第3話
楠木宗介は出勤前に必ず行くところがある。
区画整理の対象外となった広々とした空き地だ。
その空き地の左端の地面に取っ手のついた蓋のようなものがある。
宗介は手慣れた感じでその取っ手を引き上げると地下へと続く階段があった。
宗介はその階段を下りていく。
階段を降りたその場所は何もないコンクリートで覆われた空間だった。
宗介はその空間の一角にある長方形の机の方へと向かった。
机の正面にあるコルクボードには新聞記事の切り取りと数枚の人物写真、そして殴り書きされたメモが糸の線で繋がっていた。
その机の左側の壁にはフード付きの黒いレザータイプの上着と同じくレザータイプの黒いズボンが掛けられてあった。
そしてその横には透明で立て長のアクリルケースがありその中には弓と数本の矢が収まった矢筒が入れられていた。
宗介はアクリルケースから弓と矢筒を取り出すと空間の奥へと進んでいった。
ブレーカーを上げあかりを灯すと奥には無数の的が立てられている。
無数の的は天井近くまで高く上げられたものや地面に近くまで低く置かれたものまで様々な位置に配置されていた。
宗介は矢筒を肩にタスキ掛けし背中に収めると弓を構え、矢筒から矢を1本取り出した。
素早く弓に掛けると一瞬にして矢を放した。
すぐに2本目を取り出すとまた素早く放つ。
3本目、4本目と立て続けに矢を放った。
矢筒に入っていたすべての矢を放ち終えると宗介はようやく構えていた弓を下に降ろした。
そして徐に的まで歩いて行き、的に刺さった矢を回収していく。
そのすべての矢は的の中央を刺していた。
彼、楠木宗介こそM県陸奥市に現れた謎のヒーロー、『ナイトイーグル』である。
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