とある昼下がり


「お昼っ!ごっはん!お昼っ!ごっはんー!」

「菜都、迷惑になるからもう少し静かにね。」


ここは、学食。周りが煩いから、迷惑になることはないと思うが…。

にしても、今日は混んでいる。席の方を見てみると皆カレーを食べていた。


「ね、ねぇ...」

「権太どしたぁ?」


呑気に、菜都が聞く。


「こんなに混んでると、座れないし、僕が爆発したら大変だよ…。」

「そうだねぇ、売店いく?」


2度目だが、今日は本当に混んでいる。有名人でも来ているのだろうか…

券売機まで行列ができていて、その行列も亀の歩くスピードより動くのが遅い。

...ナマケモノより遅いんじゃないか。


「屋上とかどう?」

「あー、屋上!...って誰!?」


背後から声をかけられた。

茶髪でピアスの空いた少年...ヤンキー?チャラ男?

クラスメートではない気はするけど。


彼は、不愉快そうに言う。


「俺クラスメートなんだけどねぇ…。」

「えっ、貴方いた?」


テストで一番無いと思っていた選択肢が、正解だったってこういう事...。

英単語とかよくある。abcdの、関係ないか。


「ほら、後ろの席の 柊 見鶴」

「あーー!!権太のせいで自己紹介出来なかった奴だぁ!!!」

「え?僕のせい!?」


席は、名前順のはずだけど権太は、一番端だしね。

そこを無くせば、チャラ男は私の後ろか...。

権太の自己紹介の後に、チャラ男が自己紹介したらそりゃ、印象残らない訳ね。


「アハハ...。食べる場所に困ってるなら、屋上がいいと思うけど?今日は天気もいいしさー」

「快晴だしね。ねぇ菜都、そうしようか。」


窓ガラスの向こうに広がる空を眺めて、そう言った。




*屋上*


「へぇ、柊くんは、そんな能力なんだ!」


感心したように権太が言った。

チャラ男の能力evebisは、相手のevebisが分かるという、なんとも使えるのか微妙

な能力らしい。


「絶対使えないけどね!」


私が思った事を、菜都が口にした。菜都は少し機嫌が悪い

あの後、チャラ男も一緒に食べるような方向になり、私はどうでもよかったから「いいよ」と応えてしまった。

いけないところなんてないと思うのだけど…。


そんな面白くもない雑談をしていると、ドンドンドンドンとドアを叩く音がした。

幸い座っているのがドアから近かった為、急いでドアを開ける。


「なんで開いてないんですか!先生の為に空けといてって言ってるでしょう!!」


そこには、30cm程度のうさぎのぬいぐるみが居た...。


「校長せんせぇぇえ!!」

「ピギャアアアア!!」

すると、菜都が急にうさぎのぬいぐるみに飛びつこうとする。

それをかわし、チャラ男の肩に乗っかるうさぎのぬいぐるみ。


カオスすぎて頭が追いつかない...。


「うわっ、校長先生濡れてるって。」

見鶴のシャツの右肩部分は、湿ってしまっていた。


後から、分かったが校長先生の能力は、物を操る能力。丁度自身が引きこもりの為、校長の仕事はぬいぐるみでこなしているらしい。

こなしているのか分からないが。


「えぇ...校長先生なんで濡れてるの?水遊び?」

権太が聞く。

「違いますよ!!今日は、学食に琳果さんが来てたんですよ!!まさか、皆さん琳果さんのカレー食べなかったわけじゃないですよね!?」


琳果さん...。どこの誰だか知らないが、幻のカレーの噂は聞いたことがある。

絶品らしい。校長先生がカレーを食べる所を想像して、菜都は笑った。私も、少し吹き出してしまう。


「校長先生どうやって食べるのさぁ。」

「普通に顔面から、ドバっといきますよ!!」


真顔でそう言われて、権太達も笑う。

ぬいぐるみに真顔なんてないと思うけど。



濡れていた校長先生は、その後私達の先輩に乾かしてもらいました…チャンチャン。

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