32話 村長のそんな馬鹿な!

山から帰ると夜だった。

 出発がお昼前だったからね。

 卵はリーダーに預けた。


「へへへ、明日が楽しみだぜ」

「悪い顔してますよ、リーダー」

「へん」


 ちなみに先生はかなり疲れていた。

 あんなにハイテンションだったからそりゃそうだ。

 ハンターのみんなと別れて家に帰りぐっすり眠った。


 お昼前に村長のところへ向かう。


 ちなみにピコちゃんは、お留守番させるにもいかず一緒に。

 昨日フッチーさんがちいさい革のバッグをくれた。

 フッチーさんお手製の救急用のバッグらしい。

 あんな大きな図体から、こんな小さいかわいいバッグ。

 ギャップ萌えだ。


 バッグの中を、ピコ用にカスタマイズ。

 まだ小さいので、シルバーニングファミリーみたいだ。うーむ可愛い。

 成長スピードはわからないけど、大切に育てよう。


 村長宅の近くでは、ハンター達全員集合していた。

 ーー全員?


「え~っと、多いですね」

「へへへ、みんな話に混ざりたいみたいでな」

「村長驚いちゃいますよ」

「どうせ驚くんだから一緒だ」


 ハンター十人俺たち三人、合計十三人全員で村長宅へ。

 ディーンさんはたいそう驚いていたが、応接間に通してもらった。

 そして、今回のドッキリターゲットが登場だ!



「なんなんじゃこんなにたくさんで」


俺たち三人とリーダーは椅子に座り、他のみんなは立っている。


「へへへ、約束通り報告に参りましたぜ」


 全員ニヤニヤしてる。うっとおしいだろうな。


「ほらよ」


 言葉は乱雑だが、扱いは丁寧に袋の入った籠を置いた。


「……」


 重量感のある袋だ。何せ卵二十三個入ってるんだから。

 村長は動揺している。

 ありえない、と思っているのだろうか。


「開けろよ」

「あ、あぁ」


 ゴクリ、と聞こえた気がする。

 ガサゴソ


「ば、馬鹿な……」


 見た目と予想通りの量、事実としては信じられない量の卵が現れた。

 十三人の二十六個の瞳は村長のリアクションに注目してる。

 あれ? おかしいな、固まってる。


「二十三個だぜ」

「二十三。……王都にいくぞ」

「へ?」

「今すぐだ」

「い、いやまだ時期が」

「うるさい! 行くんじゃ!」

「だ、大丈夫だよ、孵化してもちゃんと世話できるし」


 村長が壊れた。

 リーダーはあたふたしてるが、他のメンツはゲラゲラ笑ったり、クスクス笑ってる。


「ふうぅ!ふうぅ!」

「ま、まぁワニが終わってからにしよーぜ」

「……そうじゃな」


 そういえばワニ狩りがあるんだったな。

 ワニってどうやって捕まえるんだろう。網とかかな。


 村長は落ち着きを取り戻したが、顔は赤かった。

 すかさずサブさんが問いかける。


「それでは、村長」

「……なんじゃ」

「彼らを王都へ同行させてもよろしいですか」

「しょうがないじゃろ!」

「は~、良かった~」


 俺たちは安堵する。

 これで当面の目標はクリアだ!

 王都へ行き、魔法インクを買う。王都へ行けば成長に繋がる何かが見つかるかもしれないし。


「では、私たちの取り分は、約束通り村に納めますね」

「あ、坊主」

「はい?」

「あ~俺たちも相談したんだけどよ!

 俺たちも村に納めようかって話になったんだ」

「そうなんですか?」

「ま……取り過ぎだしな。村の発展にこーけーしようってことでな!」


 リーダーの発言を受け、ハンターたちがやれやれとリアクションする。


「貢献ね」

「使い慣れない言葉使うから」

「ぶはは」

「う、うるせぇ!」


 リーダーはハンターとしては超優秀だと思う。

 だけどイジられキャラでもある。

 こういう人がトップのチームはいいよなぁと思うよ。

 理想の上司に近いんじゃないかとも思う。

 ま、恥ずかしいから言わないけどさ。


 結局二十三個中十個は村の財源に。

 十個はハンターサイドの財源に。

 三個は俺たちのお小遣いになった。

 ラビットの革もあるし、かなり贅沢できそうだ!

 魔法インクの他にも、欲しいものを考えないと。


 王都へ行くことも決まったので、今後の予定を聞いてみた。

 王都に行くのは十八日後。

 それまでにあるイベントとしては、ワニ狩りと全体会議らしい。   

 どちらも準備は不要なので、参加だけすれば良いとのことだ。


――――


 話し合いが終わったので、村長宅を後にし、ハンターたちと別れた。

 ハンター達は、これからワニ狩りの準備で忙しいとのことだ。


 リーダー曰く「懐に余裕あるからな、念入りに準備するわ~」だってさ。


 帰りにヨドさんのところに寄った。


「ラビットの燻製、明日にはできるよ」

「ありがとうございます! 僕も相談したいことがあるんで、明日の昼にでも来ますね」

「ほほ、なんじゃ相談ってのは」

「それは~、明日のお楽しみですよ」


 そう、ストライクバードの卵を捕獲する際に副産物としてゲットした”アレ”の相談をしたいんだよねぇ~。 

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