22話 ハンターとの邂逅
……なんでバレた。泳がされてたのか? いや、これまでバレた形跡は無かった。
ハッタリか? いやこっち見てるしな。
クソ、めんどくせーなぁ。
――――――
ザザッ、木の裏から男が現れた。
身長は先生と同じぐらいある、百八十無いぐらいだろうか。
黒髪をボサボサにして、無精ヒゲを生やしたおっさんだ、
見た目は四十代後半なんだが、たたずまいがカッコイイ。
引き締まった肉体に、たれ目なのに鋭い眼光。
そんな男が、両手を挙げて降参のポーズで近づいてくる。
「待て待て、悪気はなかったんだ」
「誰だおまえ!」
「シマーっていうハンターさ。な、ヨドさん」
ヨドさんに助けてくれって感じでニヤニヤする男。
ヨドさんは呆れ顔で溜息を一つ。
「なにしとんじゃ、お前」
「いや~、ホールラビット捕まえたって聞いたからさ、へへへ」
「やり方盗みにきたんか?」
「いや~、どんなやつらなのかさ。気になってね」
シマーという男はニヤニヤしながら更に近づいてきた。
「それはそうとなんでわかったんだ?」
「シマー! まずは詫びが先じゃろうが」
「あ、あぁ。スマンスマン!」
両手を合わせて頭を下げる。下げてるんだけど、な~んか軽いんだよなぁこの人。
「こいつはシマーじゃ。ハンターのトップをやっとる。腕はいいがちょっと軽いやつなんじゃ」
「すまんすまん、へへへ」
先生と顔見合わせた。
「つまり、シマーさんはホールラビットの捕まえ方を知りにきたと?」
「ん~まぁそうだな、でもそれに関しちゃいいよ、企業秘密だろ」
「いいわ、教えましょう」
「「へ?」」
設楽さんの発言にびっくりして俺とシマーさんでハモっちゃったよ。
「ハンターでトップの方なんでしょ、教えましょう。それより、狩りのこと色々知りたい」
「あ、あぁ、そりゃかまわんけど……いいの?」
「ちょ、ちょっとお待ちを」
俺たち三人は緊急ミーディングを開始した。
先生が設楽さんに問いかける形になった。
「教えていいのか? なんか変な奴だぞ」
「村のハンターに借りを作れる、関係も作れる」
「でも、信頼できるのか?」
「ハンターのトップなのよ」
「で、でもなぁ」
先生の気持ちはわからんでもない、ストーキングされてたしなぁ。
設楽さんは溜息の後、息を吸い込んだ。やべ。
「はぁ……」
「教えてもデメリットが無い。『探知』が使えない限り、
ターゲットとなるウサギの巣はわからない。つまり彼に教えてもウサギは捕まえれない。
それでも方法を教えれば彼に借りを作れる。
仮に危険性があるとしたら、『探知』魔法欲しさに、先生が拉致される可能性が唯一の懸念。
でもそれもかなり可能性としては低い。
なぜなら、村人同士の繋がりが強く、拉致なんてすればすぐばれるでしょうしね」
「わ、わかった、わかったよ」
先生は観念したみたいです。
三倍ぐらい話されそうだったので、終わってよかった。
「確かに、有能そうですし、ハンターの人達と関係作れるのはデカイ気がしますね」
「そゆこと」
「んじゃぁ教えますか」
緊急ミーティングを切り上げてシマーさんとヨドさんのもとへ。
「お待たせしました、ラビットの採り方ですね」
「お、おう、教わっていいのかい?」
「ええ、むしろ色々お話伺いたかったので、先に私たちが教えれることを共有しておくのも悪くないかと」
「たはは、悪いね」
「じゃぁ、僕から説明しましょうか」
先生だと角が立ちそうだしな。
「方法としては簡単で、ホールラビットがいる巣に水を流し込んで、出てきたところを捕まえます」
「ほうほう」
「対象の巣の探し方ですが、『探知』魔法を使います。」
「魔法だって?」
「彼の魔法は、文字通り周囲の存在『探知』することができます。
なので、まずはホールラビットの巣を探し出します。
次は巣の中を探知することで、捕獲可能か確認します。
あまりに複雑すぎる巣や、深すぎる巣は捕獲できない可能性が高いのでやりません。
ですよね? カネコさん」
「あ、あぁ」
一応説明終えたので、シマーさんの表情を窺う。
納得いったような顔だ。
「は~なるほどねぇ。魔法か、ど~りで」
「説明は以上です。」
シマーさんは軽く手を叩いた。
「ど~~りで見つかったわけだ!
俺もその『タンチ』魔法で引っかかっちまったんだな!ガハハ」
「そうですね、正直まったく気づきませんでしたよ」
「へへへ、忍び足は得意なもんでねぇ」
シマーさんは少しモジモジした。お茶目なおっさんだぜ。
「す、すまねぇんだけどさ、ホールラビット捕まえるの一度やってもらえねぇかな?」
俺たちは先生を見た。
「はぁ、わかったよ、ちょっと待ってくれ」
手に魔力を籠める。『探知』発動したみたいだ。
「――いた」
先生は目的地に向かい、俺たちはぞろぞろついていく。そして巣を見つけた。
今度は左手に魔力を籠め、巣の中で『探知』を発動した。
「ついてるな、これならいける」
ちなみに、水を入れて捕まえれそうな巣は三分の一ぐらいだ。
俺は水を汲んでくる。
「流しますよ」
バケツ一杯、そしてもう一杯。巣の中でガサガサしている。
這い出てきたところを捕まえる。
先生は簡単に捕まえるけど、反射神経がいいんだろうな。
俺はあんな上手く捕まえれる気がしない。
「こんな感じです」
シマーさんは拍手する。
「こりゃすげえや」
「手馴れてもんじゃのぉ」
ジタバタしているウサギを眺めてシマーさんは感心しているようだ。
「ふむ。な~るへそ」
「どうですか? 真似できないでしょう」
ちょっと勝ち誇っちゃったぜ。反省反省。
「確かにな……。魔法使える奴はいるけど、『探知』なんてのは聞いたことないし」
シマーさんちょっとニヤっとした。不気味だ。
「だがよ、改善点はすぐ思いついたぜ。」
改善点?なんだろう。
「教えてもらっても?」
「もちろんだ、待ってな」
腰に巻いた革のバッグをガサゴソしてあるものを取り出す。
「これを使う」
「ふむ、なるほどな」
ヨドさんは知っているようだ。
「なんですか……その葉っぱ?」
「へへへへへ」
ニヤっとして、火打石で葉に火をつけた。
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