第14話 おっさん絶体絶命

転移で飛ばされた先で俺は周囲を見渡す。


「あとで合流すると勢いでいってみたものの・・・・・これは・・・・どーすっかなぁ・・・」


 ここは何階でどこなのかもわからない 天井は高く四方は壁でふさがれておりどうやら遺跡の建物と同じ材質だと思われる、広さはそこそこ広い体育館ほどだ。

問題は


「どこかの室内だとは思うが窓どころか・・・・出入り口もねぇんだけど?」


と誰かに向かって行ってみるがとうぜん返事はない。


 壁に秘密があるかと壁伝いに歩き確認するがそれらしきものはない、餓死するまで放置ってことか? と焦っているとカタカタと聞き覚えのある音とともにあの腐敗臭がただよってくる


「まじか!密閉空間でお前らかよ!?」


と振り返ると床のあちこちで骨の手が地面からはい出てきていた。

モグラたたきかよ!と愚痴りながらはい出てきたボーンナイトの頭部を次々破壊していくが、この部屋中に点在して湧いてくるボーンナイトに次第に対応できなくなってくる。


 次第に全身が穴から出きったボーンナイトが1体また1体とカタカタしながらこちらに向かってる。

もはや数十体がこちらに向かってくる、中にはボロボロだが剣や槍、盾をもってる個体までいるようだ。


 しかたないとこの部屋の角を背に待ち構えることにした、空気がいつまでもつかもわからんしなるべく早く全滅させないと!と床を見ると当然あなからはい出た無数の虫も健在で現在進行形でどんどん湧いてきているようだ。

 数十体のボーンナイトそれらが出てきた穴からどんどん湧いてくる虫、そしてその穴の数だけ広がる腐敗臭、ニーニャとリオンがいたら即気絶してただろうなと思うが、こりゃだめかなと妻と子供の顔が頭をよぎる。


伸縮タイプのショートスピア、スピアとはいえ、全長120㎝はある 壁をつかい後方と両サイドからの攻撃を食らうことはなくなったが槍が長すぎてこちらも突きしかつかえない状態 とりあえず力の限りボーンナイトの頭部を突きまくった。

 倒しても倒しても減っているようには思えずあたりを見渡すとどうやら新たに沸いては来ていないようだったので今この場にいる奴らをなんとかしたら助かると思いさらにつく。


 しかし 槍を突いて引いてまた突く しかも1体ずつしかたおせないと次第に物量に押されてくる。

多少なりとも今までダンジョンにこもっていた疲労も溜まっていたのであろう徐々に動きも遅れてくる。

 じり貧だな と焦っていると、盾をもった1体に槍の軌道をそらされてしまった。

いつものなら踏ん張れるが疲労により足が流れ体制を大きく崩し片膝をついてしまった。


 しまった!とすぐに立ち上がろうとしたとき背後から剣を持った1体に切りかかられ転がるように交わしたが、かわし切れず少し背中を切られてしまった。


 片膝と片手を床につきなんとか起き上がろうとするが痛みと疲労でなかなか起き上がれないでいると

床についた手から針に刺されたような痛みが急に襲ってきた


「っ!!?」


 と声にならない痛みのおかげで体を起こすことはできたが手を見ると穴からでてきたムカデみたいな虫がかみついていた。

 振りほどきながら


「っぅ・・・・ご丁寧に毒持ちかよ」


 と一人愚痴る、次第に体中の関節が痛み出し目まいと吐き気をも襲ってきた。

俺の毒耐性はLV5だがそれでもこの毒は強いし周りもはないと思った。


 ますます時間に迫られ焦るが体が思うように動かず少しずつ攻撃を食らい始める。

致命傷は回避しているがこのままだとそれもいつまでもつかわからない。


 帰るまで死ねない! 死なないために多少無茶な準備もしてきたんだ! こんなところで絶対死ねない!


帰りたい!帰りたい!帰りたい!・・・・頭の中はそれだけになった。

このままじゃ帰れない!と目を見開き歯を食いしばりボーンナイトの群れに突っ込む。


突っ込んだ先で力任せに槍を横なぎに振り払うと近くに寄ってきた4~5体のボーンナイトの頭部を吹っ飛ばす。

毒が回りきる前に倒さないと生きて!・・・・・帰れない!


 気持ちとは裏腹に伸縮タイプの槍の弱点つなぎ目に亀裂が入ると俺は槍をめいいっぱいの力で投擲する。

 射線上にいた1体の頭部を破壊し体ごと周りにいたボーンナイトを数体巻き込み吹き飛ばす。


 巻き込まれた1体が剣を手放すとそれが床に落ちる前にキャッチし剣を振るう。

普通は魔物の装備もダンジョン内だと一緒に消えるようだが空中でキャッチしたせいか消えずに使えた。


そして俺は剣を振るい槍が消える前に拾い投げつけさらに剣を拾い2刀流で剣を振り回す。

腕や足をすこしずつ切り付けられても止まらず

頭部以外を破壊されたボーンナイトが足にしがみつき俺の動きを止めようとしたり、かみついたり体に絡みついてくるのもいたが、そのままひきづったり、体ごと回転して振り落としたりとお構いなしに剣を振るう。

光の属性火のスキルも魔力が続く限り使いまくった。


どれだけ時間がたったかわからない、体の感覚ももはや痛みも感じなくなってきた


ただ


早く早く早く 倒すんだ! 


はやくはやくはやく かえるんだ かえるんだ


「おれは! 帰るんだ!!!」


と叫び最後の力を振り絞り剣を振るったが空振りしてしまい体制を崩して床に倒れてしまった。

毒のせいなのか怪我のせいなのか魔力枯渇のせいなのか・・・・身動きがまったくとれなくなった。

もう駄目だと諦め妻と子供に帰れなくてごめんと心から謝罪し仰向けになり目をつむり覚悟を決めた。




一向にボーンナイトが襲ってこない 少し目をあけてあたりを見てみると大量に床にいた虫が一匹もいなくなっており、気づけば腐敗臭もしなくなっていた。


 あたりには大量の魔石とドロップ品らしきものが落ちている以外は、はかなり荒れていたが俺が転移された時と同じ俺しかいなくなっていた。


「た・・・・たおしたのか・・・・」


とほっとすると急に体中が痛み出した。 

 身動きが取れないので手探りで回復薬などが入っているバックを探したがどうやら周囲にはなさそうだ、ベルトにいくつかつけていたものすら割れてなくなっている。


倒したのにこれで死ぬのかと自然と涙がでてきた 諦めきれずズボンのポケットに手を入れたら何かが入っていた。


回復薬をつくる材料の薬草と毒消し薬の材料の毒消し草、麻痺中和剤っぽかった。

どれも俺の血でドロドロになっていたが間違いなかった。


俺は毒消し草を口に入れ汁が出るまで租借した。

味は自分の血の味しかしなかったが血の臭いと味で吐きそうになり必死に耐えて無理やり飲み込んだ。

効いているかいないかわからなかったがすぐに薬草も口に入れ無理やり飲み込んだ。


どっちも効いたかわからないが俺はそこで意識を失った。

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