結界?追記



 3月の装いのご夫人をお見かけした、あの夏の日より1年半ほど月日を経ました頃。

冬の到来を思わせる、冷え込んだ夕暮れ時でございました。夕飯の買い物に向かう私の目前に、気になる歩みをなさる方がいらっしゃいました。夕食の献立で頭がいっぱいだった私は、さほど気にもせず、その方の後ろを歩いていたのでございます。


 その方は、歩道にありますガードレールと消火栓の間、ガードレールと歩道橋の階段の隙間、ガードレールと街路樹の隙間と、まるで猫が好んで通るような狭い場所を選んで前進しているではありませんか!

 気になります。うずうずいたします。

当然、私はその方との距離を詰めました。もはや、そう致しますのが私に与えられました使命でございます。

そうして、その方の横顔を拝見いたしますと、、


!!!!!!!!!!!!!!

私の脳内のシナプスが情報伝達物質を放出し、様々な記憶の中から導きだした結果は、、


ご夫人!!三月の装いのご夫人ではございませんか!

お久しゅうございます。お元気そうで何よりでございます!

相変わらずの奇行、安心いたしました!!


ご夫人は、以前にお会いした時よりも少しばかり厚着をしていらっしゃいました。その時期らしい、ごく一般的、庶民的な装いの為にすぐには同一人物である事に気がつかなかったのでございます。

街路樹の幹にお洋服を引っ掛けながら進むご夫人の姿に、なんとなくほっこりいたしました。


この界隈の柱におまじないをかけるお勤めを終えられ、新たなお勤めに取りかかられているのでございますね。

この界隈が平和なのはご夫人のおまじないのおかげかもしれません。


そんな風に思い至った夕暮れでございました。

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