第9章 人類滅亡の可否を背負わされるなんてまっぴらごめん
第130話
4月になって2回目の土曜日がやってきた。今日は会社の有志でお花見する日だ。場所は会社近くの少し大きめの公園。毎年花見の時期は家族連れで
実は俺は最初辞退した。そんな気分になれなかった。でも奥名先輩に強引に押し切られた。どうやら先輩は俺が
でもやはり俺の足は重かった。アパートを出る時点で予定より30分遅れてた。駅で電車1本見送った。座って行きたかったので途中で特急には乗り換えなかった。乗り換えれば15分くらい早いんだけどな。地下鉄も1本見送った。会場最寄り駅でため息をひとつついた。高架駅から地上への階段を1段降りるのに10秒かかった。
公園の入り口は駅からほど近い。たぶん地上に降りてから歩いて1分もかからない。でも連絡によれば新人のやつが確保した場所は公園の奥だそうだ。どうやらそこならスーパーが近くにあるので食いもんの調達が楽なんだとか。まあいいか。余計に歩かされる分、余計に食ってやる。俺の胃を甘く見るなよ。なんせあの神にも勝ったんだからな。「もう予算オーバーです」って泣きつかれても知らねえからな。覚悟しておけ。
公園の入り口が見えてきた。俺のよく知る人物がまるで待ち構えていたかのように立っている。腰に両手を当てて仁王立ちだ。もちろんその正体は奥名先輩だ。やべえ。もしかして先輩ずっとここで待ってたのか。そうと知っていたならもっと早くアパートを出るんだった。電車見送るんじゃなかった。座れなくても特急に乗り換えるんだった。
「遅い! 55分遅刻」
先輩の声。うわあ、かなり怒ってる。口調で分かる。
「すいません。寝坊しちゃって……(嘘)。でもアパート出てからは全速力で来たんですよ。だから許してくださいよ」
「嘘。見えてたわよ。駅から降りる階段。なんであんなにかかんの? 1段降りるごとにため息なんかつくの? 足怪我したわけじゃないでしょ?」
うへえ、全部お見通しかよ。
「ほんとに瀬納君どうしたの。病院に来てくれたときには元気だったじゃない。翌日からよ。会社で
先輩と並んで歩き出す。周りは桜。景色は最高。でも気分は晴れない。
「ええ。ほんとに大丈夫なんです。体はなんともないです。本当です」
「じゃあ精神的になんかあったってわけ? 絶対おかしい。あなた私をお昼に誘わなくなったでしょ。それまでは毎日のように誘いに来てたのに」
ああ、そういえばここんところ先輩をお昼に誘ってなかったっけ。というより俺昼飯ちゃんと食べてたっけ? たぶん無意識に食いには行ってたんだろうな。午後に腹が減ることもなかったし。
でも懐かしいな。ついこの前までなんだけどな。あのころは毎日のように先輩を誘いに行ったっけ。ことごとく断られたけどな。そんで俺の後ろにはいつも美砂ちゃんと久梨亜がいたっけ。でも彼女らはもういない……。
先輩が数歩前に出た。立ち止まるなりくるりと体をこちらに向けた。
「もしかして瀬納君……、私のこと嫌いになった?」
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