第7章 激突! 英介 vs 神
第107話
雷光が走り、巨鳴が
「久梨亜、美砂ちゃん、まさか、これは……」
風雨はたちまち嵐と化した。久梨亜に支えられなければ立っていられない。真っ直ぐに顔を上げることすら難しい。風で顔が彼女の胸に押しつけられる。わざとじゃない。本当だ。
次から次へと湧く黒雲。いったいどれだけのパワーがあれを作り出しているのか。まさか、このまま世界は闇に覆われてしまうのか。
するとその時、ふたりが見つめていた一角から雲を貫き雨を吹き飛ばして天に向かって扇状に光がぱあっと射しだした。
光は扇をお辞儀させるかのように前へと向きを変えていく。そしてさらに下へと向きを変えると俺たちがいる一帯を明るく照らし出した。
ラッパのような音が天空から鳴り響いた。
「
美砂ちゃんの声が響いた。それは普段の彼女の声とは違っていた。エコーが掛かったかのように荘厳な、それでいて感情が感じられない平板な。
彼女は宙に浮いていた。背中からはあの天使の翼が。衣装もあの最初に
風はやんでいた。雨も降っていなかった。しかしそれは光の範囲だけ。光の及ばぬその外側では、猛烈な風と滝のような雨が猛り狂っていた。
やがて光の扇の
「ミサエルよ、よくやった。賭けはわしの勝ちじゃ」
天から荘厳な声が響き渡る。中央の人影が右手を高く差し上げるのが見える。
雲は湧き出すのをやめていた。ふたつの人影を
中央の人影は白かった。縮れた白く長い髪。同じく縮れた白く長いあごひげ。白い衣を身にまとっている。これが神様に違いない。
もうひとつの人影は黒かった。黒い帽子のようなものをかぶり、大きな
ふと久梨亜を見た。悪魔の姿になっていた。俺から少し離れたところでその黒い人影に向かってひざまずいている。そうか、これが悪魔メフィストフェレスなのか。
やがてそのふたりを乗せてひとかたまりの雲が動き出した。地上のほうへゆっくりと降りてくる。音はない。
ビルにして4、5階ぐらいの高さで雲は止まった。
悪魔メフィストフェレスと思われるひとりがフッと宙に浮いた。姿勢を変えることなく久梨亜のそばへとすべり降りる。そして地に降り立つや久梨亜のほうを
「ヴァルキュリヤよ、貴様なんということをしてくれたのか!」
右腕が振り下ろされた。黒いなにかが空気を切り裂いた。うなりと共に鋭い破裂音。顔を
「もっ、申しわけありません。メフィストフェレス様」
「わしは言うたはずじゃ。『神に“人類滅亡”への言いがかりをつけられてはならぬ』と!」
再び鞭がうなる。久梨亜の顔が苦痛に
「さらにわしは言うたはずじゃ。『やむを得ぬ場合は対象者の命を取っても構わん』と。それを貴様は情に流されおって。あのまま突っ込んでおれば賭けはこちらの勝ちであったものを!」
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