主人公の好きなもの
主人公の好きなもの
「もう1回...。」
そう自分に言い聞かせて、百円を入れる。クレーンゲームならではの陽気な音が鳴る。何故こうなったのかと言うと…
*
「着いたぁ!どうする!?何する!?」
ぴょこぴょこしながら、菜都が言った。
「お昼食べるには早いよね…?」
「やっぱ、ここはゲーセン?」
「おー!!!」
ショッピングモールに、到着した私たちはゲームセンターへ行くことになった。そこで、クレーンゲームの景品でいいものは無いかとそれぞれがそれぞれで周り、私はその中でライガーのぬいぐるみを見つけた。
もう1度言う。
ライガーのぬいぐるみだ。やるしかないだろう!
ここ最近、近くの動物園がライガーを飼育し始め、徐々にライガーグッズが増えてきたけれど、ぬいぐるみだ。私にとっては、次元が違う。
「あ、落ちた。もう一回...。」
基本ゲームは、得意だけれどクレーンゲームは苦手。
もう一回やろうと、サイフを開くと後 千円しかない。おかしい、来た時は五千円はあったはず。
そう思いな
がら、両替機で小銭に変えて また愛しのライガーの元へ戻る。
「よしっ、次こそは…。」
そう意気込んだその時、チャラ男から声をかけられる。
「いいのあったんだ? トラのぬいぐるみ?」
「トラじゃないライガー!!どこからどう見てもライガーでしょ!」
「ライガー...?あの、ライオンとトラの?」
チャラ男...ライガーを知らないなんて。ある意味似てるのに...。
「まぁいいわ。私はこれを取るまで離れないから、少し黙ってて。」
「それぐらいなら...。」
そう言って、チャラ男が、クレーンゲームをやり始める。倒れていたライガーのタグに引っ掛け、あっという間に景品が取れた。
「はい、どうぞ。」
そう言って、チャラ男は笑顔で渡してくる。
まぁ別に自分で取れたけど、
「...ありがとう。チャラ男のこと少し見直したわ。」
「ん。って、俺まだ名前覚えられてないの!?」
聞こえていない振りをして、ライガーのぬいぐるみを抱き締める。ふわふわしていて抱き心地がいい。
「そういえば、菜都は?」
クレーンゲームの景品を見回ってる時から見ていない。そんなにスペースも広くないから遭遇してもいい気もするけれど。
「権太とプリクラに入ってたの見たけど。」
「じゃ、私達も行こう。」
菜都は好きそうだ、プリクラ。ゲームセンターの奥の方に行くと、プリクラ機があった。4機位並んでいたから、真ん中辺りで待っていると、すぐに出てきた。
「みてみてー、面白くない!?」
そう言われて、見てみると 二人の顔がパイナップルや、りんご等に変わっていた。
「変なの撮ってきたね。」
「面白いじゃん! 憂羽はぁ?そのぬいぐるみ取ったのー?」
腕の中にいたライガーに指を指しながら菜都は言った。
「チャラ男が取ってくれたの。」
「えー!?此奴ぅ!憂羽にいい所見せても、憂羽はホイホイ取れないんだからね!」
「別に、取ろうって考えてねぇよ…。」
チャラ男は、苦笑した。その後もなにか言っていた気がするが、そんなに記憶に残っていない。
*
「んー、このピザ美味しい!アイスも美味しい!」
あの後、レストラン街で適当なお店に入った。菜都は、1人で2人前程食べているんじゃないかという食いっぷり。
「憂羽さんは、それだけでいいの?」
「うん。まぁお金もそんなに残っていないから。」
お察しの通り、私はライガーのクレーンゲームで所持金半分以上使っている。
菜都のようにいっぱいは食べれない。
「じゃぁ、柊に奢らせればいいじゃん!私天才ー、いいよね?柊!」
「まぁ、今日ぐらい いいよ?」
では、お言葉に甘えて...。実を言うと、中学生の時 商店街で小さな大食い大会に参加して優勝したことがある。勿論周りは大人だ。きっと周りの学生よりは 大食いだから、徹底的に人の金でタダ飯食ってやるっ。
私は、ライガーの次に、タダ飯が大好きなのだ。ケチと言われても否定はしない。
その後、私と菜都はどんどん食べまくり、会計の時には1万を超えたとかなんとか。
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