12話 異世界はメシも美味いみたいです

ディーンさんから聞いた話をまとめてみた。

 ・村で買い物は出来ない

 ・必要物品は、村長の備蓄か村人と交換

 ・王都は歩いて三十日、馬車で五日


 ふ~む村に閉じ込められた気分だ。

 ここでゾンビでも出たら、一気にホラー映画なんだけどな。


 その他確認した情報としては

 ・一年は三百日

 ・村から徒歩十日ぐらいの場所に酪農をする村がある



 一年は三百日なのか。言語は日本語、通貨は円だし、時間も三百六十五日だと予想してたんだけどな。

 まぁ大した問題ではなさそうだ。

 酪農をやってる村があるってのは、朗報かな。

 まぁ、それでも徒歩十日。なんらかの目的が無いと行かないか。


 ただ、ディーンさん曰く「農耕の村は閉鎖的」とのことだ。

 クラーク村ともほとんどは交易が無いらしい。

 いやぁ、転送先がクラーク村で良かったよ。


 そうそう、この村は「クラーク村」で村長はクラークさん。

 世襲制なのかなと思ったら、なんと村を作ったのはクラーク村長本人らしい。

 三十年程前に、開村したらしい。


 なんか意外だった。クラーク村長、すげぇやん!



 後は、小さい村なので、横の繋がりがとにかく強い。

 ある程度の単位で農作物を共有したり、少数だが狩りをする人達ともうまく連携しているようだ。

 家屋は九十ぐらいだそうだ、村民は二百人ぐらい。

 まぁ市役所は無いしそこまで把握はしてないそうだ。



 狩人の人達とも今度話しでもしてみたいところだ。かなり優秀らしい。

 いきなり尋ねるよりは狩りをしてみてからかな。



「そろそろ夕方ですね」

「あらあら、話し過ぎちゃったわね」


 たしかにディーンさんよく喋る。一聞くと三は出てくる。ありがたいけど。


「今日はここまでにして、暗くなる前に家まで連れていってもらおうか」

「そうですね」


 村長宅を後にした。


 夕暮れ時なので村の中からいい匂いがしてくる。

 そういえば今日は何も食べてない、はぁ腹減った。

 設楽さんも先生もお腹すいたみたいだ。


 あ、道案内してくれたばあちゃんだ。

「おばあちゃん!」


 ばあちゃんが軒先で草みたいなのを干している。


「おぉあんたかい」

「村で住めることになりましたよ」

「へぇ、よく村長が許可したね、どこに住むんだい?」


 視線はディーンさんへ


「え、えぇと西側の家ですね、ほらヨドさん……あの家です」


 ディーンさんは申し訳なさそうな顔を。

 おばあちゃんはすぐさま理解したみたいだ。


「あぁ、なるほどね。

 まぁ堅物村長が許可くれただけめっけもんだわね」

「いや~ありがたいですよ、グゥ~」


 やべ腹がなっちまった。ばあちゃんの家うまそうな匂いが。


「ほっほ、腹減ったのかい? 祝いにご馳走しようか?」


 ま、まじか!


「そりゃぁありがたい! けど家にも行かないといけないし、ディーンさんも一緒ですしねぇ……」

「え!? わ、私はかまいませんよ、待ってますから」


 なんかキョドってるな。なんだろ。


「んじゃ、ちょっと待ってな」


 ばぁちゃんが家に入っていった。


「アカイさん、ヨドさんと仲良いんですね…」

「ヨドさんって言うんですね、道案内してもらったんですよ」

「じつは結構気まぐれな人で、怒ると怖いんですよ」

「あ~、そんな感じはしますね」


 独り身っぽいばあちゃんで、そういうタイプは多い。

 まぁ、ばあちゃん得意なんだよな。

 おばちゃんキラーの赤井ってのは俺のことだぜ!

 若い子にはテンでダメなんだすけど。とほほ


「ヨドさんは、料理がお得意で、知識が豊富なんですよ。香辛料の作成はヨドさんがやってますし」

「へえ」


 知識人と仲良くなれたのは大きいな。

 トンデモ能力が無い分、村発展のためには村人との連携は必須だろうし。

 あ、戻ってきた。


「ほれ、持っていきな。」

「「「おぉぉ」」」


 灰色っぽいパンに肉と野菜が入ってる。


「ほれ、ディーン。あんたも持ってきな」

「え、私まで?」

「村長の分もあるから、冷めちまうだろうけど後で食いな」

「あ、ありがとうございます」

「早くいきな、日が暮れちまうよ。」

「ありがとうございます」


 お土産を手にホクホク顔で家に向かう。

 いや~、匂いがやばい。鼻孔をくすぐるってのはこのことか。


「……設楽さん、食べちゃえば?」

「え?」

「温めてあるみたいだし、歩きながらでも食べれるでしょ」

「いやぁ~私もハラペコだし食べちゃおうかな」


 先生も我慢できないみたいだ。


「教師が歩き食い……」

「たはは」


 三人で歩き食いしながら帰った。

 ん~肉も美味いけど野菜が抜群に美味い。

 肉は干し肉っぽいが臭みがない。噛むと甘みが出る肉だ。

 野菜は…ピクルスに近いのかな? 漬物なのか汁っぽいがそれがまた美味い。いいアクセントになっている。

 パンはお世辞にも美味くない、カサカサパンだ。

 だけどカサカサのパンが野菜といい感じで調和している。

 パンのマイナス点がプラスに働いている。


 一気に食い終わった。


「ディーンさん、これすごい美味しいですね」

「ヨドさんは料理ご上手ですから」

「この野菜が特にすごい!なにかわかりますか?」

「キャベツですね」


 これがキャベツ?


「キャベツってあの、緑の丸い?」

「ふふ、そうですよ。キャベツの漬け物ですね」


 キャベツの漬物って食べたことはある気がするけど、記憶にない。


「へぇ~、すごいなぁ、初めての味です」

「王都でも人気がある漬物だそうですよ」

「ほほー、王都の料理はさぞかし美味しいんでしょうねぇ」


 いつかいきたいな、王都。グルメ巡りなんて楽しそうだ。


「そうでもないですねぇ。食材は豊富ですけど料理レベルはあまり変わらないかと。

 ただ三人の天才料理人の店はかなり人気ありますね。高いですけど」


 ディーンさんは思い出し笑いをして話を続けた。


「前にクラークが言ってましたけど、ヨドさんの料理は三人と比べても遜色無いと言ってました。

 食材が限られた村であれだけ美味しいものをつくれるんだし、とも」


 すごい高評価だな。クラーク村長が褒めるなんてのはすげぇ。

 料理に関しては、ヨドさんに色々と教えてほしいもんだ。


「見えましたよ」


 さてさて、我が家はどんな怨霊が出るのやら……。

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