第124話
メフィストフェレスと黒猫ネロの
「回数は1万5625より下か」。答えはYes。
「回数は1万2812より下か」。答えはNo。
「回数は1万4218より下か」。答えはNo。
「回数は1万4921より下か」。答えはNo。
「回数は1万5273より下か」。答えはNo。
ここで気づいた。これは
最後の問答から求める値は1万5273より下でないと分かる。つまり1万5273以上。そして4つ前の問答から求める値は1万5625よりも小さい。つまり1万5624以下。よって次に問うべき値は両者の中間。
(15273+15624)÷2=15449 ※小数点以下四捨五入
これで求める値が1万5449より大きいか小さいかが分かれば、それが大小どちらであっても可能性の範囲は1万5273~1万5624の半分になる。
このようにターゲットを半分、また半分と絞っていくのだ。
「回数は1万5449より下か」。答えはNo。
「回数は1万5537より下か」。答えはYes。
「回数は1万5493より下か」。答えはNo。
「回数は1万5515より下か」。答えはYes。
「回数は1万5504より下か」。答えはYes。
「回数は1万5498より下か」。答えはYes。
「回数は1万5495より下か」。答えはNo。
「回数は1万5496より下か」。答えはNo。
「回数は1万5497より下か」。答えはNo。
ついに答えが出た。求める値は1万5497より下ではない。つまり1万5497以上。そして3つ前の問答から求める値は1万5498より下。つまり1万5497以下。
1万5497以上でかつ1万5497以下を満たす整数はひとつしかない。すなわち1万5497。これが答えだ!
って、1万5497回かよ。どれだけおんなじこと繰り返してんだよ!
「ほう、1万5497回か。なるほどなるほど」
メフィストフェレスはひとりで納得している。いったいなにが「なるほど」なんだか。
だが神は納得しなかった。
「なにが1万5497回じゃ。いくら繰り返そうが神に負けはあり得ぬ。わしが勝つまで何度でも繰り返してやるわ!」
神が叫んだ。頭上の神の光が再び輝きを増した。やばい。やばすぎる。もう俺に神のやつを止める手立てはない。このまま1万5498回目に突入してしまうのか。そして永遠にこれを繰り返すのか……。
ところがここでメフィストフェレスがいかにものんびりとした調子で話し始めたのだ。
「おやおや、天の神様ともあろうお方がこの数字の意味するところを理解していないとは」
この言葉に神の光の拡大が再び止まる。
「なんじゃと。どういう意味じゃ」
「だからですね、人間程度の存在が世界のループに気づいただけでも驚きではないですかい。我々神や悪魔が気づけなんだというに。しかもその気づいた時点がまたおもしろい。1万5497回目ですぜ。これはもうなにかの意思が働いたとしか思えませんな」
メフィストフェレスはハッハと笑った。これが神の怒りに油を
「それがどうした。その数字になにがあるというのじゃ!」
そこでメフィストフェレスは静かにそれを言ったのだ。
「なにがって、素数じゃないですかい」
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