▼もう一度正義の話をしよう

今、君たちの目の前を暴走する電車が走り抜けようとしている。


このままなにもしなければ、レール上にいる5人の作業員を引き殺してしまうだろう。

しかし、君たちが目の前にあるレバーを引けば列車は進路を変更し、1人の作業員の命を奪うことになる。


考えてみて欲しい。

君たちはどちらの行動を選択すべきかを。

それが正義を問うということだ。


答えは出たかな?

そうか。

君たちはレバーを引かないんだね。

なぜだろう?


たぶん君たちはこう考えたんだ。

どんな事情があっても人を手段として用いてはならない、と。

それは何も悪いことじゃない。

自分の判断の枠組を理解すること、それが一番大切なのだから。


さて、ここに投票の結果がある。

選ばれたのは、たぶん僕だ。

この結果を採用すれば、より多くの人の利益を満たすことになる。しかし、私は君たちの手段と成り下がるだろう。私は同意してないからね。


え? どうすれば同意したとみなすことができるのかだって?

ははは、勘弁してくれよ。

そんな面白い議題、時間がいくらあっても足りないよ。

取り敢えず、私は同意していない。

今はそれで許してくれないだろうか。

ありがとう。


さあそろそろ聞いてみようか。

クラス全体の利益をとるか。

一人の人格をとるか。


君たちは、どうする?



*ご安心下さい。このあと太郎は美化委員に決定致しました。正義は果たされたのです。

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