


 うん、ハイル聞こえてたよ。繰り返さなくていいよ。それにしてもレイは口数少ないと言うか、単語を一言二言言うだけで片言な感じの喋り方だな。


 そして、ハウンドドッグx6との戦闘となった。ハウンドドッグは見た目は大型犬にしか見えない魔物だった。まずは魔法による先制攻撃でレイと一緒にファイヤーアロー(俺のは魔法アプリだけど)で攻撃し、魔法攻撃で半数を倒した。それを確認して前衛部隊が突撃し、残りのハウンドドッグをあっさり倒して戦闘は修了した。結局ハイルは横でギャーギャー喚いてるだけでうるさくて邪魔だったよ。

「おおリン、お前なかなかやるじゃないか、盗賊を倒したのは伊達じゃなかったな! うちのレイと同等の魔術師なんて相当なもんだぞ!」

 ガイラルに褒められたんだけど、やたらと背中をバシバシと遠慮なく叩くもんで、むせかえって呼吸困難になってしまった。


 レイってそんなにすごい魔術師だったのか、とてもそんな感じはしないんだけどな。


 その日は、日も傾いてきていたので、戦闘していた場所の近くにある程度開けていたところがあったので、そこで野営する事となった。

 料理に関しては異世界でそのうえ野営だし、どうせテンプレの干し肉と硬いパンだろうと期待はしていなかったのだが、雑用組の中に元料理人がいたらしく、思っていたよりまともで美味しい食事を食べれたのがうれしい誤算だった。

 その後は三人一組でテントに寝て、テント二組ごとにローテーションで見張りをする事になったのだが、なぜか俺の組は、俺とハイル、ここまではいい、そしてレイだった。


 おいおい、なんでレイも一緒なんだ? こっちの世界じゃ男と女が一緒のテントで寝るのが普通なのか? 俺としては緊張して寝付けないぞ!

 下心があるとかじゃないよ? 俺が純情なんだよ? ……信じれ。


 ふと横を見るとレイとハイルはすでに寝息を立てていた。そしてなぜか俺が真ん中だった。


 しゃーないな、レイは男と思って寝るか……って、こいつ寝る時もフードをかぶってるんだな。


 寝る時までフードをかぶっているレイの顔を見てみたい気もしたのだが、下手に見て女と意識してしまって寝付けなくなると思い、おとなしく寝てしまう事にした。

 そのあと、見張りの交代をしてハイルと雑談していた時もレイは何も自分から話すことはなかった。たまに何か聞くと、一言だけしか返ってこず、まったく会話にならなかった。


 こいつは会話のキャッチボールをする気が無いのか! こっちが投げたボールをそのまま下に叩き落とすような感じだぞ! 仲よくしろとは言わないけどさ、一緒に戦うんだからもうちょっとどうにかならないもんかな?


 そんな事を考えてふと空を見上げると、そこには大小三つの月が青く輝いて空に浮かんでいた。


 うお! 何だあれ? 月が三つもあるぞ! しかも真っ青なんだが、クレーターも見えないし大気でもあるのか? てか、月じゃなくて惑星かな?


 そんな夜空の景色に、異世界にきたことを今更ながら強く実感していたが、他にこれといって何事もなく交代の時間が来て、テントに戻るとすぐに睡魔に負けてぐっすりと眠った。そして、俺はこの異世界での初めての朝を迎える事となった。

 朝起きると、手早く朝食を食べ、後片付けをして慌ただしくホラブの町へ向けて出発した。

 馬車の中でハイルに、魔物によっては皮などが素材として商品価値があるので、むやみに傷をつけるような魔法は控えるようにと言われ、この辺りで出てくる魔物の種類と、身体のどの場所を狙えばいいかなど細かく指導された。

 使う魔法の種類なんかは、レイが魔物の名前と魔法の名前を言うだけと言う、説明になってるようなそうでもないような感じだったが、一応教えてくれた。


 レイはもうちょっと愛想よくとまでは言わないけど、普通に話すことができないのかな? 日本語が不自由な外国人と話してる気分になるぞ。


 その日の道中もたまに魔物と遭遇し、魔物に合わせて魔法を使って倒したり、牽制だけして前衛に任せたりして戦闘を繰り返し街道を進んだ。

 ちなみに昼食なのだが、明るいうちは少しでも先に進む事の方が大事なのだそうで、馬車に乗ったままパンと干し肉と水と言う昼食を食べた。

 そうして街道を進んでいると日が傾いてきたので、街道からちょっと奥に入った所にあった木に囲まれた空き地で野営の準備をする事になった。

 ちなみに今日は、ハウンドドッグx8・アルミラージx6・ビッグバイパーx5と遭遇し撃退した。それぞれから商人たちが素材をはぎ取っていると、シャルディアが結構質のいい素材が手に入ったと、何とも言えない笑みを浮かべていた。……その笑顔がちょっと怖かったよ。ちなみにアルミラージは角付きのウサギの様な魔物、ビックバイパーは大蛇の魔物だった。


 魔物の解体作業を見てほくそ笑んでるのを見ると、ちょっと猟奇的に見えるな。俺はあんなグロい光景は見たくないぞ、見たら食事が喉を通らなくなりそうだしな。


 その日の野営のテントも、昨日と同じメンバーだった。見張りをしていた時、遠くに町明かりが見えたのでハイルに聞いてみたら、あれが目的のホラブの町で、明日の午前中には着くと教えてくれた。


 明日には町に付けるのか、それなら明日にはやっとベッドで寝れるな。できれば風呂にも入りたいな~。 

 見張りを終えて、そんなことを考えながらテントに戻り眠りについた。

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