嘘つきの村
「なあなあ、嘘つきの村って知ってる?」
海外旅行から帰ってきた友人が話しかけてきた。聞くところによると、ある国の奥地に村人が嘘しか言わない村があり、その入口には、
「嘘つきたち」
と書かれた看板が立っているそうだ。
そんな村が本当にあるのか確かめたくなった私は、実際に行ってみることにした。
友人に教えてもらった場所を目指して山道を歩き続け、ようやく小さな集落にたどり着いた。しかし、看板など見あたらない。
近くで農作業をしていたおじさんによるとここは正直者の村だという。嘘つきの村について尋ねてみると、知ってる者がいないか村中を聞いて回ってくれた。
それでも誰一人知っているものはいない。
私は探索を諦め、村で宿を取ることにした。
村人たちは盛大なおもてなしをしてくれた。
明くる朝、私は村人たちに別れを告げ、村を後にした。帰り道、私は村の出口付近に杭が刺さっていることに気づいた。村の側から見ると、子供っぽい字で何か書いてある。
「嘘つきたち」
嘘つきの村はとなりにあったのだ。
何が正直者の村だ。
私は内心怒りながら、杭を越えて歩き出した。
嘘つきの村は広い村だった。
何時間も歩き続け、途中飛行機に乗り、気がつけば私は日本に帰って来ていた。それでも村の終わりは見えない。
久しぶりにあった友人に、旅行がどうだったか聞かれた私は、何か面白い土産話がないか思案してこう答えた。
「なあなあ、嘘つきの村って知ってる?」
誰が嘘つきだったのか、私はやっと理解した。
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