21話 森の恵みと燻製ウサギのサンドイッチ
いつもより早く目が覚め、準備も万端だ。
朝弱い、設楽さんも今日は準備万端である。
さすがに今日は寝ぼけていないな。やるときゃやる娘さんだぜ。
三人は家の前で待っていた。
そ~いや、この家も家庭菜園ぐらいならできそうだな。
アイシャさんも色々育ててるし、今度教わってもいいかも。
あれだな、心のToDoリストに記入したぜ。
ばあちゃんはやってきた。
小柄なばあちゃんだと、少し大きく見える鞄を持って登場だ。
「待たせたね」
「いえいえ、では行きましょうか」
ばぁちゃんの荷物は先生が持った。
「悪いね」
「いえいえ、何が入ってるんですか?」
「秘密道具さ」
「ほぉ、楽しみですね」
今日も今日でいい天気だ。まぁ異世界に来てから一度も雨が降っていない。
そもそも四季があるのかな。スコールとか勘弁してほしい。
「ほぉ、地図を作っているのかい」
「これです」
「ふんふん、なるほど、ここが池か。いい場所だね。」
「レッドベリーはこの辺に多いですね」
「ホールラビットが多いなら、土壌も良さそうだね。」
ちょっと緊張しながらも4人は森についた。
「さて、ウサギ狩りかい?」
「いや~、お昼まではばぁちゃんについていこうかと。」
「おやおや、人気者は困っちゃね。
いいさ、昼飯まで散策と行こうか、まずは池まで案内しな」
ばぁちゃんは本当に知識の宝庫だった。
池に行くまでに、食べれる山菜をどんどん教えてくれた。
「湿度のあるほうが山菜は育つんだよ」
3人とも山菜の知識なんてまったくないので、頑張って記憶した。
ゼンマーイ、コゴゴミ、タラタラの芽など、
なんとなく知っているものから、まったく知らないものまで色々教えてくれた。
「これはヤマワッサビだね。そのままだと食えないけど、肉と一緒に臭み消しになる」
たぶん、ワサビだな。テレビで見たワサビ作りは、清流の近くで水田みたいな感じで作ってた記憶がある。
森の中でこんな感じで生えてるんだなぁ。へぇ~って感じ。
まだ異世界1週間目だけど、米、醤油、味噌とかはあるんだろうか。
ワサビ醤油とか夢が広がるぜ。
池につくと、講義が始まった。
「レッドベリーの他にも実はあるみたいだね。あの木についてるのは、ギシギシの実だね。
木に寄生して実をつけるんだよ。もう少しすれば黒くなる。
香りがよくて少し油っぽいんだよ」
「へぇ」
「ただ、ギシギシの実は鳥が基本食べつくしちゃうんだけどね。
種のうちの持ち帰って栽培するといい。
丸太とかに置いておけば勝手に育つからね」
「川にはサワーガニがいるね。素揚げすると美味しいよ。
この池にも結構な魚がいるし、ここだけで食糧には困らないね」
午前いっぱい使ってばあちゃんの講義は進んだ。
―――
「ふぅ、そろそろお昼にしましょうか」
「そうだね、ほらカネちゃん鞄貸しな」
先生はカネちゃんになってしまった。
「どうぞ」
「どうせあんたら干し肉ばっかり食ってるんだろ。お弁当持ってきたよ。」
「やったぁ」
「燻製ラビットのサンドイッチさ」
包みからは美味しそうなサンドイッチが。
「「「いただきまーーす」」」
「まぁ、あと二日ぐらい経ったほうがいいんだけどねぇって聞いてないね」
燻製の香りがたまらーーん。
スモークってなんでこんなに美味しいんだろう。
いや、これも普通のスモークじゃない。
すごい香ばしい香りが食欲を刺激する。
噛むとウサギ肉はあま~~い香りがするし、
ゆっくり味わいたいのに、バクバク食ってしまう。
「これは美味いですね。燻製ってどうやるんですか」
「本当は、塩漬けして二、三日おいてから煙で燻すんだけどね。
今日は時間無いから裏技を使ったのさ。」
「ほうほう」
「通常の燻製はそこまで高温でやらないんだけどね、今回のはかなり高温で燻したのさ。
熱した木炭の上に、ヒュッコの木の木片をまぶして燻したのさ。
高温だと火も通るし、三時間ぐらいで完成さ」
やったことないけど、スモークチップってやつは聞いたことがある。
なんだっけ、サクラとかがメジャーじゃなかったかな。
「じゃぁ、通常の燻製のほうがもっと美味しいんですか?」
「そりゃそーさ、完成を楽しみにしてな」
や、やべぇ、現代社会よりご飯美味い。
化学調味料なんていらなかったんやー、栗○さん。
「そういえば、おばあちゃん」
「なんだい」
「ディーンさんというか村長が言ってたらしいんですけど、
ヨドおばあさんの料理は、王都の料理より美味いって」
「はん、褒め過ぎだね」
「まぁ、僕らも他でご飯いただいたことないんですけど、
ばぁちゃんの飯は本当に美味しいですね。どこかで習ったんですか?」
立ち入りすぎたかな、と思いつつ、やっぱ聞いてみたい。
「――まぁ昔ね。きっかけは母親だよ」
「お母さんの料理?」
「これが……とんでもなくマズイのさ。味覚センスゼロ、美味しさに興味がない、
腹に入れば皆同じときたもんだ」
俺たちは黙って聞くことにした。
「あんたたちぐらいの時にね、一度王都に行ったんだ。
母の料理よりはましだったけど、まぁそこそこの味だった。
でもね、ニュソスって料理人の料理を食べたんだ。
感動したもんさ、同じ食材でこんなに違うんだ」
なんか哀愁がある。亡くなられたのかなぁ。
「私も若かったからね、そのまま弟子入りして
ニュソスのとこで働いたんだよ」
「母親は大反対したが、無視して働いて腕を磨いたってわけさ」
「――ま、そんなとこさ」
ヨドさんはホコリを払った。
「ほら、休憩は終わりだよ、男衆はウサギだろ? 捕まえたらまた燻製にしてあげるよ」
「はは、そりゃ頑張らないとね。よし、やろうか」
「この辺でやりますか?」
「うむ、この辺はあまり『探知』してないしな」
先生は手に魔力を流し込んだ。
『探知』発動
「先生??」
先生は無表情のままだ。そして右側に振り返って叫んだ。
「――誰だ!?」
振り向いた先には、誰もいなかった。
後書き編集
サワーガニとか某グルメ漫画みたいですね。
読み返して思いました。
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