第4話






楠木家には両親がいない




3年前、東北を大震災が襲う前、宗介がまだ大学生だった時に両親は突然、体調を崩した。


3姉妹と宗介は懸命な看護を行っていたが、両親は帰らぬ人となった。


ある日、病床で父、正(ただし)は弱った体を起こして宗介が一人の時に、おもむろに話し出した。


『宗介、もし私に何かがあったら、書斎の鍵の掛かった引き出しに手帳が入ってる・・それを見てくれ』


『え、何が書いてあるの?』


『私は間違っていた・・、まさか、あんな計画に加担しているとは思わなかった・・』


『何があったの!、父さん』


楠木正はそれ以上話さなかった。


そして翌日、息を引き取った・・・


宗介は葬儀のあと、父の書斎を整理していた。


そして、鍵の掛かった机の引き出しを発見した。


鍵をこじ開け、中を確認した。


中には1冊の革の手帳があった。


中を見る。


そこには父の字で殴り書きで


《”JACK” ”QUEEN” ”KING”》とだけ書かれていた。


その中で宗介は見覚えのある単語があった、”JACK(ジャック)”だ。


陸奥市に近年、現れた新手のギャング集団”999(スリーナイン)”のボスの名前と同じだった。


楠木正と妻、砂羽(さわ)はこの999(スリーナイン)のJACKに殺さたのか??


だとしたら、父が加担していた計画とはなんだったのか・・?


何かの陰謀に巻き込まれたのかもしれない・・・



そして楠木宗介は父・正と同じように陸奥市役所に就職することになる。





それはすべて両親の死の真相の為に。









とある夜




陸奥市の外れに、港埠頭に一隻の中型船が停泊していた。


船からスーツ姿の40代ぐらいの男性が降りてくる。


港側には見るからにチンピラ風な男数名に囲まれて黒い革ジャケットを羽織った男が立っていた。


船から降りてきた男は革ジャケットの男に前までたどり着くと手を合わせ『謝謝』と挨拶した。その男は中国人だった。


『硬い挨拶はナシだ、作業にかかろう』革ジャケットの男はそう言うと首を傾けて促した。


『ソウデスネ』


船から男たちがダンボール箱を大量に降ろしてくる。


そしてそのまま、港にあるコンテナの中へと積み込まれていた。


中国船から運び出されていたのは麻薬だった。



『次回ノ便デハ、例ノブツヲ持ッテコレマスヨ JACK(ジャック)』




『楽しみにしてるぞ』

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