えぴそ~ど25 「ポンジャラで遊ぼうっ ~一巡目」


■ポンジャラとはドンジャラみたいな遊びである。では本編をどうぞ♪




「うふ、うふふふ」


 私は『ドコノショップ?』で買ったスマホケースを眺めながら、笑みを浮かべる。

 それは色は違うものの、綾乃ちゃんとお揃いのスマホケースだった。

 

 でも、先週アウトレットに行ったときはなかったのに、まさか近所の『ドコノショップ?』に売っているなんて思わなかったな。

 あとで綾乃ちゃんに、これ買ったよって写メしーよおっと。


 ……そういえば、今日からG・Wゴールデン・ウィークだっけ?

 何が黄金なのか分からないけど、長期休みなのは確かね。

 どこかに連れて行ってくれるかしら? 凡介。

 凡介がもうすこし能動的に動いてくれると、話の幅が広がって助かるのよね。


 話の幅って何かしら?と自問していると、我が家であるボロアパートが見えてくる。

『202号室』の前に立ち、ドアを開けようとする私。

 

 すると、


「凡介様、ペロペロするのです。そこを優しくペロペロするのです。……あ」


 部屋の中からアラモードの声が聞こえた。


 なんで部屋にアラモードがいるのよっ。

 しかも今、ペロペロとか聞こえたのだけど、あいつ凡介と何しているの……?


「か、噛んじゃダメなのです。甘噛みでもダメなのです。優しく、優しくペロペロなのです。そう、お上手なのです。……あ」


 ち、ちょっと、まさか――っ!?

  

 私は二人のみだらな行為を想像して、ドアを乱暴に開けて部屋に飛び込んだ。


「アラモードッ、あんた私の凡介と一体何を――って、あれ?」


「うるさい奴め。もっと静かに入ってこれないのか、お前は」


 凡介は棒付きの飴をなめていた。

 そばに座るアラモードが私をめつける。


「そうなのです。静かにするのです。今凡介様は、アラモがあげた『ちゅっぱちゅぱチャプス』を優しくペロペロなめている最中なのです。……あ」


 ペロペロもそうだけど、その“……あ”って何だよっ!

 いや、そんなことはいいわ。

 それより――、


「なんであんたが部屋にいるのよっ。あんたの部屋はとなりでしょ? 本当に何をしにきたのよっ?」


「何をしにもなにも、ご~るでんうい~くだから来たのです!」


 ない胸を張って腰に両手のアラモード。


 いや、声高に言ってるけど理由になってないからっ。


「つーか、六話連続で出てくるとか出しゃばり過ぎなんじゃない? 立場をわきまえなさいよ、このサブヒロイン」


「アラモはサブヒロインじゃないのですっ。年増のロゼリアさんがサブヒロインに決まっているのです。年増のヒロインなんて需要がないのです。売れないのです」


「年増年増うるさいわねっ! 十九歳なら十分メインヒロインを張れるわよ! ペチャパイのヒロインのほうが売れないよーだっ。え? 私? 私はバスト89のEカップよ。すっごい柔らかいんだから。ウフ」


「そ、そんなこと聞いていないのですっ。うぅ、こうなったらさっき見つけた――」


 そこまで言うと、何を思ったのかアラモードが勝手に押入れを漁りだす。

 そして一つの『転移代用アイテムおもちゃ』を取り出すと言った。


「このポンジャラで勝負なのですっ。勝ったほうがメインヒロイン決定なのです!」


 なんか唐突じゃねっ?



 ◆



 どうせやるなら四人のほうが楽しいだろうとの凡介。

 だから今、この場には四人いる。

 私とアラモードと凡介――そして志湖シコ郎だった。


愛しき女神様マイ・スウィート・ゴッデスよ、再度お隣失礼します。クンカクンカ」


「いやよっ! なんでキモオタなのよっ!? モブキャラでもいいから別の人間連れてきて、凡介ッ! つーか髪を嗅ぐなっ、この変態っ!!」


「だから失礼なことを言うな。俺が誘ったらこころよく引き受けてくれたんだ。、むしろ感謝しろ」


 そりゃ来るわな、ああ、来るわっ!


 いきどおる私をよそに、ポンジャラを置いたちゃぶ台を挟んで向かい合うように座る凡介。


「見た目、異世界転移……いや、異世界転生部門の勇者に相応しいのです。すごい逸材が近くにいたのです。Sランクの異世界を普通に救いそうなのです」


 続いて、シコ郎の外見に驚愕中のアラモードが私の右側に座る。

 最後に、唯一空いている私の左側に腰を下ろす、そのシコ郎。


 するとシコ郎が目の前のアラモードを凝視する。

 次に前に乗り出して鼻をヒクヒクさせると、口を開いた。

 

「誰、この子。なんか愛しき女神様マイ・スウィート・ゴッデスと一緒で、女神臭がするんだけど」


 ……いや、女神臭ってっ。


「アラモは女神なのです。ロゼリアさんより若くてピッチピチの女神なのです。――って、嗅ぎすぎなのです。離れるのです、萌え豚おやじ。『オタ臭』がすごいのです」


 眉間に皺を寄せて鼻をつまむアラモード。


 確かにキモオタっていつもなんか臭うわよね。

 そっか、これが『オタ臭』。

 でも、アラモードも辛辣しんらつよね。

 いきなり萌え豚おやじ呼ばわりで、『オタ臭』とかwww


「笑ってますけど、ロゼリアさんはロゼリアさんで加齢臭がすごいのです」


 めっちゃ辛辣ううぅッ!!


「出るかっ、十九歳の女神様からそんな臭いっ!! ああもうっ、早く始めてさっさと終わりにしましょっ。凡介、ポンジャラを開始するわよっ」


 そして始めるポンジャラ。

 

 

 このとき、ロゼリアは知らなかった。

 ポンジャラが開けてはいけないパンドラの箱だったことを――。


 

 …………そうなのっ!?

 つーかいきなり三人称になったら、読者が混乱するわよっ。

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