えぴそ~ど27 「遊園地でエンジョイしたいっ(午前の部―①)」
――え、うそっ? 明日で
――だからどうした?
――だからどうしたじゃないわよっ。ゴールデン・ウィークの思い出がキモオタと一緒に天界――じゃなくて忍者の里に行っちゃっただけとか、あり得ないわよっ。
――いい思い出じゃないか。色
――うまいこと言わなくていいからっ! その最悪な思い出を別の思い出で上書きしたいのよっ。……だから、だから遊園地に連れてって、凡介っ」
――
――連れてって、連れてって、行かなきゃやだやだ、絶対やだ! 一生のお願いだから連れてってえええええええええ――――…………。
と、凡介にお願いしたのが昨日。
そして今日、技と引き換えに手に入れた遊園地行きの切符を胸に、私は凡介と二人でその遊園地へと出かけるのだった。
だったのに――。
「用意できたのです。では行くのです。アラモと凡介様の、愛のテーマパークへ」
おめかししたアラモードがなぜかいた。
「なんであんたまでいるのよっ! ……ちょっと凡介どういうこと? もしかしてあなたが誘ったのっ?」
「いや。アラモードに誘われた。別にいいだろ。二人も三人も一緒だ」
アラモードが誘った?
やけにタイミングいいわね。
いや、良すぎよ。一体どういうこと――?。
「連れてって、連れてって、行かなきゃやだやだ、絶対やだ! 一生のお願いだから連れてってえええええええ……とかロゼリアさん、いつから
壁越しに聞こえていたらしい。
うっすい壁のバカっ。バカバカバカッ!!
「で、でもあんた、お金あんの? 引っ越し資金もそうだけど、どうやって日本の通貨を手に入れたのよ?」
「天界銀行窓口でゴデンから円に変えたに決まってるのです。あとはアルバイトで稼いでいるのです」
そういや、天界銀行なんてものあったっけ。
それはそうと、
「アルバイト? あんた一四歳でしょ? 年齢的にできるわけないじゃない」
「できるのです。この券を買ってもらっているのです」
と、数枚の紙切れを見せてくるアラモード。
それらの紙きれには、
[15分お急ぎクンカクンカ券。6000円]
[1時間たっぷり満足クンカクンカ券。15000円]
[10分間写真撮影。ノーマル10000円。水着50000円]
「……は? 何よこれ? つーか誰がこんなもの買うのよ?」
「萌え豚おやじのシコローさんなのです。アラモたんは女神だからって喜んで購入したのです。この券もすでに予約済みなのです」
あのキモオタっ、私のパンツ代もちゃんと払いなさいよおおおおおおおっ!!
◆
「やっと着いたわね、遊園地っ」
バスと電車で1時間の遊園地――『
規模は小さめだけど、休日ということもあってか、それなりに賑わっていた。
「じゃあ楽しんでこい。俺はそこの店で待っているから終わったら呼んでくれ」
入園したとたん、入り口付近の喫茶店に入ろうとする凡介。
手には三冊の『平凡の教え』が握られていた。
閉園まで、それで時間潰す気まんまんじゃんっ!!
「ち、ちょっと待って、凡介っ」
「ま、待つのです。凡介様」
私とアラモードに両手をつかまれた凡介が、眉間にしわを寄せてこちらに見向く。
「なんだ?」
「なんだじゃないないわよっ。なんでアラモードと二人で遊園地をエンジョイしなきゃなんないのよっ。せっかく来たんだから凡介も乗り物を楽しもーよ、ねっ? まずは私と一緒に『コーヒーカップ』――」
「凡介様っ。アラモと一緒に『メリーゴーランド』に乗るのです。メインヒロインのアラモと一緒に『メリーゴーランド』に」
「「ぐぬぬぅ」」と、私とアラモードの間に火花が散る。
見るに見かねた凡介が「ったく……ならば、じゃんけんで決めろ」と言うので、いざじゃんけん開始。
『最初はグー』の掛け声でグーを出す私だったのだけど、なぜかその状態で体が固まった。
「――じゃーんけーん、ポンッ。やった、アラモがパーで勝ったのです。ささ、凡介様、アラモと一緒に『メリーゴーランド』に乗るのです」
『メリーゴーランド』へと向かう凡介とアラモードを、半ば呆然状態で見送る私。
何よ、今の?
なんで、急に体が固まったのかしら?
――え? うそ……も、もしかしてあいつ、魔法を使ったのっ!?
そうよっ、絶対そうよっ! 瞬間硬化魔法『カナシバリー』を使用したのよっ!!
それなら説明が付くわっ。
あんのガキャァ。
公平なじゃんけんに魔法を持ち込むなんて絶対に許さないんだから――ッ!
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