廻る、巡る。

屋根裏

廻る、巡る。

 車通りの少ない山道を進む車の中で、樹海を見ていた。

 車に酔って重くなった頭を窓ガラスに持たせかけたまま、流れ去る木々の中に目を凝らす。

 鬱蒼としていたが、時折向こう側の光が漏れてくる。そう深い樹海ではないらしい。

 地中からせり出す木の根や、そこに生えた苔から、強い生命力を感じる。

 ランダム再生のウォークマンから流れる声は、恋人の去った部屋でタバコをふかす女性を歌う。

 そんなリアルな日常が、文明に置き去りにされた、樹海という非日常と交差する。

 とはいえ、恋人が去るのは日常ではないし、目の前の風景は樹海や動物にとっては日常であって。

 あ、動物からしたらこの車が非日常なのか。いや、でももう日常か。

 そんなぐるぐるが、頭をめぐる。この時間が、とてつもなく愛おしい。

 この時間が紡ぎ出すのは、音楽か、物語か。

 いずれにしろそれは僕にとっての宝物になりうる。指標、と言うべきか。

 樹海の向こうに広がる光の断片に触れたら、きっと全てが見たくなる。

 けれど樹海を抜ければ、光は日常となる。

 

 非日常は、やがて日常に。

 

 自分の、あなたのいる場所は、つまらないものでしょうか。あなたの宝物は、宝物だったものは。

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廻る、巡る。 屋根裏 @Atc_Strtl

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