第46話
ついに俺にも運が
「じゃあ、早速作戦会議といこうじゃねえか」
久梨亜のこのひと声で、今回このファミレスを選んだ本来の目的がようやく始まった。もう飯なんかどうでもいい。
「明日の昼、英介はひとりであの女を昼飯に誘う。肝心のタイミングだが……、あたしがあらかじめ使い魔をあの女のまわりに
俺はただウンウンと
「私と久梨亜はどうするんですか? 姿が見えないようにするんですか?」
「いや、急にあたしらふたりの姿が消えたらおかしいだろ。まわりの連中の記憶を操作するのも面倒だ。幸いなことにあたしらふたりの机とあの女の机は離れてる。あたしらも使い魔からの報告を受けながら待機だね」
よしよし、早くも上手くいきそうな気がしてきた。
「で、俺が先輩を誘って……。それからどうすんだ?」
「誘いをOKしてくれたら英介と先輩は連れだって会社の外へ出る。食事場所は適当に決めてくれ。ふたりが出たらあたしと美砂も続いて外に出る。外に出ちまえば姿を消してもいいだろう。英介らの後方上空からじっくり見守るよ」
そりゃありがたい。常に見守ってくれてると思えば心強い。
「店に入ったら、後は?」
「あたしらは外で再び使い魔からの報告を受けながら待機。ふたりの後から店に入ってもいいけど、いくら姿を消してるからといっても人が大勢いる中で邪魔にならず音もたてずって難しいからな。後は英介の腕次第。まあ使い魔を通じてアドバイスぐらいはしてやってもいいかもな」
すごい。完璧だ。さすが
「ありがとう、久梨亜。なんだかもう勝ったような気がしてきた」
俺はもううれしくてたまらなかった。いよいよ変わるのだ。明日だ! 明日から俺は変わるのだ! 明日という日、それは俺の人生における最も輝かしい日となるだろう。
「気に入ってくれてうれしいよ。よし、明日の朝は景気づけにあたしが飯を作ってやろう」
久梨亜の言葉に一瞬で硬直する俺の体。救急車に乗せられたあの日の記憶が
「お申し出は本当に、誠にありがたいところではあるのですが、どうか今回それだけはなにとぞご勘弁を……」
「大丈夫だって。この日のためにあたしゃ美砂に料理を教わったんだ。前回の
久梨亜は自信ありげだ。
「そうか、美砂ちゃんから習ったのか。それなら大丈夫そうだな」
「だろ? 期待してくれ。美砂から教わった料理にあたしのオリジナルを加えてすごいのを作ってみせるさ」
ちょ! お前のオリジナルなんかいらねえから。
そしてその翌日、俺はひどい下痢で一日中トイレに
当然会社は休んだ。輝かしい日は来なかった。
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