第56話
奥名先輩の
このデパートに来てからだけでこれでもう2問目だぞ。いや、3問目だったかな。まあいい。とにかく今はこの新たな「テスト」をさっくりクリアすることが重要だ。それも先輩に怪しまれることなしに。
そうと決まればさっさと考えるぞ。
まず“1”の利点だな。場所変えに同意すれば先輩から「彼女と待ち合わせしているんじゃないか」という誤解を解くことができる。これは大きい。
逆に欠点はなにか。久梨亜の忠告に背くってことだな。それにもし俺がいない間にふたりが戻ってきたら心配掛けるかも。でも心配だけだ。
そんでもって“2”の利点と欠点は“1”のまるっきり裏返し。久梨亜の忠告は守れるしふたりに心配掛けることもないけど、先輩の疑念は深まっちまう。場合によっちあ、確信に変わるかも。
あれ? だったらこれ“1”で良くね?
「どうしたの? 行くの? 行かないの?」
先輩の追及は続いてる。早く答えを言わないとそれだけで先輩の疑念は深まっちまう。もういいか。“1”の“場所を変えるのに同意する”でいいよな。
おっとちょっと待った。大事なこと検討するの忘れてた。“どちらの選択肢がより人類滅亡を招きかねないのか”ってことを。
“1”だとふたりに心配掛けることになるんだよな。そうしたら天の神様はどう思うだろう。「人間のくせに天使に心配かけるとは何事か!」って怒って人類滅亡を決断しちまうかもしれない。
えー、それじゃあ“1”ダメじゃん!
“2”はどうだ。“2”のほうがより人類滅亡を招きかねないのなら消去法で“1”を選べる。奥名先輩の誤解を解くことができる。
……って、どう考えても“2”が人類滅亡を招くとは思えないんですけど。
“1”なら人類滅亡。“2”なら最悪奥名先輩に嫌われて俺の人生滅亡……。
「うわあ、一体どうすりゃいいんだ」
俺は再び頭を抱え込んでしまった。“人類滅亡”と“人生滅亡”。たった1文字違いで大違い……、じゃなくてどちらを
「ちょっと瀬納君! いきなりどうしたの」
奥名先輩がびっくりしてる。そりゃそうだよな。たぶん先輩からしたら自分はたいした選択を迫っている気はしてないだろう。それなのに当の俺が大声を上げて頭を抱え込んでしまった。びっくりしないほうがどうかしてる。
まずい。非常にまずい。今回の選択肢を考えるときに思ったじゃねえか。“奥名先輩に怪しまれることなしに”って。このままじゃ俺、確実に先輩に怪しまれてしまう。
“俺が人類滅亡の可否を背負ってる”ってことが先輩に知られてしまう。もし知られたらどうなるんだろう。昔の“魔法少女もの”のアニメとか“スーパーヒーローもの”の特撮やアニメによくあったのが“正体を知られたら能力を失ってしまう”ってやつだな。俺も失ってしまうんだろうか。“俺が人類滅亡の可否を背負ってる”ってやつがなくなってしまうんだろうか。
えっ? だったらいっそここでばらしてしまったほうがいいんじゃないのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます