第30話






陸奥市内にあるホテルのスイートルームに楠木宗介はいた。


役所が休日だったので宗介は灰色のトレーナーに黒いジーパン姿といったラフなスタイルで訪ねていた。



『君が楠木宗介くん・・ナイトイーグルだね』


ロングコートを羽織った男が話しかけた。


『私は”ZACK”の佐渡健(さど たける)だ』


そしてその後ろでPC画面を覗き込んでいる茶色いライダースジャケトを羽織り、ジーンズ姿の女性が振り返り話しかけた。



『黄昏貴美子(たそがれ きみこ)、よろしく』


『あ・・この前の・・』宗介はクロウに叩きのめされた日の事を思い出していた。


『その節はどうも』貴美子は軽く会釈する。



『彼女のコードネームは”ブラックカイト”、そして佐渡長官がチームのトップに立つ人物だ』オフの日でもビジネススーツ姿で現れた鳥飼楓(とりがい かえで)が説明した。



『とりあえず”チーム”の話は後にしよう、今は”レベッカ”が先だ』佐渡が進行していった。



『”レベッカ・ウイルス”・・・・約20年前に中国の田舎村で発生し、猛威を奮ったウィルスよ』黄昏貴美子が説明に入った。


『聞いたことがないぞ』楓が口を挟む。


『それもそのはずよ、発生源は不明、中国政府があれやこれや手を尽くしたけど、沈静化させることが出来なかった・・・このままでは中心部まで広がる事を恐れた政府が最終的に下した決断が・・・』


『まさか・・村ごと消滅させた・・・?』と宗介。


『そのとおり、人知れず存在していた村だったから、そのまま歴史から消されたのよ』


『そんな事って・・本当にあるんですか・・?』


『ただ、ここからが信じがたい話なんだけど・・中国政府はそのウィルスのサンプルを採取していた、もしもの時に備えた最終兵器としてね・・』


『いつか戦争でも起こると考えていたのかもな?』佐渡が皮肉る。


『・・でも、どこに保管してたんです・・政府がそんな危険なものを持っているなんて世界中に知れたら・・』宗介は素朴な疑問を投げかける。


『政府は”レベッカ”の隠し場所として中国マフィアを選んだ』


『ある意味最善の隠し場所だな』楓が口を挟む。


『結局、政府は”レベッカ”を道徳的に持つべきではないと判断し、処分することにした』



『だが、中国マフィアはそれを処分していなかった・・』


『そして”KING”がそれを買い付けたってことですか・・』


『陸奥港に来ていた中国船がその証拠よ、あの船はおそらく中国マフィアの船だわ』





『”KING”の目的は・・・陸奥の破壊だ』楓はそう結論づけた。









◇M県警


QUEENの取り調べはこの日も夜まで続けられていた。



野上優作は休憩がてら屋上に上がってタバコをふかしていた。




【”KING”の狙いは街の破壊だ】


『わ!』野上は突然の声に驚きタバコを落としてしまった。


野上の目線の先には黒いレザースーツに身を纏いフードを被った宗介が立っていた。


『脅かすなよ!お前かよ』



【”KING”は陸奥を破壊するつもりだ】


『どういうことだ』


【陸奥港でやつらが持ち込んだのは”レベッカ”というウイルスだ、QUEENにはまだ話を聞く必要がある】


『ウイルス・・?』



【ああ、だからQUEENを死なせる訳にはいかない】


『ここじゃ、危険ってことだな』



宗介は無言でうなずいた。




『・・・・で、どうするんだ』




【QUEENを移送する】


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