第9話

「じゃあ次は第2の質問。お前らは今日急に現れた。なのに奥名先輩はずっと前からお前らのことを知っていたかのような話しぶりだった。俺がまだ聞いてもいなかったお前らの地上での名前まで知っていた。あれはどういうことなんだ。いったいどうやったらあんなことにできるんだ。そいつを教えてもらおう。嫌だとは言わせないぞ。もちろん俺にもわかるように、だ」


 なるだけ平静をよそおった。まあ実のところを明かすと、第1の質問についてのやり取りから、だいたいのことは予想がついてはいたんだがな。


 ふたりを交互に見た。でも割合は久梨亜が6、美砂ちゃんが4だ。第1の質問に主に答えたのは久梨亜だったからな。だからこの質問にも答えるのはこいつだろうって思ってた。


「英介にもわかるように、か。そいつはちと難しいね」


 久梨亜のやつがニヤニヤしながら言いやがった。なんだよその顔。てめえそれ本気で言ってやがんのか。


「なんだその言いぐさ! 難しいわけあるかよ! 奥名先輩の記憶をいじってお前らの名前を植え付けただけでなく、存在を不審がらせないようにしたってことなんじゃねえのか!」

「なんだ分かってんじゃねえか。その通り。ようやく頭が働くようになってきたみたいだね。ずいぶん時間はかかったようだけど」


 久梨亜が上機嫌そうに笑う。こいつ俺のことをからかってやがる。


「じゃあ続いて第3の質問。これが一番重要。笑ってないでしっかり答えてもらうぞ!」


 俺は精一杯ドスを効かせて声を低めにそして強めに発してみせた。気分はまるでTVドラマかなんかの凄腕すごうで取調官。お遊びはここまでだ。


 しかし俺の付け焼き刃の迫力は本職の久梨亜に簡単にかわされる。なんせこいつは悪魔だ。人をおどすのなんか数え切れないほどやってきただろうからな。


「第3の質問? なんだっけ?」

「とぼけるな! 『どうして俺が人類滅亡の可否を背負わなくっちゃならないのか』だ!」


 思わずテーブルをたたいて立ち上がっていた。演技じゃなかった。本当にちょっとむかついてた。


 しかし久梨亜のやつは動じるようなそぶりをさっぱり見せやがらない。


「悪い悪い。でもこの質問に答えるのは美砂のほうがいいだろう。実を言うとそれが決まったときにあたしはその場にいなかったんでね」


 またすっとぼけやがって。俺は久梨亜をにらみつけた。悪魔ってやつは昔から嘘つきと相場が決まってる。そしてこいつは悪魔。ならこいつも嘘つきに違いない。完璧な三段論法だ。


 ところがそのときガタッという音がして美砂ちゃんが立ち上がった。


「はい、私はそれを少し離れたところで見て聞いていました。ですから私から説明します」


 どうやら久梨亜の言ってることは本当らしい。俺はしぶしぶまた席に座った。


 美砂ちゃんはゆっくりと語り出した。すぐには信じられなかった。天の神様、悪魔メフィストフェレス、それらの間でなにがあったのか。そして俺をつらぬいたあの光の矢の正体。そしてなぜこの俺が人類滅亡の可否を背負わされる存在になっちまったのか。それらがすべて語られた。以下に彼女の言葉をそのまま紹介するとしよう。

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