第32話







M県警には大型の護送車とパトカー数台、白バイも数台配置されていた。




『いいか!、これよりQUEENの移送を開始する』野上がM県警前に整列している特殊部隊に向かって声を上げる。


『Y県の県境にY県警の特殊部隊と我々の特殊部隊”ジェネシス”が待機している、そこまでは時間的猶予がない為、M県警特殊部隊が移送する』佐渡が割って入り説明した。


『KINGはおそらくY県に入るまでの間にQUEENを襲う可能性があると思われるので、各自要警戒に当たるように!』



M県警特殊部隊と警官たちはそれぞれの配置につく準備に入った。



『ナイトイーグルとクロウ、ZACKのブラックカイトも護衛に付きますので』佐渡が野上に耳打ちする。


『それは助かる』野上は訝しげな顔で答えた。



M県警の正面口から防弾チョッキを着せられ、頭にはヘルメットを被ったQUEENが警官数名に囲まれながら姿を表した。


『KINGは襲って来ねぇよ』QUEENが吐き捨てるようにつぶやく。


『黙ってろ』野上が遮る。



QUEENが護送車に乗り込んだ事を確認すると野上と数名の警官も護送車に乗り込んだ。




そして護送車は出発した。








護送車と数台のパトカーは夜のM市内を駆け抜けていた。


その後方には少し距離を保った佐渡が乗る車も追尾している。



『ほらな、何も起こらないだろ?』QUEENは野上の方を向いて話しかける。


『いいから黙ってろ』


『お前らに動きがないってことはオレが喋っていないと言う証拠になってるんだ、KINGもそれを理解している』


野上はそれに答えることはなかった。


その時、運転席から隊員が呼びかけた。


『野上さん、前方に不審な車両が1台停車しています』


野上は前方に身を乗り出して確認する。


前方には確かに不自然に停車している1ボックスがあった。



『交わせるか?』


『はい』


野上はワイヤレスイヤホンで他の車にいる隊員に支持する。


『前方に不審車両あり、我々は交わして先を進むから後続で不審車両を検挙しろ』


《了解》


QUEENを乗せた護送車は不審車両を難なく交わそうと左へ車体をずらした。


そして不審車両の真横を通り過ぎようとした瞬間、不審車両のスライドドアが開いていることに気づき、そこには黒ずくめの集団がいることに気づいた。


そしてその集団は一斉に銃を構え、護送車目掛けて撃ち放った。



護送車のボディは強化素材で出来てるので中まで貫通することはなかったが、タイヤがやられたことにより車体は大きく旋回した。



『KINGか!』野上が叫ぶ。


『うそだろ・・?』QUEENは信じられないといった表情で戦況を見つめていた。



不審車両に乗っている黒ずくめの集団を掻い潜って奥から黒い迷彩服を身にまとい、黒のフルフェイスのマスクを被った人物が姿を表した。


QUEENは護送車の窓からそれを確認した時、驚きを隠しきれなかった。





『”スティンガー”だ・・・』


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