第12話 上司の行動②
「何故ここに呼ばれたのか分かっているだろうな?」
「いや、全くもって検討が付きません」
皆さんこんにちは。
俺です俺、ハーディアスです。
俺は今、またまた上層部しか立ち入れない最高作戦本部にお呼ばれしちゃってます。
前の招集からたった一週間ちょっとでまた呼ばれる何て、俺ってばすんごくビックリしてます。
もしかしたら、今までの俺の頑張りが認められて昇進とかしちゃう感じですかね!?
「しらばくれるのもいい加減にしろ‼」
お偉いさんの一人が、額に青筋を立てながら机を叩く。
あー、どうもお祝いって感じの話じゃなさそうですね。
そりゃそうか、俺特に何もしてないし、頑張ってないし、むしろバカやって邪魔してるほうが多いし。
俺は短く息を吐き、佇まいを正す。
「お言葉ですがセルバス少将、しらばくれるも何も私は本当にここに呼ばれた意味が分かっていないのです。なので私が呼ばれた意味を説明してしただけないでしょうか?そもそも私の様なお頭が足りてないバカが、高貴で賢智である貴方方の考えていることを理解できているはずがないとお分かりのはずですよね?」
「貴様…ぺらぺらと‼」
「よい、セルバス少将。」
セルバス少将は凄い形相でこちらを睨みつけるが、一番奥に座っている人に制止される。
「其方の口は本当によく回る口であるな、ハーディアス大佐」
「お褒めの言葉ありがとうございます、コーラン大将」
俺は皮肉の言葉に対して、礼儀正しく首を垂れる。
やっぱりそううまくはいかせて貰えないか。
ちょとでも自分のペースに持っていけたらと思っていたんだがな、流石コーラン大将、場数がちげーわ。
「さて、話を戻そうか。其方が今回ここに呼ばれた理由だが」
「…」
「大隊の編成に口を挟んでいる話が上がって来ていてな。それの真偽を確かめるために呼んだのだ」
あーやっぱりそのことか…
俺は心の中で舌打ちする。
「なんと‼そんな事を誰が言っているのですか!?」
俺は大げさなリアクションをとって、俺ではないことをアピールする。
「大隊を任されている少佐達からだ‼貴様の命で大隊の移動が行われたとの報告が多数寄越されている‼」
セルバス少将は再び机を叩く。
「とのことだが…何か言い分はあるかな?ハーディアス大佐」
「ふむふむ…」
俺は頷く仕草をした後に肩を竦め、
「いやー全然わからないですね。記憶にございません」
思いっ切り白を切った。
「ふざけるな‼」
その瞬間、20人ほどのいる中の大半のお偉いさんたちが怒鳴り声をあげた。
「こちらには様々な所から情報が来ているだぞ‼」
「勝手な行動ばかりした上にこれか‼」
「死刑だ‼こやつを死刑にしろ‼」
俺の発言が余程頭に来たのか、いつもは冷静なお偉いさん方が声を荒げて俺に対する暴言をこれでもかとぶつけてくる。
怒るだろーなって思ってたけど、こりゃあ相当きてんな。
まぁ俺はこういうの慣れてるから別に何言われてもいいけどさ。
暴言を言われてる中でも、俺は表情を変えずに全てスルー。
これが大人の世界で生きていく為に一番必要な力だと俺は信じている。
「静まれ」
「…っ‼」
いつまで続くかなーっと考えていたら、コーラン大将が一言呟いた。
大きな声ではないのにしっかりと聞こえ、それでいて相手に恐怖を与えるような冷たい声だ。
『これがコーラン大将の力か…』
俺に対しての言葉ではないのに、俺にまで恐怖を与えるその威圧感に本物の強さを感じる。
「すまないな、ハーディアス大佐。少々うるさくしてしまった。話を戻そうか」
「はい」
コーラン大将は柔らかい笑顔でこちらに話しかけてくれる。
それが心の底から怖い。冗談抜きで怖い。
「本当に記憶にないのだな」
「はい、本当に記憶にございません」
「またそのようなことを‼」
うるさいと怒られた後でまた怒鳴り声をあげるセルバス少将。
「本当の事です」
「じゃあこちらに上げられえている情報は嘘だと言うのか‼」
「ええ、そういう事になるでしょう」
ふぅっと息を吐き出してから、呼吸を整えて口を開く。
「今回、私がここに呼ばれた事に関しては本当に記憶にございません。なぜそのようなことが起こったのかすら見当もつきませんね。まぁ、バカな私が思いつくことと言えば、私の事を疎ましく思ったどこぞの誰かが起こした出来事ってことぐらいでしょうか。理由としては『生れがいいだけの無能が大佐で、しかも最近は最高作戦本部に出入りをしたそうだ』っといった感じの嫉妬が暴走した形ではないでしょうか。いやーバカがこのようなところに来るといい事なんてありはしませんね。馬鹿にされるわ部下は失うわ部下にクーデターまがいの事されるわで大変ですね」
最後に、あははは~っと乾いた笑いで〆る。
「そんな戯言で…」
「ふむ、確かに一理あるな」
「な⁉コーラン大佐!?」
少将が否定する言葉を言う前に、大将が俺の言葉を肯定する。
「バカなりに少しは考えているではないか」
コーラン大佐は俺の話に興味がありげな目線をこちらに向ける。
「お褒めのお言葉感謝いたします」
俺は再び首を垂れる。
「コーラン大将‼このような奴の話を肯定するのですか!?」
「少将、少し煩いぞ」
「しかし…‼」
はぁ、っと大将はため息をつく。
「私は一理あると言っただけだ。ハーディアスがやっていないと言ったわけでもない」
「く…」
「それに、元々今回の招集はちと無理やりすぎなところもあった。証拠と言っても明確な書類や何かの痕跡があったわけでもない。しかも今回の騒動はセルバス少将が中心となって動いているようだが、その情報と言うのはほとんどが少将直属の部下が持ち寄ったものと言う事ではないか」
「大将殿は私を疑うと言うのですか!?私がこの騒動を起こしたとでも!?」
少将は思いもよらない所からの攻撃に、慌てた様子でコーラン大将に異議を言う。
何だかいい感じにどうにかなりようだな。
「その可能性もあると言う事だ。分かったらその口を塞ぐのだな」
「……ちっ‼」
少将は、俺を睨みながら大きな舌打ちをして黙った。
おーこわいこわい。
「それで、結局のところ俺はどうなるんでしょうか?」
「そうだな…今回の事は証拠不十分とし、処分等は無しにする。ただし、完全に容疑が晴れたというわけではない。よって、しばらくの間其方の行動には制限と監視を付けることにする。異論は認めん」
他の人達も異論はないのか、頷いている。
「よいな?」
「了解いたしました」
俺は大将に敬礼をし、条件を承諾した。
「それでは今日の話はもう終了だな。帰るとしよう」
大将は、疲れた疲れたっと言いながらいの一番に部屋を出て行った。
それに続いて他の方々も次々と出ていき、最後にセルバス少将が出る。
「今回は運が良かったが、あまり調子に乗らない事だな」
「…肝に銘じておきますよ」
そんなことを言われたが、俺はバカなので部屋を出る時にはもう忘れてしまっていた。
静かな夜、自分の部屋にいると通信用魔道具に反応が来たので対応に出る。
「何の用ですか?」
『うまく行っているようだな』
「まぁ一応ですけどね。ぶっちゃけいくら命があっても足りないと思っちゃうぐらい大変なんですけど」
『引き続きよろしく頼むぞ』
「はぁ…分かりましたよ」
通信が切れ、静けさが戻る。
「頑張りますよ…言われなくてもな」
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