第36話
ZACKの施設内にはコンクリート打ちっぱなしの質素な部屋がある。
そこには正方形の白いデスクに2つのパイプ椅子があり2人男が座っていた。
片方はQUEEN、もう片方は佐渡が座っていた。
『お前たちの目的はなんだ? 陸奥の破壊か』
『今となってはそうかもな』
『どういうことだ』
『当初の計画は違った、陸奥の支配が目的だった』
『陸奥の支配・・・』
QUEENがいる部屋には長方形の大きなガラス窓が1枚ある。
その窓はQUEEN側からは見えない仕組みになっており、その奥にはもう一つ小さな部屋があった。
そこに鳥飼楓、楠木宗介がおり、QUEENと佐渡の様子が見える仕組みになっていた。
『陸奥の・・支配って・・』宗介が吐き出すように呟いた。
『KINGは”999(スリーナイン)”を傘下に収め、陸奥港を牛耳ることに成功した』
『そんなこと市や警察が黙ってないだろう』
『”999”が港で密輸した麻薬を捌いた金の一部を市に収めることで、市や警察は陸奥港での密輸を黙認していた』
『ということは市や陸奥警察はそれを知っていたということか』
『陸奥市は財政難に陥っていた、市の破綻寸前でKINGからこの話を持ちかけられた そしてそれで得た金で市は街の再生をするつもりだったそうだ』
『なんてことだ・・・・』宗介は驚きを隠しきれなかった。
『この人物を知ってるか』と言うと佐渡は宗介の両親の写真をデスクに置いた。
宗介に緊張が走った。
『ああ、知っている、”999”からの不正な金の流れに気づいた職員が1人いた・・それが写真の男だ』
『それでどうした』
『その男は”999”と市の繋がりを突き止め告発しようとしたから、KINGがクスリを飲ませて病死のように見せて殺した』
ガン!
QUEENが自分が写っている窓に視線を送る。
誰かが窓の向こう側で叩いたような音がした。
楠木宗介は両手を窓に叩きつけ、下を向いていた。
鳥飼楓は腕を組み、真っ直ぐ前を向いたまま何も話すことはなかった。
『しかし市が街の再生をしようとした矢先に、あの地震が起こった 市はその復興に”999”の金を使った』QUEENは話を続ける。
『3年であそこまで復興できた理由はそれだったのか』楓がつぶやいた。
『街は復興したが、”999”の麻薬の密輸を黙認した結果、陸奥市にクスリが蔓延し犯罪が増えることになった』
『それでKINGは陸奥を破壊することにしたのか』佐渡が核心に迫った。
『”陸奥を破壊して新たな秩序を作る”・・・KINGはそう言っていた』
『”新たな秩序”・・』
『KINGはカルト的な思想がある・・”やつら”は独自の思想で秩序を築こうとしている』
『”やつら”って誰のことだ』
『KINGもその駒の1つに過ぎないのかもしれない・・・』
QUEENはそれ以上何も話すことはなかった。
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