18話 ウサギの処理

六日間かけての成果はこんな感じだ。

 ・ウサギ15羽

 ・赤い木の実

 ・青い木の実

 ・草盛り合わせ


 これでウサギ肉は食べれないとかだと笑えるな。

 赤い木の実は甘酸っぱくて美味い。イチゴとレモンを合わせた感じだ。

 青い木の実の味はまんまブルーベリーだった。馴染み深くて嬉しいぜ。

 草の盛り合わせは、設楽さんが色々拾ってきた。

 おばあちゃんに鑑定してもらう必要があるな。


「明日はどうしますか?」

「ウサギをどうにかしないとな」

「ですね、明日は狩りを中断しましょうか」


 翌日、俺と先生は日が出たぐらいで起きた。

 すげぇ健康的な生活だなぁ。

 俺は朝シャンならぬ、朝水浴びに出かけた。

 川は村の東側を流れているので、ちょっと遠いけどね。


 村人は朝から活気よく働いている。

 そろそろ収穫が近いのかもしれないな。

 大通りを歩いては改めて思う、良い村だと。

 ついでに無い頭で考えてみたよ。「成長」について。


「何を持って成長なんだろうなぁ~。今のままでも幸せそうだ」


 コンビニもパソコンも無い村だけど、笑顔が多い。


「便利になったら幸せなんだろうか? そもそも『成長』ってなんだよ」


 村がボロボロだったり、モンスターに襲われたりするなら、『成長』もわかりやすい。

 現状を打破すれば『成長』といっていいだろう。

 でも村は平和で、大きな問題は無いように見える。


「ま、まずは足元からだな」


 結局何をすればいいかわからないけど、やれることをしっかりやろうと結論づけた。

 あ、でも風呂とシャワーが欲しいなぁ。あれ?石鹸とかってあるんだろうか。

 日本人としては風呂は外せないぜ。


 そんな感じで、川で水浴び。

 村のガキンチョたちがいたので、一緒に遊んだ。

 『旦那を動かすなら、奥さんを。奥さんを動かすならお子さんを』

 なんかの営業の本で読んだな~。


 まぁそんな下心で子供たちと遊んだわけじゃないけどな。

 八割遊びたいって思いと、二割の村人と仲良くするアピールだ。

 さっぱりして我が家に帰った。

 そろそろ、さすがに起きてるだろう、われらのお姫さんは。


 家に帰るとお姫様は調子悪そうに椅子に座ってました。


「お、おはよう」

「はぁ、コーヒー飲みたい」


 さすがにコーヒーは無いんじゃないかな。

 王都ならあるのかなぁ。


 さてさて、今日は色々やることがある。

 まずは隣家を尋ね、家庭菜園で作業しているアイシャさんを見つけた。


「おはようございます」

「あぁ、おはよう。なんだい嬉しそうだね!」

「はは、獲物が捕れたのでお裾分けに」


 ウサギを一羽プレゼントした。


「こりゃ……ホールラビットじゃないか!?」


 あぁそんな名前なんだ。

 穴兎⇒ホールラビット。安易なネーミングだ。


「ちょっとあんた!」

「なんだい」


 家からロッシさんがニョキっと出てきた。


「この子達ホールラビット捕まえてきたんだよ」

「――うそ」

「珍しいんですか?」

「そりゃぁそうさ。こいつは警戒心が高いしすばしっこい。

 たま~に罠にかかって捕まるぐらいだよ。あたしもマジマジ見るのは初めてだよ」

「そ、そうなんですね」


 アイシャさんは受け取ったウサギをマジマジ見つめる。


「くれるってたって捌いたこともないし、どうしようかね。

 村長とこ持ってったほうがいいね。」

「村長が捌いてくれるんですか?」

「なにバカなこと言ってんだい。村長がやるわけないだろ、ははは!」


 革を剥ぐ必要があるし、革は売れるかもしれないとのことだ。

 だから一旦村長と話しとけだってさ。

 とりあえず村長のところに急ぐことにした。


 村長宅についた。二人はいまだに緊張している。

 怖い先生のところに行く生徒みたいだ。

 ディーンさんに取り次いでもらい、また応接間で待つこと五分。


「なんだ、朝っぱらから」

「すいません、ホールラビットを捕まえたんですが、

 どう処理していいかわからずですね……」

「――なに?」

「ホールラビットなんですが」


 机の上にラビット一五匹を置いた。ちょっとキモいな。


「な、ホールラビットではないか……何匹おるんじゃ」

「一五ですね」

「一五!?」


 ホールラビットは年に一匹とれればいいらしい。

 食べるところが少ないので、積極的に狩る人もいないと。

 が、革が珍重されるらしく王都ではそこそこいい値段になるとのこと。


「え~~っとどうすればいいでしょうか」

「革を剥ぎ取るのは……フッチーにでもやらせればいい。

 肉はそこまでの量ではないし。焼いて食えばいいんじゃないか?

 革を買い取っていいなら村で買い取ろう」


「え、いいんですか?」

「王都まで行くのはまだまだ先だが、欲しいものがあれば購入してこよう。

 必要な品があれば備蓄の中から交換してもいい」

「じゃぁ買い取りでお願いします、それでいいよね?」

「いいと思う」「うん」

「わかった、ではフッチーのところには私が持っていこう。

 肉に関しては明日にでも取りに行けばいいだろう」

「宜しくお願いします」


 交渉はスムーズに完了した。一安心です。

 次はばあちゃんのとこだな。

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