45話 王都への道中 2日目~湖の町まで

夜間はリーダーとサブさんが交代で夜警に当たる。

 朝まで警護するんだからタフな人たちだ。


 深夜に目が覚めたので夜警にあたっていたリーダーに話しかけた。


「大変ですね」


 木にもたれながら警戒しているリーダーに声をかけた。


「どした? シタラちゃんの寝息で眠れなくなっちまったか? ガハハ」

「な、なんてことを。目がさめちゃっただけですよ」


 下品なおっさんだ。


「そか。っま、この辺はかなり安全なんだ。

 王都から村までの道は、ほとんど平野だからな。気楽なもんよ」

「でも馬車の運転から夜警までこなすなんてすごいですよ」

「へへ、そうか~? まぁその分、街で酒でも飲むさ。悪い仕事じゃねぇ」

「なるほど、王都はお酒色々ありそうですねぇ~」

「まぁ種類はあるな。けどなぁ」

「ほう?」

「やっぱ酒は、村のやつが一番うまいぜ! へへへ」

「え?そうなんですか??」


 親バカならぬ、村バカ発言かと思ったが違うらしい。


「高い酒はわかんね~けどよ~、村のエールが一番美味い」

「僕もそう思うね」


 サブさんが物陰から現れた。


「あ、サブさん」

「お疲れ様。リーダーそろそろ交代だ」

「おう」

「サブさんも村のお酒のほうがおいしいと思うんですか?」

「お酒もそうだけど、食べ物も村のほうが美味い」


 昔ディーンさんにも同じような話を聞いたな。


「なんかイメージだと、王都のほうが色々食べてそうですけどねぇ」

「そこは間違っちゃいね~よ」

「そうだね」

「え?」

「王都は各地からの食材が入ってくる。だから食材は豊富だし、ほとんどの材料が手に入る。

 だが、一般に流通している料理は美味しくはないのさ」

「エールにしたって、酒場で飲んだら碌な酒はでねぇさ」

「たしかに、リーダーも王都ではエール以外をよく飲んでますね」

「ふ~む、一流食材は特権階級にしか行き渡らないのかな~」


 逆に王都での食事がどれぐらい微妙か、楽しみになってきた。

 これまでは正直美味過ぎたからね。


「さって、寝るか」

「そうですね、僕も」

「ごゆっくり、次は出発だからね」


――――


 二日目、スタートしてすぐ川を越えた。なかなかボロい橋だ。


「ここを西に進むと酪農村だ」

「へ~」


 酪農村へはいつか行くのかなと思って、村のある方向を眺めた。

 実は思いがけない理由で行くのだけれど。


 二日目は一日目のデジャブじゃないかと思うぐらい同じような行程だった。

 おそらく南下してるんだとは思うんだが、左手にはずっと山が広がっている。


 設楽さんは特製枕のおかげか、昨日ほど死に向かってはいない。

 枕を大事そうに抱きしめている。


 リーダーの会話は下ネタがメインになってきた。

 げ、下品なリーダーだ。でかい声で。


 お昼前にピコに餌をあげた。


「結構、でかくなってきたな」

「そうですね、もう飛べますよ」


 天高く飛べるわけではない、羽ばたいて浮くぐらいだ。


「そっか。そろそろ狩りでもさせたほうが良いかもな」

「狩りか。どうやるんですか?」

「し~らね」

「し、しらないんですか?」

「ストライクバード狩りなんて、金持ちの遊びだからな」

「そ、そっか」

「まぁ、ホッグ程度なら倒すぞ」


 実際食べたことしかないんだけど、ホッグも結構大きい。


「ほ、ホッグですか? あの?」

「アカイちゃんよ、そいつの巣どこにあった?」

「崖ですね」

「そ。それも岩の崖だ。そこを掘れるんだぜ。嘴がすげぇ硬いんだ。

 そもそも飛天鳥ってのはよ、上空高く飛んで、獲物に突っ込むんだよ。

 今はまだ可愛いもんだけどよ、成体になればとんでもないんだぜ」

「へ~」

「ま~街にでればわかるやついるかもな~」


 王都の期待が膨らみ過ぎて困っちまうぜ!

 ピコのことも知れるといいな。


――――


 二日目の夜つまり、二回目の野宿が終わり、三日目へ。


「今日で野宿も終わりじゃの」

「へへ、テントで寝てるんだからいいじゃね~か」

「ふん、はやくベッドで寝たいわい」


 今日は湖の町までつく。

 町って言うからには規模が大きいはずだ。気持ちは逸るぜ!


 今日はサブさんと一緒に前に座った。


「ふふ、楽しそうだね」

「いや~湖の町にワクワクですね」

「今日はいつもより早く着く予定だよ。宿をとらないといけないからね」

「お、それはありがたい」

「町からは道も整備されているし、今日が峠さ」


 正直体に疲労が溜まっているのを感じる。馬車はかなり揺れるからな。

 設楽さんじゃなくても疲れるのは当然だ。


「どんな町なんですか?」

「湖畔の町ウィンダーブル、淡水系の生物がたくさん捕れる。

 水辺の風景は非常に美しく、運がいいと夕日とドゥール火山が、一緒に見えるんだよ」

「ほ~おしゃれなとこですね」

「観光地としても盛況でね、景色はいいし、料理もなかなか」

「ほほぅ~」

「昼すぎれば、湖も見えてくるさ」


――――


 昼休憩は少し豪勢に過ごした。

 町で補給が可能なので、ヨドさんからの食糧をすべて使った。


 設楽さんもだいぶ馬車慣れしてきた。

 本人曰く、「初めが一番揺れた」とのことだ。


 昼食休憩後、一時間ぐらい走ると湖が見えた。

 湖は非常にデカかった。


 まぁ、琵琶湖とか山中湖とかしか知らないんだけど、

 同じぐらいの壮大さを感じた。


 更に二時間ぐらい走ると町が見えてきた。

 さすが町だ、村とは規模が違う。

 村の五倍以上の規模はあるだろうか。


「湖の町は、もともと北部の村だけだったんですよ」


 荷台の中ではしゃいでる俺に、ディーンさんは話しかけてくれた。

 村長が寡黙なんで、あんまり喋ってくれないが、ディーンさんは結構おしゃべりだからな。


「ほうほう」

「村の周りは湿地帯だったのでドレークが捕れるし、湖で貝や魚を捕って暮らしていたんです。

 それがここ二十年ぐらいで、農耕を始め、近くの村と交易をすることでどんどん拡大しているんです」

「そりゃ、すごいですね」

「近頃では王都の裕福な層に、保養として大人気だそうですよ」

「保養ですか」

「王都はゴミゴミしていますからね。湖沿いの宿舎はこの時期大人気ですよ」


 都会の喧騒を離れて、湖のペンションへ。

 軽井沢っぽいな~、行ったことないけど。

 関西だと……どこだろう。


「いや~湖楽しみだなぁ~」

「ふふふ、まぁ私達は安宿ですけどね。あんまり贅沢できませんので」

「――今回はしてもいいがな」


 村長の珍しいカットイン。


「まぁ、珍しい」

「……ふん」

「今回は余裕ありますからねぇ、皆さんのおかげで」

「宿は普通でいいが、飯ぐらいは贅沢しても構わんだろう」

「確かに、湖の町のご飯って気になってたんですよねぇ」


 設楽さんも頷いてる。


「それじゃぁ夜は人気の店にでも行きましょうか」


 三日目夕刻、湖の町に着いた。

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