第27話
さて「俺自身の力で奥名先輩を振り向かせたい」なんて
やるなら一歩ずつ確実に。まずは昼休みに先輩を昼飯に誘うとこから始めよう。
と、勢い込んで先輩のところへ「昼飯一緒に食べませんか」って言いに行ったんだけど……。
「ごめん瀬納君。私今それどころじゃないの」
って言われてあっさり撃沈。うん、確かに忙しそうだ。
奥名先輩は俺が
そしてただ綺麗なだけじゃなく“できる人”ってオーラがものすごい。もちろん実際に仕事もできる。俺なんかより
そんでもって必然的に“できる人”のところには仕事が集中する。俺なんかより遥にずっと。それなのに帰る時間は俺とそんなに変わらない。もちろん仕事はきっちりこなした上でだ。どれだけ優秀なんだよ。いや俺がボンクラすぎるのか。
というわけで俺の「奥名先輩を振り向かせたい大作戦」はいきなり一歩目からつまずくことになっちまった。
「仕方ないだろ。行こうぜ、英介」
久梨亜が俺の袖を引っ張る。俺は後ろ髪を引かれる思いで久梨亜と美砂ちゃんといっしょに先輩の席を離れる。
引っ張られていきながらも振り返って先輩のほうをチラチラ見る。先輩も俺のほうをチラチラ見てる。なんか怒ってるみたい。忙しいときに声かけたのは悪かったけど、怒んなくてもいいのにな。
うちの会社には社食はない。だから弁当か外に食べに行くってことになる。外に食べに行くっていっても近くに店もそんなにない。俺たちは会社裏手の小さな食堂に入った。俺がよく行くところだ。小さいとこだからメニューは魚定食に日替わり定食、それにうどんやそば程度。座席も少ないが幸い今日はひとつテーブルが空いてた。俺たちはそこへ腰をおろす。
メニューを手にする。さて、どれにしようか。
今、俺の前には4つの選択肢がある。
1.魚定食
2.日替わり定食
3.うどん
4.そば
どれを選ぶべきか? どう行動すべきなのか?
その瞬間、俺は再び頭を鈍器でぶん殴られたような衝撃を感じた。いや、だからこれまで頭を鈍器でぶん殴られた経験はないから以下略。
またか、またなのか。もうこれで今日3問目だぞ。
「うわあ、一体どうすりゃいいんだ」
俺は頭を抱えてテーブルに突っ伏した。まわりの客連中が何事かと俺のほうを見る。
横を見る。美砂ちゃんが心配そうに俺を見てる。今回はさすがに美砂ちゃんが無実だってのはいかにボンクラな俺にでもわかる。
「おい英介。もしかしてあんたまたこれが“あれ”だって言うんじゃないだろうな」
久梨亜が少し
「ああ。たぶんな」
「マジかよ」
どうする? さすがに財布の件やキューピッドに助けを求めるなんてのはそう
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