えぴそ~ど26 「ポンジャラで遊ぼうっ ~二巡目」


 凡介の要望でリアルホログラムは出ない設定にした。

 でも、“負けた者が私の部屋に行く仕様”は有効にしてあるわ。

 

 だってこれはチャンスだもの。

 この日本に後ろ髪を引かれる思いはあるけれど、優先すべきは凡介を『ポッパニア』に送ることなのよ――。


 ルールは十回勝負で最終的に点数の一番高い者が勝ち。

 逆に負けは、点数の最も低い者となる。

 そして特別ルールとして、悪質なゲームの妨げ行為は無条件で負けとなる。


 ところで気を付けなければいけないのは、キモオタが再度私の部屋(室内クリーニング済み)に行ってしまうことね。

 だからこいつには絶対負けないでもらわないと――。

 

 私はシコ郎を見る。

 シコ郎も私を見ていた。

 ほぼ、視姦に等しいぎらついた目で。


「ハァハァ。淫改造したい。ロゼリアたんを淫改造したい。ハァハァ」


 フィギュアじゃねーからっ!

 つーか何で名前知ってんのよっ。

 ……あ、アラモードがばらしたんだっけ? もうっこのちっぱいめっ。 


 私はシコ郎から目を逸らすと、パイを捨てる。


 さあ、このパイを取りなさい、キモオタ。

 これを取れば、あんたが四十八万点の男神髭面セットが出来上がることを、私は『女神聖眼ゴッデス・セイントアイ(透)』で知っているのよ。ケケ。


 でもシコ郎は、捨てパイを取らなかった。

 代わりに山からパイを取ったアラモードが、「ポンジャラなのですっ」と役が完成したときの声を上げた。

 

 完成した役は、六十万点の大女神セクシィセットだった。


 ちょっとこのキモオタ、なんで上がらないのよっ! 

 意味不明なんだけどっ。


 それからもシコ郎は、私がおぜん立てしてやっているのに一向に上がるそぶりを見せなかった。


 パイを山から取るたびに、「どうしてこうなった」とか「ギギギッ」とか「爆発しろ!」とか「ピザでも食ってろ、デブ」とか、一人でオタギレはしていたけれど。


 そうこうしているうちに、最後である十回目の勝負が始まる。

 アラモードは五百二十万点。

 凡介が七百十万点。

 そして私とシコ郎が〇点という状態で。


 ちっくしょう、このキモオタが全く上がらないから、私も上がれないじゃんっ!

 幸いなのは、凡介が勝ってくれて、メインヒロイン争奪戦が無効試合になるってことだけど……本当なんで上がんないのよ、この変態キモオタはよぉぉっ!


 私は何度目かのお膳立てをする。

 これを取って女神性悪セットで上がりなさいよっ!


 でもやっぱりシコ郎は上がらなかった。

 そこで私の堪忍袋の緒が、プツンと切れた。


「ちょっとあんた、いい加減にしなさいよっ! なんで、何度も何度も、あんたが上がれるようなパイを捨ててやってんのに上がんないのよっ!? 一体、何がしたいのよ、あんたさっ!」


 切れて立ち上がる私だったのだけど、シコ郎は山から取ったパイを見つめたまま固まっていた。

 すると急に震えだし、「キタキタキタキタアアアアッ! ポンジャラアアアッ!!」と咆哮ほうこうを上げた。


「え? や、役完成したの? ならいいのだけど……見せてみなさいよ」


 私がうながすと、シコ郎は勿体もったいぶるような仕草で全てのパイを見せる。


「これが僕のファイナルアンサーだ。――女神のおっぱいプルルンセット。全員、巨乳の女神を集めたおっ! どやっ」


 そんなあがり役、存在しねーからっ!!


 そのとき、突如、「ビーッ、ビーッ」とポンジャラ本体から警告音が鳴る。

 多分、いや間違いなくシコ郎の行為が、悪質なゲームの妨げ行為と判定されたせいだろう。


 ――え? 

 ち、ちょっと待ってよっ?

 ということは、キモオタは負けってことになるじゃないっ!!


 シコ郎を見る。

 


「ち、ちょっと待ってっ! 行かないでっ、行っちゃだめっ!!」


 私は天界の自室に行かせまいと、思わずシコ郎にしがみつく。

 いや、しがみついてしまった。

 そしてシコ郎が私の肩を抱く。

 

愛しき女神様マイ・スウィート・ゴッデス、ロゼリアよ。共に行こう、二人の愛の巣へ――(キリッ」


 いや、ちょっ、ちょまっ、ちょッ――――…………………………。



 ◆



「……どこに行ったのですか? あの二人」


「さあな。さて、飴でもなめるか」


「優しくペロペロするのです、凡介様」


 ペロペロ。


「……あ」

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