33話 至極のメニュー、その名も佛跳牆!

さて、ちょっと落ち着いたな。

 ストライクバードの一件で当面の財源は確保できた。


 ワニは七日後、王都前の全体会議は十四日後 王都は十七日後だ。

 ワニ狩りの際に『治癒』はお願いすると思うと言ってた。


 王都前の全体会議は、特に必要な物品がある場合、メモに書いて依頼する必要がある。

 俺たちは王都に行くのでその必要もない。


 そういえば今後、ハンター組合と合同で狩りに行く話になった。

 といっても、王都から帰ってきてから。

 ワニの準備で忙しいし王都前に準備もあるらしい。


 てことで時間が結構あるんだよな~。

 時間とお金に余裕があるって素晴らしい。

 設楽ちゃんに言ったら「目的を忘れてるの?」って言われそうだけど。


 本日はストライクバードの一件が片付いたので休みにした。

 設楽さんは部屋で引きこもってる。

 先生は走ってくると言ってどこかに行った。

 俺は村人とコミュニケーションだな。

 例のブツを持ち、ストライクバードのピコを専用バッグに入れて出かけた。


 お、アイシャさんだ、世間話してる。

 こーゆーのはどの世界でも変わらんな。


「こんにちは~」

「あら~アカイ君、ほら、この子が例の子だよ」

「ああぁ! あんたが西から来た子かい?」

「はい、アカイと申します」

「メグよ、若いわね~」

「いえいえ、メグさんもお若いですよ」

「んまぁ、お上手ね」

「「あはははは」」


 女子トークは空気に乗り相槌が基本だ。

 俺の得意分野は、年上の女性だぜ。


「今日は山行くんかい?」

「いえ、今日はお休みなんですよ、村でもまわろうかと思って」

「そうかいそうかい」

「そういやラビットは捕れてるのかい?」

「まぁ、そこそこですね。最近は別のことしてたんで」

「へ、へぇ~そうかい」


 ふむ、ウサギさんにご執心だな。


「はは、またお持ちしますよ」

「本当かい!?」

「え、ええ」

「よ、良かったらウチにも」


 う、ウサギそんなに気に入ったのか。


「あぁ、だったらヨドさん特性の燻製をお持ちしますよ。今日取りに行くんで」

「「いいのかい!」」

「え、ええ」


 アイシャ&メグはパワフルである。

 大阪のおば……もとい、大阪の初老の女性に通じるものがある。


「そういや、あんたの家はパンとかどうしてるんだい?」

「どうって言うと」

「パンとか野菜とかだよ、肉ばっか食べてるんじゃないだろう?」

「野菜は山で採れた山菜とか食べてますけど、パンはあれ?

 ハンターの人にもらったり、ヨドさんにもらったりしてばっかりだな。

 パン屋ってあるんですか?」


「ぶ」「「ははははは」」

「こんな村にパン屋なんてあるわけないだろ」

「そうさね~、自分で作るんだよ」

「肉のお礼にパン持っていこうかね!」

「そうね」

「おぉ、それはありがたい」


 晩御飯にパンが食べれる。やったぜ。


「それじゃぁ、夕方に燻製肉持ってきますよ」

「こっちも準備しとくわね!」


 ニッコニコなおばちゃんたちと別れて村の中心に向かった。

 うむ、村人力が上がっているな。



 お次はヨドさんのところに向かった。

 肉の受け取りがメインだが、ついでに聞きたいことがあったからだ。


「こんにちは」

「おぉ、坊。今日は一人か?」

「今日はお休みなんで、一人ブラブラしてるんですよ」

「ふぉっふぉ、まぁお入り」

「お邪魔しまーす」


 まずは新しい仲間の紹介だな。


「そういえば、ストライクバードを飼うことになりました」

「――ほ?」

「ほれ、出ておいで」


 ピコ専用バッグから、ピコを出してあげた。


「ピィ!」

「こりゃ珍しい」

「卵捕りに行ったら、成り行きで懐かれちゃいました」


 まぁ、俺の不注意だけどね。


「ほほほ、カワイイの。ボアの肉でもやろうかね」

「こいつ、肉食ですもんね」


 食べ物は、肉や虫とのことだ。

 小さく引き裂いた肉を美味そうに食ってる。結構な大食漢である。


「聞いたよ、大量の卵をとってきたらしいね」

「二十三個ですね」

「ははは、ディーンが驚いてたよ」

「とんでもない量だって、ハンターの人達も言ってました」

「ディーンが驚いてたのは、量より、村長の動揺の様だとさ」

「あ~、今すぐ王都まで行くぞ!って言い出した時はビックリしました」

「ほほぅ、そりゃ見たかったな」


 確かに村長のイメージじゃないからな。

 でも、あ~ゆう一面を見ると親近感がわくんだよな~。


「まぁ、王都まで同行できるようになってホッとしましたよ」

「そうさな、若いうちに王都は行ってみたほうがいい、刺激になる」

「そっか、ヨドさんも王都で料理修行したんですもんね」

「はん、昔の話さね」


 さて、そろそろ本題に入ろうかな。


「あ~それで二つ聞きたいことがあって」

「一つ目はこれです」


 袋からアレを取り出した。


「む! こりゃなんじゃ?」


 白くてゼリー状の繊維質っぽいもの。半分に割れた皿のような形状である。


「ヨドさんも知らないですか」

「そういわれると、当てたくなるの。ふむ、魚の一部か? むむ、これは」


 ヨドさんは刺さっていた毛を指先でつまみ上げた。


「鳥の羽かい?」

「そうですね。これはストライクバードの巣です」

「ほお~~ぉ面妖な」

「僕の故郷では似たようなの食べてるんですよ」

「食べる!?」

「恐らくですけどね」


 先生は、卵を捕るついでにストライクバードの巣を捕ってきた。

 それを見て設楽さんが気づいた。


「ツバメの巣っぽわね」


 それを聞いた先生は、捕れる範囲で捕ってきた。本当なら高級食材だしね。

 ちなみにハンターメンバーは誰一人、巣に関しての知識は無かった。


「いらんいらん、欲しいなら全部持ってけ」


 ってことで全部もらった。

 ちなみに日本のツバメの巣は、泥とか枝が混じっているので食べれない。

 食用のツバメの巣ってのは、ツバメの唾液で巣を作ってるから食べれるらしい。

 と、設楽さんが言ってた。なんでも知ってるなあの子は。


「ヨドさんが知ってるなら調理してもらおうと思ったんですけどね~」

「ふ~む、ちなみにどうやって食べてるんじゃ?」


 そういや、ツバメの巣とか食ったことないな。

 たしかスープだな。


「スープの具ですね、優しいスープに入ってましたね」


 多分――


「ふむ、よし坊、スープを作ってやろう。ついでに飯でも食ってきな」

「お、悪いですね~♪」

「この年になって新しい食材とは胸が躍るわい」


 ヨドさんは立ち上がり、カマドに火をつけた。


「ちょっと待っておれ」


 テキパキした動きで、スープの準備をしてる。

 俺はピコにご飯を与えながら待ってる。


「こいつは煮たほうがええのかのぉ?」

「あんまり煮たら溶けちゃいそうですよね」

「それもそうか、ふむ」


 ばあちゃん、意を決してちぎって巣を食べた。


「ば、ばあちゃん!」

「モグモグ、ふむちょっと甘いの」

「へ、へぇ、じゃあ俺も」


 たしかに甘い。コリコリしてるな。


「塩は少な目で調整かのぉ、ベリーは強すぎるしの」


 後はプロに任せよう、俺は座って待った。

 五分ほど経過し完成したみたいだ。


「出来たぞい」

「う~むいい匂い、さっそく食べましょ」


 緊張の一瞬。二人はツバメならぬストライクバードの巣のスープを味わう。


「「ほぉ~~」」


 お、美味しい。


「こりゃ~コリコリして美味いのぉ」

「ふぁ~、スープを吸収して、巣がうんまいですね~」

「ふ~~む、独特な材料じゃ。少々バーム草に似てるかの」


 ずーずーずぅーー。

 昔、漫画でこんなスープがあったなぁ、

 ふぁんちょーちぇん? ふぁっちゅーちゃん? なんだっけ。

 坊主が飛び出すスープ。


「は~美味しかった」

「こりゃぁすごいのぉ」

「ピィ!」


 はは、ピコの巣はとんでもなく美味かったぞ。

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