8話 魔法でも心の傷は治せないみたいだ

先生が『探知』魔法の説明を始めた。


「魔法の効果だけど、自分を中心に円形二、三十メートル先まで探知できた。

 実験してみないとわからないけど、大きな壁でもない限りは探知できると思う。

 この辺は見渡せるから実験場所としては微妙だけど、設楽さんの後ろ3メートルぐらいのところに穴があるな」


 探してみると実際穴があった、モグラの巣か?


「ためしに左だけ魔力を籠めると半径三メートルぐらい探知できた。

 右手だけだと、何も探知できないな」


 左右の手で実演してくれた。

 結論としては、併せて使わないとダメみたいだな。

 しかしこれはかなり優秀な魔法じゃないか。狩りなら無類の力を発揮しそうだし、周辺警戒にも使えそうだ。


「……狩りには使えそう?」


 先生は大きく頷く。自信満々の笑みは安心感があるぜ!


「もちろんさ! 効果範囲も広いし、かなり鮮明に探知できると思うよ。」


 『治癒』と『探知』は有効ってのは、全くその通りだった。設楽様様だね。

 俺も続きたいところだが、未だに火を出せないでいる。


 二人は俺の近くにやってきた。魔法補習授業が始まる。


「魔法陣見せて」

「はい……」

「魔力籠めてみて」


 なんとなく魔力を籠めると光りだした、だけどやっぱり光るのは三層中、いちばん外側の円だけだ。


「なるほど」

「もっと魔力籠めたらいいんじゃないかな?

 なんか赤井君のは一回り大きいしね」


 二人とも簡単に出来てたのに、なんで俺だけ、うぅ。

 なんか落ちこぼれ気分だよ……。

 出来のいい女の子と先生に見守られながらがんばる俺。くぅ~、みじめだ。


「よーーし!」


 俺のチート魔力を見せてやるぜ!

 右手で左手首を掴む、そこから詠唱する!(心の中で)


 我が身に宿りし無限の魔力よ。

 轟炎の力を纏いて彼の者を消し去らん!

 ファイアストーーム!!


「っぐ!」


 消失感を味わう。体からごっそり持って行かれた感じがする。

 手の平で渦巻く力の本流を感じる。これはイケる!!


「ファイア!」


『ッポ』


 へ?

 ライターの火程度の小さい火が出た。

 う、ウソだろ??


 二人の目線が痛い。

 先生はなんて声をかけていいか迷っている。

 設楽さんはよくわかんない!


「まぁ、できてよかったな。」


 先生、慰めは辛いっす。

 魔法は辛いよ。


―――


 魔法練習も終わったので、村へ向かう。

 金子先生と設楽さんの魔法談義が始まった。


 体に刻まれた魔法陣は何で書いたんだろうとか、

 魔力の源はなんだろうとか、

 一日何発使えるのかとか、

 魔力は寝たら回復するのかとか、

 他の魔法は使えるのかとか、

 魔法陣を使わない魔法の方法とか、

 とかとかとかとかとか!


 なんだあの魔法!

 考えたらおかしいんだ、『着火』って。

 『火炎』でもなく『火柱』でもなく、『着』・『火』だ。

 火を、着ける。確かに火は着く。

 あれだけ、全力こめて火がつくだけだぞ!


 軽い力で火がついて、魔力を込めるごとに、パワーアップして

 実は秘められた魔力の持ち主で、最大まで魔力注ぎ込めば、

 ドラゴンを焼き殺すまで火力が出たりするもんだろ!


 ミックの野郎、完全に笑ってるだろ!!

 二人の魔法に比べて、ショボすぎやん!

 人間ライターか俺は!

 あんなの忘年会の一発芸にしか使えないよー、うわーん!あんまりだぁー


 転生初日って俺ツエー展開あるものじゃないですか!?

 実はユニークスキル持ちでしたとか、「魔力が常人の十倍以上あるだとッ!」とかさ。


 あれか、俺はボケ担当なのか!? 

 「なんでおれだけ~」ってぶっ飛ばされる、額に六の丸があるハゲ頭ポジションなのか。


 魔法なんて忘れて、早く村につきたい。村はまだかぁ……。


 ――まぁ、村は見えてる。

 広大な草原地帯だから、かなり先まで見える。十五分もすればつくだろう。

 転送された洞窟から、村までは三十分程度か。


 しかしあれだなぁ、本当にいいところだなぁ。

 季節はわからないけど、春っぽい。

 村の北側には結構大きな山があり、麓には森が広がる。狩りには困らないだろう。


 空気が綺麗だ。忌々しい『着火』を使った後の喪失感は全くなくなっていた。

 初日だからだろうか、空気があっているからだろうか、非常に高揚感を感じる。

 走り出したい気分だ!走らんけどね。


 そんなこんなで村に着いた。

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