第4話仕事内容

 エラファルド大森林。


 それは、『第一級危険区域』に指定されており、この世界の中でも5本の指に入るほどの危険区域の一つである。


 理由としては様々なものがあるが、一番の理由としては、この森は一度奥に迷い込むと二度と戻って来れなくなると言われているのだ。


  ある人は、森には危険な動物が多く住んでいるからすぐに殺されてしまう。

  ある人は、森に棲む妖精たちが人間を興味本位で殺している。

  ある人は、森にある聖域の番人に殺されている。


 そんなバカげた話が、随分と昔から言われている。


「王国騎士軍特殊危険区域観測機関所属カイト=ラグナルド。貴公にはエラファルド大森林にあると言われている『光森の聖域』の発見、及び調査の為の長期遠征をせよ。だと!?」


 俺はそんなところに『仕事』としていかなければならなくなった。


 ここで、俺の仕事について少し説明したいと思う。


 俺は今、王国を守るための王国騎士軍という所で働いでいるしている。

 王国騎士軍は、国防以外にも技術開発や子供に対する教育機関の管理、国民たちの土地管理など様々な事を仕事としている。

 その中でも最も危険で特殊なのが、俺の所属している『特殊危険区域観測機関』と言う所だ。


 仕事内容は、国で危険と指定されている地域を観察、測定すること。

 何故このような事をするのかと言うと、特殊危険区域は未開の地とだけあって、国に有益とされている物が多く存在している可能性があるからだ。


 特殊危険区域観測機関はこの地域を観察し、本当に有益な物があるのか、あるとしたら何処にあるのか、どのような物なのか、どのようにすれば獲得できるのかを細かく観測して報告するのが大体の仕事である。


「表向きはそうだけど、本当の目的はいらない人材の処分だよな」


 俺は、もう一度ソファーに座りうな垂れた。


 そもそも、国がどのような場所を特殊危険区域に指定するかと言うと、『有効活用できそうな物があるが、危険で獲得が困難な場所』である。

 つまり、かなりの強者であろうと生きて帰って来れる確率が極めて低いような場所なのだ。


 そんな場所に少人数ないし単独で乗り込んで調査をしなければならない。

 この部署の仕事は常に死が隣り合わせなのだ。


 所属していた多くの者は死んだり、復帰不可能な重症を負ってこの部署から去った。


 なので、この部署の別名は『墓場探し』。自分が死ぬ場所を探しに行くバカな奴らがいる場所とされている。


「誰も好きでこんな部署にいないっつーの」


 俺がこの部署で働くきっかけになったのが、この『目』の能力だった。

 この目はバンとファラを見ることが出来る。なので、危険区域でも特に危険な場所や有益な場所などを見つけることが出来ると判断され、上からの抜擢でこの部署に配属された。


 結果、上の考えは当たっていた。

 俺は、危険区域において様々な情報を得ることが出来、様々な有益物を発見した。しかし、情報を得ることが出来ても俺自身が弱っちぃため、肝心の有益物の獲得だったり、有益物までの道のりだったりを調べることはできなかった。


 そのため、その後に派遣される屈強な騎士軍達に利益を掠め取られることがほとんどだった。

 それによって俺の信頼度や貢献度はガタ落ち。最近では用無し扱いを受けている。


「そして今回はエラファルド大森林。しかも聖域調査と来た。絶対お役目ごめんで死んで来いって事じゃん」


 はぁーっと大きくため息をついた後、先輩が座っていた机を蹴っ飛ばした。


「くそ‼あのクソ上司‼自分は絶対に死なないような楽な場所ばっかり行って、俺達下っ端を片っ端から殺しに行かせやがる‼死んだら絶対呪ってやる」


 机や椅子などに当たることで、やり場のない怒りをどうにか落ち着かせた。


 どかっとソファーに座った後、天井を見る。


「俺、また死ぬのかなぁ…」


 前の世界での、電車の事故を思い出す。

 すごく痛くて苦しかった。他の人の泣き声が耳に残っている。血の匂いと鉄の匂いが混ざって気持ち悪かった。


「嫌だなぁ…」


 いつの間にか涙を流していた。


「何泣いてるのよ。怪我でもしたの?」

「うえ?」


 声のした方を向いてみると、見知った顔の女性が心配そうな顔でこっちを見ていた。


「リザ…」

「ちゃんと帰って来たわね。おかえり、カイト」


 リザは俺の方に来て、笑顔で嬉しいことを言ってくれた。

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